2017年02月08日

介護職の管理者からあえてユニットリーダーに戻る…転職理由Rさん３

居宅介護支援事業所と認知症型グループホームを経営する事業体を辞めてからのRさんは、混沌とします。
自分が「成長する」ということは、どんなことなのか。
介護の仕事を根本から考え続け、そしてひとつの道にたどり着く。
混沌が、Rさんを本当の意味で成長させていきます。

＊R・Tさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目（最終回）はこちら

R・Tさん（41歳）のプロフィール・転職経験

●介護業界歴…2１年

●介護の仕事に就く前…介護福祉士養成校

●介護業界での転職回数…４回

●いままでの勤務先…特別養護老人ホーム、居宅介護支援事業所、認知症型グループホーム、介護付き有料老人ホーム

●保有資格…介護福祉士、介護支援専門員

理想の介護を目指すものの、挫折が続く

認知症の方に寄り添い介護をすることが、自分の天職と思っていました。
しかし、認知症型グループホームでは、挫折の連続でした。利用者さんを「わからない人」などといったとらえ方をせず、ごく自然な人間付き合いをしたい。
そう思っても、管理者である以上、個人プレーをするわけにはいかないのです。
介護する職員のスキルや人数がそろわなければ実現しません。
要介護度の重い人、お元気で隙あらば外出したい人も入居していただいていたのですが、スタッフが利用者さんの対応についていけないのですね。

できたら玄関に鍵をかけたくないと思っても、目が届かず、ちょっとした隙におひとりで出かけてしまい、それを気付くことができずに、ご家族から叱られたこともありました。

疲れ果てて退職したので、挫折感は大きいものでした。
少し違う働き方がしたいと思い、有名な介護のプロがいるということで知られるグループホームで働いてみたら違うのだろうか、とパートで入ってみました。
どうやったら、お元気な認知症の方といいお付き合いができるのか、その答えを知りたかったのです。

しかし、自分にはピンときませんでした。
たしかに、そこでは認知症の方も穏やかに楽しそうに暮らしている。
でも、そのために、職員は嘘をつかねばなりませんでした。
ホームから出たがる方に、気をそらすためのちょっとした嘘を言う。
それが私には耐えられませんでした。
気づいたら、どれほど傷つくのか、と思いましたし、自分自身がそんな付き合いをされたら、裏切られたような思いで眠れないのではないかと思いました。

あたりまえの人間関係を築ける場所を探す

そこを半年で辞め、「株式会社が運営する介護事業所を体験してみよう」と、今度は介護付き有料老人ホームに勤めてみました。
自治体や社会福祉法人の運営する事業所でしか働いたことがなかったので、本当に何から何まで違うのだと目から鱗でした。

利用者さんは、カスタマーなのですね。
ここでも、利用者と介護者は、「親しみのある間柄」とはかけ離れた介護をしていました。
有料老人ホームには、ご高齢の方も入居していて、中には最期を迎えるような方もいらっしゃいます。
しかし、事業者は「ホームの中で死者が出たら、ほかの利用者さんへの心証が悪い、風評被害が起こる」というのです。
耳を疑いました。
死は忌み嫌われるものでしょうか？
その方が一生懸命に生き、命を閉じるその瞬間は、とても尊いものだと思えないのでしょうか？

そこは、介護とはまったく関係のない企業が立ち上げたホームでした。
看取りをするには加算要件が必要だということすら知らない人たちでした。

人としてあたりまえのことが、介護の現場では通用しない、介護する側の論理ですすんでしまうことに、憤りを感じ、失望しました。
でも、できないことではない。
現に自分はやってきた、という思いがあります。
なんとか自分の考える「利用者さんと人間対人間の付き合いができるホーム」を創りたい。

でも、ひとりではできません。
介護はチームで動くのです。
現場の人たちからの理解を得られないのなら、ひとりよがりになってしまいます。

ケアマネジャーから管理者へとすすんできたキャリアを、この際捨てようと決心しました。
あえてユニットリーダーとして、他の施設に採用してもらおうと考えました。
介護の研究発表会に出席したときにたまたまもらった冊子の広告に、家の近くに個別ケアを重視している特養が開設されると書いてありました。
「ここに賭けてみよう」と思い、載っていた電話番号に電話をかけ、面接の日時を決めてもらいました。

最終回の次回は、職員教育の大切さに気付き、次のステージを探るRさんの様子をお伝えします。

＜三輪　泉（ライター・社会福祉士）＞

＊R・Tさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目（最終回）はこちら

●先輩たちの職場選びの失敗事例に学ぼう
→　「こんなはずじゃなかった…」転職先選び私の失敗談

●○●　介護業界で転職する時の　基本ノウハウ　●○●

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著者：介護求人

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