新しい学びを得ようと転職したF・Sさんですが、転職先の雰囲気や事務処理の多さになじめませんでした。
手術をしなければならないという事情もあり、1年半で退職。挫折感はありましたが、手術後はすぐに、同志とデイサービスを立ち上げました。
やっと納得のいく仕事ができるようになった――。最終回では、その思いや、キャリアを振り返り語っていただきます。
*F・Sさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
F・Sさん(42歳)のプロフィール・転職体験
●介護業界歴…12年
●介護の仕事に就く前…メーカー事務職、専業主婦
●介護業界での転職回数…2回
●いままでの勤務先…デイサービス、グループホーム
●保有資格…介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士
利用者さん本意のデイサービスをつくろう
入院して子宮筋腫の手術を受け、しっかりと休んだあとは、比較的早く回復しました。開腹手術ではなく、腹腔鏡手術だったのも、術後の経過がよかった理由でしょう。
そして、同志である以前の職場の管理者から「そろそろ参加してもらえそう?」と誘われ、デイサービスの立ち上げに参加することに。
彼女とは、最初の職場でも、「理想のデイサービスとは?」「利用者さんに寄り添うこととは?」と、熱く思いを語りあっていましたから、デイサービスの理念にブレはありませんでした。
その理念とは「利用者さんの自発的な『やりたいこと』を支援しよう」ということです。
落ち込んでいたり、迷ったりしている方には、寄り添って勇気を出してもらおう。
一人ひとりに合ったサービスを提供し、在宅生活をしっかりと支え、少なくともADL(日常生活動作)の維持、できれば回復を目指そう。認知症の人を、特別扱いしない。「問題行動」なんて思わない。
「ていねいにケアをして、認知症の人が他の人たちと当たり前に過ごせる環境を作ろう」ということも話し合っていました。
その理念を前面に打ち出し、利用者さんの募集に走り回りました。
ほどなく10人ほどの利用者さんが登録してくださり、オープンしてからも早いペースで利用者さんが増えていきました。
そして4年たった今は、2つめのデイサービスもオープンさせ、私は主となる1号館の管理者を務めています。
同志である友人が法人の代表ですが、私も経営に加わっています。
会社の経営術や経理事務のノウハウは、最初の職場の再建に関わった経験、そして、次の職場で細かな書類提出をこなしていた経験が生きました。
やっていたときには「いやだ、つらい」と思っていたことが、今、大きく生かされている。どんなにいやなことでも、一生懸命やることで、いい方向につながっていくものだと、今、実感しています。
職員とは年に1回、家族ぐるみでバーベキューを
最初の職場で“お局”職員に悩まされた経験があったので、働いてくれているスタッフとは、できるだけ話すようにしています。
若いスタッフが、上司に言いたいことを溜め込んでしまうと、職場はどんどん働きにくくなります。
だから、介護には関係のない何気ない会話を重ねて、話しやすい雰囲気づくりを心がけています。
そうやって気心が知れれば、たとえ言いにくいことであっても、お互いに溜め込まずにいられるかな、と思うのです。
最近、若いスタッフが、彼氏のことなどを話すようになってくれました。
お互いに関係が近くなり、小さな言い方ひとつに悩むようなことがなくなったと思っています。
もちろん、こちらがいい感じで働いてくれていると思っても、LINEで「辞めます」とひとこと送ってきて、退職していく若い子もいます。
逆に、ベテランスタッフの中には、若いスタッフに威圧的な人もいます。人手不足のため、ベテラン、若手のどちらに辞められてしまっても困るので、どう改善していけばいいのか、悩みます。
「辞める」立場から、「辞めてもらっては困る」立場になると、組織に対する考え方も変わります。
みんなが信頼し合い何でも言える関係であること、この仕事に誇りを持っていることを、管理者である私がスタッフの家族に自信を持って伝えられること――。それが、何よりも大切だと思うようになりました。
そのため、年に1度はバーベキューイベントを開催しています。
そこには職員だけでなく、お子さんも旦那さんも、ペットのわんちゃんにも来てもらっています。
ご家族にごあいさつをし、よく働いてくれてありがたいと伝えれば、職場に好感を持ってもらえます。
そうすると、急なシフト変更もご家族が理解してくれます。スタッフ本人も「家族に行ってらっしゃいと送り出されました」と言って、イキイキと働いてくれる。とても助かります。
利用者さんともスタッフとも、心から付き合うことが何よりも大事。そう思えたのも前の職場、そしてその前の職場の経験があったからこそだと思います。
そう考えると、転職で悩んだり苦しんだりするのも、悪いことではないですね。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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