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2017年01月19日

自立支援の介護をどう評価する?要介護度の改善は1つの物差しだが… | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

2018年度の介護保険制度改正に向けて、要介護度の改善に対してインセンティブを与える仕組み作りが検討されています。
自立支援介護で利用者の要介護度を改善させた事業所に、インセンティブ措置を導入すべき。
自立支援介護に取り組んでいない事業所にディスインセンティブとなる仕組みを検討すべき――。
2016年11月の「未来投資会議」で、そんな提案が示されたのです。
「インセンティブ」とは、行動を促す刺激のこと。「ディスインセンティブ」はその反対に、行動を妨げるもの、やる気をなくさせるもののことです。
以前、要介護認定の不確かさから、この件について取り上げました(介護職員の業務内容が変わるかも?高齢者の自立支援を目指す介護へ)。
今回は、少し違う観点から再び取り上げてみたいと思います。


自立支援介護を評価してインセンティブを導入?

image001同じ日の未来投資会議では、研究者と特別養護老人ホーム施設長が、自立支援介護の例をプレゼンテーションしました。
研究者は、胃ろうだった高齢者に自立支援介護を行い、経口摂取(口から食べ物や飲み物を摂ること)を可能にしたケースなどを紹介。
自立支援介護によって、肺炎と骨折が激減し、試算では約8700億円の医療費が削減できる可能性があるとしています。
特別養護老人ホーム施設長は、水分や栄養の十分な摂取やおむつはずし、歩行を中心とした運動・筋トレなどによって、要介護度が著しく改善したケースを紹介。
要介護度の改善で、実際、介護保険給付費を約1200万円削減できたと伝えています。

冒頭の「インセンティブ」「ディスインセンティブ」の導入の話は、こうした事例を考慮し、出てきたようです。
確かに、いい介護をして利用者の要介護度が下がると介護報酬が減ってしまう今の介護保険制度には問題があります。
いい介護をしたら、より多くの介護報酬が得られる仕組みは必要でしょう。
インセンティブが得られる(加算が付く)仕組みは、事業者にとっては歓迎すべきことだとも言えます。

とはいえ、自立支援介護が行われているかどうかを、要介護度の改善だけで計るのはどうなのか。
全国老人福祉施設協議会(老施協)は、2016年12月、未来投資会議での提案に対して、そう異論を唱えました(*)。
ADL(日常生活動作)の改善はQOL(生活の質)を高めるための手段の一つであって、それ自体を目的にするものではないと指摘したのです。

老施協の指摘はもっともです。
そもそも介護保険制度とは、「心身の」自立支援のためにあるもの。
意欲向上など、「心」の自立や状態改善が図れたかがほとんど反映されない要介護度だけでは、自立支援介護を十分に評価することはできません。
体の機能は改善しなくても、笑顔がふえた、食欲が増した、人との交流がふえたなど、心の状態改善が見られる場合は多々あります。
そのあたりの指標と併せて、評価できる仕組みが必要です。


権利には義務もついてくることを意識する

image003老施協は、また、このインセンティブ導入によって、以下のようなことが起こりうると指摘しています。

1.要介護度の改善が期待できない高齢者が、介護事業者、介護施設に敬遠され、在宅での介護が必要になるリスクが高まる
2.本人が望んでいなくても、栄養摂取やリハビリテーションなどを強要することになる
3.在宅復帰などを望まなかったり、望めなかったりする高齢者にも、在宅復帰しなくては、と思わせてしまう

1、3については、確かにその通りと思います。
一方、2については違う意見もあるかもしれません。
というのは、介護保険法には、「国民の努力及び義務」として、積極的にリハビリテーションなどのサービスを利用して、自分の持つ能力の維持向上に務めること、と書かれているからです。
これは、介護保険のサービスを使うならたとえ本人が望んでいなくても、能力の維持向上のため、(栄養摂取やリハビリテーションなどを受けて)努力を続けることが国民の義務だ、と解釈することもできます。

もちろん、本人の尊厳やQOLを考えれば、栄養摂取やリハビリテーションを「強要する」ことはあってはならないでしょう。
しかし、介護保険は国家予算を使い、共助である保険によって提供されるサービス。
国民の権利として介護保険のサービスを利用するのであれば、それに応じた義務を引き受けることが求められるとも言えます。

80歳、90歳になっても、死ぬまで努力を求められるなんて、という意見もあると思います。
介護職からもそういう声はよく聞きます。
しかし努力とは、筋トレをしたり、歩行訓練に努めたりすることだけを指しているわけではありません。
昨日、介護職が声をかけ、励ましても一口しか飲み込めなかった水を、今日は二口飲み込めた。歌を歌うレクリエーションに粘り強く誘ったら、ようやく参加することができ、少し笑顔も出た。それも立派な「本人の努力」であり、「介護職の自立支援介護」です。

そうした視点から「自立支援介護」を、介護する側もされる側も、そして国も、もう一度考え直してみる。
そして、そんな介護をどうすれば適切に評価できるのかを、考えてみることが大切なのではないでしょうか。

<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>

*いわゆる「自立支援介護」について(意見) (2016年12月5日)

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