介護保険の仕組み
介護保険は、要支援1から要介護5までの7段階の要介護度に応じ、その人なりの自立した生活を支援するための公的社会保険です。
それまで行政がサービスの内容、給付量を決めていた「措置制度」から、
利用者がサービスを選ぶ「契約制度」に変わりました。
40歳以上の被保険者の
保険料と
公費を財源として運営され、介護支援専門員(ケアマネジャー)の立てるケアプランに基づいて介護サービスが提供されます。
介護保険サービスの費用の内訳は?
介護保険サービスの費用は、利用者が費用の1~3割を負担し、残りの7~9割は介護保険から給付されています。
介護保険制度開始以来15年間、費用の負担割合は、『保険給付が9割、利用者負担が1割』でした。
しかし介護保険財源の不足が指摘され、今後も持続可能な制度としていくため、2015年8月から、年金などの年間収入が280万円を超える高齢者は2割負担となりました。さらに2018年8月からは、年収340万円を超える高齢者は3割負担に引き上げられました(年収はいずれも単身世帯の場合)。
「介護保険」は誰がお金を払っているの?
介護保険の運営主体である保険者は、
区市町村です。
そして介護保険の財源は、
公費が50%・保険料が50%となっています。
公費50%のうち、保険者である区市町村が12.5%、都道府県が12.5%、国が25%を負担しています。
また、保険料50%は、65歳以上の第1号被保険者の保険料が23%、40~64歳の第2号被保険者の保険料が27%を占めています。第1号被保険者の保険料は、住んでいる市町村によって異なります。また介護保険法改正により、2020年4月から大企業を中心とした会社員の第2号被保険者の保険料は大幅に引き上げられました。
介護保険サービスが利用できる人は?
第1号被保険者(65歳以上の人)は、要介護認定を受けて要支援1~要介護5に認定されれば、介護保険のサービスを利用できます。
一方、第2号被保険者(40~64歳の人)は、高齢になるとかかりやすい16種類の病気(特定疾病)によって要支援・要介護になったと認定されなければ、介護保険を利用できません。
特定疾病とは、末期がん、関節リウマチ、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患、骨折を伴う骨粗鬆症、若年性の認知症などです。
また、介護保険料を1年以上納めていない場合は、費用をいったん全額負担しなくてはならなかったり、保険給付が一時的に差し止められたり、給付額が減額されたりします。
介護保険で受けられるサービス
介護保険で受けられるサービスは、大きく分けて
「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」があります。主なサービスは下記の通りです。
■居宅サービス……在宅で暮らす高齢者が利用するサービス
【居宅介護支援】在宅で暮らす要介護者がその人なりの自立した生活を送れるよう、ケアマネジャーがケアプランを立てて、介護サービス等を調整する
【訪問介護】ホームヘルパーが訪問し、入浴、排泄などの身体介護、調理、掃除などの生活援助などを提供する
【訪問看護】看護師が訪問し、主治医の指示のもと、褥瘡の処置、服薬管理など療養上の世話などを提供する
【通所介護】通いで利用され、食事、入浴、レクリエーション等のサービスを提供する
など
■施設サービス……入所施設で24時間提供される生活を支える介護サービス
【介護老人福祉施設】通称、特養(特別養護老人ホーム)。人生の最期まで介護を提供する終(つい)の棲家
【介護老人保健施設】通称、老健。病院での治療を終えた人をスムーズに在宅復帰させるためのリハビリ施設
【介護療養院】介護保険で長期療養が受けられる医療施設。「介護療養型医療施設」が2017年度末で廃止になり、現在経過措置期間で2024年3月末までに介護療養院に移行
■地域密着型サービス…市町村が原則として地区住民に提供する介護サービス
【小規模多機能型居宅介護】訪問、通い、泊まりを組み合わせて提供するサービス
【定期巡回・随時対応型訪問介護看護】24時間365日、訪問介護と訪問看護が在宅生活を支えるため、定期的あるいは随時要請に応じて訪問し、支援する
【認知症対応型共同生活介護】通称、認知症グループホーム。認知症のある人が5~9人で共同生活する住居で、生活を支える介護・支援を提供する
など
「介護報酬」っていったい何?
介護保険のサービスを提供した介護事業者には、その対価として
介護報酬が支払われます。
介護報酬は、7~9割が保険者(市区町村)から「介護給付費」として支払われ、1~3割を「利用料」として利用者から受け取ります。
介護報酬は、サービスの種別・内容、入所施設は要介護度ごとに法律で細かく定められています。
基本となる報酬規定より手厚いケアの提供や人員配置は別途評価され、報酬が追加される「加算」が付きます。反対に、規定に満たない場合は、報酬が減額される「減算」となります。
介護士の給料は介護保険から支払われている!
介護報酬は法律で定められているため、介護事業者はサービスの対価を自由に決めることはできません。介護保険サービスの提供だけで運営している事業者は、介護報酬から得られる収入だけで、介護士の給与を含むすべての経費をまかなう必要があります。
介護報酬は3年に1回改定されますが、利益率の高いサービスは報酬が引き下げられることが多く、介護事業者の事業運営は介護報酬改定に左右されがちであるため、介護報酬の改定がどのように行われるか、毎回注目を集めます。
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