毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「ホームヘルパーが感じた事業所による昇給制度の違い」という話題について紹介します。
未経験ヘルパーでも、資格取得の支援があった大手事業所
近い将来、未曾有の高齢化社会が訪れる日本において、介護は成長が見込める数少ない業界だと言われている。大手から個人まで参入が相次ぎ、これから介護業界を目指す人の中には、どのような基準で働き先を決めて良いかわからない人もいるだろう。
未経験からホームヘルパーになったルミさんは、最初に大手の事業所で働き、その後、個人経営に近い小規模の事業所へ転職したのだという。
ルミさんは、高校を卒業後にデザイン系の専門学校に進み、卒業後はデザイン事務所に就職。
30代を前に業界の将来性に不安を覚えた彼女は、友人の勧めもあって介護業界に転職することを決意した。
友人に誘われるがままに業界大手の事業所の面接を受け、めでたく採用されたのは、30歳の誕生日の前日のことだったそうだ。
ルミさんが、自らの経験を話す。
「私は、介護に関して右も左もわからない状態で介護業界への転職を決めましたが、後から考えると、スタートが大手だったのは良かったと思います。
私はまったくの無資格だったのですが、私が入った会社は資格取得のためのカリキュラムがとてもしっかりしていて、テキストも非常にわかりやすく、勉強が得意ではなかった私でも内容がきちんと把握できるようになっていました。
そのおかげで、資格を取ることができました。
資格取得支援制度は充実していましたし、福利厚生もしっかりしていました。
周りには妊娠・出産で一度休職や退職した後、戻ってきて再び働き始めるスタッフもいて、働き心地の良さを感じました」
ヘルパーの給与アップの基準はなに?
しかし、そんなルミさんは現在、“知り合いの知り合い”がやっている小規模の訪問介護事業所で働いている。
業界大手の事業所は働き心地が良いと語っていたはずなのに、なぜ転職を決めたのか?
ルミさんはいう。
「最初に介護職として働き始めたときは、『初めて働く業界だから、勉強が必要なのは当たり前』と思って一生懸命勉強していました。
ですが、その職場では、ステップアップしていくためには、その都度、社内のテストに合格する必要があり、それに合格しないと給料が上がらないんです。
実際に介護をしていると、テキストで学んだことだけでは対応しきれない事態が発生することも多いです。
自分はもっと現場で経験を積みたいのに、机の前で勉強ばかりしていることに疑問を持ってしまって……。
そんなときに、経験に応じて確実に昇給できる事業所が見つかったので、そちらに移りました」
テストに合格すれば給与アップが確実なのであれば、それは分かりやすい制度でありメリットといえる。
しかしルミさんのような人にとっては、社内テスト制度はデメリットなのだろう。
テキストできちんとした知識を学ぶのは大切なことだが、現場ではテキスト通りにいかないことが多いのも介護の難しいところ。
介護の知識や技術を学ぶ上でも、昇給の基準としても、「ペーパーテスト」と「現場での経験」のどちらを重視するのかについては、それぞれに向き不向きがありそうだ。
転職の際には、今の自分に合った事業所のスタイルを確認することも大切なのだろう。