登録ヘルパーとは、訪問介護員(ホームヘルパー)の雇用形態の一つです。本記事では、正社員やパートとの違い、登録ヘルパーとして働くメリット・デメリットなどを詳しく解説します。「ライフスタイルに合う働き方を探している」という方は、ぜひチェックしてみてください。
目次
■ 登録ヘルパーとは?
■ 他の雇用形態とは何が違う?
・登録ヘルパーと正社員の違い
・登録ヘルパーとパートヘルパーの違い
・登録ヘルパーと派遣ヘルパーの違い
■ 登録ヘルパーの仕事内容
■ 登録ヘルパーの時給
■ 登録ヘルパーとして働くメリット・デメリット
■ 登録ヘルパーになるには資格が必要
■ 登録ヘルパーへの転職体験談
■ 登録ヘルパーで稼げる求人の探し方
■ 登録ヘルパーの気になる疑問
・登録ヘルパーは仕事がないって本当?
・登録ヘルパーでも有給は取れる?
・訪問中にケガをした!労災になる?
・複数の事業所を掛け持ちできる?
■ 登録ヘルパーは自由度の高い働き方ができる!
登録ヘルパーとは、訪問介護員(ホームヘルパー) の働き方の一つ。訪問介護事業所に希望の曜日や時間帯を登録して働く、介護業界独自の雇用形態です。
訪問介護員には正社員・パート・派遣・登録ヘルパーといった多様な働き方があるため、自分のライフスタイルや希望条件に合う雇用形態を選んで転職・就職することになります。
●そもそも訪問介護とは…
利用者さんの自宅にヘルパーが訪問し、入浴・排泄・食事などの介護や家事の支援を行う介護保険サービスのこと
訪問介護の仕事には、登録ヘルパーのほかに、正社員・パート・派遣などさまざまな雇用形態が存在します。
それぞれの違いを理解しておくことで、自分の希望に合った働き方を実現しやすくなるでしょう。
正社員のヘルパーは、訪問介護事業所と直接雇用契約を結び、フルタイムの常勤として働きます。労働時間や休日の条件は、事業所の就業規則に従います。
給与は月給制が多く、常勤の訪問介護員(月給者)の平均給与額は349,740円です。
一方の登録ヘルパーは、希望の時間や曜日を登録して働くスタイルで、正社員よりも自由な働き方ができます。事業所に出勤する必要はなく、利用者さんの自宅へ直行・直帰できる場合が多いです。
給与は実働分の時給計算で支払われます。非常勤の訪問介護員(時給者)の平均給与額は117,560円です。
給与額の出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」
▼1週間の働き方の例
【正社員Aさん】
・早番(7~16時)、日勤(9~18時)、遅番(11~20時)のシフト制
・月9日休み
| 8/1(月) | 8/2(火) | 8/3(水) | 8/4(木) | 8/5(金) | 8/6(土) | 8/7(日) |
| 日勤 | 早番 | 遅番 | 休み | 早番 | 日勤 | 休み |
【登録ヘルパーBさん】
・水曜日(9~16時)勤務希望
| 8/1(月) | 8/2(火) | 8/3(水) | 8/4(木) | 8/5(金) | 8/6(土) | 8/7(日) |
| 休み | 休み | 出勤 | 休み | 休み | 休み | 休み |
「ライフスタイルに合わせて働けるときに働きたい」方は登録ヘルパー、「一つの事業所で安定した収入を得ながら働きたい」方は正社員のほうが適していると言えるでしょう。
登録ヘルパーとパートヘルパーは、いずれも訪問介護における非常勤の雇用形態です。ただし「決まったシフトで働くかどうか」という点に違いがあります。
パートヘルパーは「週3日」「日勤のみ」など固定の勤務条件で採用されており、それに沿ったシフトが組まれます。
一方、登録ヘルパーは週あたりの勤務日数や時間が固定されていません。登録した曜日や時間帯に合う仕事を割り振ってもらうスタイルです。
同じ非常勤職員でも、登録ヘルパーのほうがパートヘルパーより勤務の自由度が高いと言えるでしょう。
収入の面では、決まったシフトで働くパートヘルパーのほうが安定しています。登録ヘルパーは必ずしも希望通りの仕事があるとは限らないため、稼働状況によって月収に変動が生じます。
▼2週間の働き方の例
【パートヘルパーCさん】
・週3日(平日)、日勤(9~18時)勤務
| 8/1(月) | 8/2(火) | 8/3(水) | 8/4(木) | 8/5(金) | 8/6(土) | 8/7(日) |
| 日勤 | 休み | 日勤 | 休み | 日勤 | 休み | 休み |
| 8/8(月) | 8/9(火) | 8/10(水) | 8/11(木) | 8/12(金) | 8/13(土) | 8/14(日) |
| 日勤 | 日勤 | 休み | 日勤 | 休み | 休み | 休み |
【登録ヘルパーBさん】
・水曜日(9~16時)勤務希望
| 8/1(月) | 8/2(火) | 8/3(水) | 8/4(木) | 8/5(金) | 8/6(土) | 8/7(日) |
| 休み | 休み | 出勤 | 休み | 休み | 休み | 休み |
・ 月、水、金(9~13時)勤務希望
| 8/8(月) | 8/9(火) | 8/10(水) | 8/11(木) | 8/12(金) | 8/13(土) | 8/14(日) |
| 出勤 | 休み | 出勤 | 休み | 出勤 | 休み | 休み |
なお、求人サイトでは「パート・アルバイト」の中に「登録ヘルパー」の求人が含まれているケースが多いため、応募時には雇用形態をよく確認しましょう。
派遣ヘルパーは派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の訪問介護事業所で勤務します。希望条件に合う就業先を派遣会社が探してくれるため、「自分で職場を探すのが不安」という方はメリットを感じやすいでしょう。
登録ヘルパーは訪問介護事業所と雇用契約を結び、登録した時間帯や曜日で働きます。派遣会社のような仲介はなく、勤務に関するやりとりは事業所と直接行うのが基本です。
登録ヘルパーの仕事内容は、正社員やパートの訪問介護員と大きく変わりません。介護を必要とする方の自宅を訪問し、事業所の指示に基づく介護サービスを提供します。
利用者さんは高齢者だけでなく、障害のある方を対象とする事業所もあります。
提供するサービスは主に「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3種類で、実施したサービス内容を記録し事業所に報告することも大切な仕事です。
身体介護とは、利用者さんの身体に直接触れて行う介助のことです。具体例としては以下が挙げられます。
●食事介助
●入浴介助
●排泄介助
●移動・移乗介助
●更衣介助
訪問介護では、介護職員初任者研修(旧・ヘルパー2級)以上の資格を持ったヘルパーが、利用者さんと1対1で介助を行います。身体介護のスキルに加えて、安心感を与えるコミュニケーションも重要です。
生活援助とは、日常生活を送るうえで必要な家事を支援するサービスです。具体例としては以下が挙げられます。
●掃除
●洗濯
●調理
●買い物
●衣類の整理
●ベッドメイキング
利用者さんが安心して在宅生活を続けられるように、日常生活に必要な支援を行います。ただし、ご家族の部屋の掃除など、利用さん本人以外への支援は含まれません。
利用者さんの通院や外出をサポートするため、車の乗り降りや移動の介助等を行います。なお、病院内での付き添いや介助は介護保険の適用外となるため、登録ヘルパーではなく病院職員が対応するのが一般的です。
サービス提供後は、所属する訪問介護事業所への報告を行います。サービスの内容や実施時間、利用者さんの様子などを事業所指定の方法で記録して提出します。
登録ヘルパーを含む訪問介護員(非常勤)の平均時給は、以下の通りです。
| 2024年 | 2023年 |
| 1,380円 | 1,330円 |
訪問介護員(非常勤)の平均時給は1,380円。前年から50円上昇しています。
ただし、このデータには登録ヘルパー以外の非常勤職員(時給で働くパートなど)も含まれているため、参考としてご覧ください。
他のサービス形態と比較すると、以下の通りです。
| 平均時給 | |
| 介護職全体 | 1,220円 |
| 訪問介護事業所 | 1,380円 |
| 特定施設入居者生活介護事業所 | 1,140円 |
| 介護老人福祉施設(特養) | 1,130円 |
| 介護老人保健施設(老健) | 1,110円 |
| 介護医療院 | 1,080円 |
| 通所介護事業所(デイサービス) | 1,080円 |
| 通所リハビリテーション事業所 | 1,080円 |
| 小規模多機能型居宅介護事業所 | 1,070円 |
| 認知症対応型共同生活介護事業所 | 1,060円 |
個人の労働時間によって月収・年収には差が出ますが、訪問介護の時給は、他のサービス形態より高い水準にあると言えます。
登録ヘルパーとして働くメリットには、以下が挙げられます。
●働き方の自由度が高い
●育児や他の仕事とも両立しやすい
●訪問先への直行・直帰が可能
ライフスタイルに合わせて働く時間帯や曜日を選べる点が、登録ヘルパーの最大のメリットでしょう。
「フルタイムの仕事や夜勤は難しい」という方でも働きやすく、育児との両立やダブルワークもしやすい雇用形態です。
自宅から訪問先へ直行・直帰できる場合が多く、事業所に出勤する手間や時間を省けるのも魅力です。自宅から近いエリアを希望すれば、移動の負担も軽くなります。
反対に、デメリットとしては以下が挙げられます。
●収入が安定しづらい
●生活援助のみだと時給が下がりやすい
●他の職員とやりとりする機会が少ない
登録ヘルパーのデメリットは、決まったシフトで働く正社員やパートヘルパーと比べて、収入が安定しづらいことでしょう。
利用者さんの体調不良などで訪問予定がキャンセルになることもあります。一般的に、急なキャンセルの場合は「キャンセル手当(補償)」が発生しますが、もともと予定していた支給額の60%程度の金額になるケースが多いです。
「生活援助●円」「身体介護●円」と時給を分けて設定している事業所では、行うサービスによっても給料が変動します。
また、直行・直帰で事業所に出勤しない場合、他のヘルパーやサービス提供責任者と直接コミュニケーションをとる機会が少ないという面もあります。
登録ヘルパーは、利用者さんの自宅を訪問して身体介護や生活援助のサービスを提供します。
身体介護を行うためには以下のような資格が必要なため、原則「初任者研修以上の資格が求められる」と考えておきましょう。
●介護職員初任者研修(旧・ホームヘルパー2級)
●介護福祉士実務者研修
●介護福祉士
なかには無資格で応募できる求人もありますが、この場合も内定後に必要な資格を取ってから、実際の介護サービスを行うことになります。
ここでは、登録ヘルパーに転職した方の体験談を2つ紹介します。
転職のきっかけや登録ヘルパーになってよかった点など、ぜひ参考にしてください。
経営悪化をきっかけに前職の訪問介護事業所を辞めて、新たに2つの事業所で登録ヘルパーとして働くことにしたSさん。働いた分だけ収入に反映される点や、自由な働き方に魅力を感じていると言います。
【体験談より一部抜粋】
土日に働けることを伝えたら歓迎され、時給アップなどさまざまな面で優遇してもらいました。その甲斐あってか、処遇改善手当や交通費も含めて、2カ所の事業所を合わせた月収は48万円くらいになっていました。時給で働く登録ヘルパーなので、月によって多少の違いがありますが、これなら正職員で働くよりもよいかもしれないと思い始めました。
人手不足なので仕事はたくさんあるし、時間帯や曜日も自由に選べます。登録ヘルパーって働きやすいな、というのが実感でした。
本業が美容師のAさんは、週1回登録ヘルパーとして訪問介護の仕事もしています。基本的には毎週同じ利用者さんを担当し、1日6件のお宅を訪問しているそうです。
【体験談より一部抜粋】
求人サイトで介護職の仕事を探してみたら、施設よりも訪問介護の方が「週1日からOK」という事業所が多かったので、訪問介護の求人に応募しました。はじめての訪問のときはとても緊張しましたが、先輩が同行してくれたので、利用者さんへの接し方もすぐに理解できました。
美容師の仕事の傍らで週1日だけ介護に関わらせてもらっていますが、必要とされる仕事に出会えて良かったです。この週1回の仕事がとても大切なものに思えています。
登録ヘルパーは、働く時間帯や曜日によって収入に差が出ることがあります。「登録ヘルパーの仕事でしっかり稼ぎたい」という方は、求人を選ぶ際に以下のポイントもチェックしてみましょう。
ここでは、登録ヘルパーで稼げる求人の探し方を紹介します。
訪問介護には、サービス提供の時間帯に応じた以下の加算があります。
| 時間 | 加算 | |
| 早朝 | 6時~8時 | 25% |
| 夜間 | 18時~22時 | 25% |
| 深夜 | 22時~翌6時 | 50% |
出典:厚生労働省「訪問介護」
上記の「夜間・早朝加算」「深夜加算」があるため、該当の時間帯は時給の金額も高く設定されている場合が多いです。
例えば、時給1,380円で、早朝・夜間は25%、深夜は50%時給を増額している事業所の場合、時給は以下のようになります。
| 6時~8時 | 1,725円 |
| 8時~18時 | 1,380円 |
| 18時~22時 | 1,725円 |
| 22時~6時 | 2,070円 |
この事業所で登録ヘルパーとして働くなら、18時~翌8時の間で夜勤シフトに入ったほうが、その分日中よりも稼げることになります。
また、事業所によっては土日祝の時給を高めに設定している場合もあります。
夜勤や土日祝の勤務が可能な方は、その時間帯の時給が高い求人を探してみるとよいでしょう。
多くの訪問介護事業所では、保有資格に応じた「資格手当」が支給されています。
「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、訪問介護員(非常勤・時給者)の平均給与額は117,560円ですが、介護福祉士の資格保有者に限定すると128,450円と、1万円以上高い金額になっています。
求人を探す際は資格手当の有無と支給額をチェックしておくとよいでしょう。
登録ヘルパーは、サービス内容によって時給が異なる場合が多いです。
身体介護(入浴・排泄・食事介助など)と生活援助(掃除・調理・洗濯など)でそれぞれに時給額を設定している事業所では、身体介護の時給のほうが高いケースが一般的です。
求人を比較する際は、サービスごとの時給も確認しておくとよいでしょう。
これから登録ヘルパーとして働こうと考えている方向けに、以下の疑問に回答します。
全国的に高齢化が進むなか、訪問介護は需要のある仕事で、登録ヘルパーの求人も数多くあります。
一方で、以下のような理由から「仕事がない」と感じるケースもあるでしょう。
・希望の曜日や時間帯に合う仕事がない
・スキルが不足しているため、紹介してもらえる仕事が少ない
登録ヘルパーは曜日や時間帯を指定して働くため、必ず希望に合う仕事があるとは限りません。特に、資格や経験が不足していると、できる仕事が限定される可能性があります。
こうした状況を改善するには、より上位の資格を取得してステップアップしたり、まずはパートや正社員で経験を積んだりするのも有効な方法です。
また、複数の訪問介護事業所に登録して仕事を掛け持ちすることで、より希望に合う働き方ができる可能性もあります。
登録ヘルパーも勤務開始から6カ月が経過すれば、有給休暇を取得できます。ただし「何日有給が付与されるか」は労働日数に応じて算出されるため、注意が必要です。
厚生労働省の資料には、以下のように記載されています。
・短期間の労働契約を繰り返し更新している訪問介護労働者であっても、雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合は、年次有給休暇を与えなければなりません。(労働基準法第39条)
・所定労働日数が少ない労働者に対しても、所定労働日数に応じた年次有給休暇を付与しなければなりません。
出典:厚生労働省「訪問介護労働者の法定労働条件の確保のために」
有給の申請方法は事業所によってルールが異なるため、就業先できちんと確認しておきましょう。
業務中のケガは労災保険の適用範囲内です。さらに、そのケガによって労働できない状況だと認められれば、休業手当の支給対象となります。
厚生労働省の資料には、以下のように記載されています。
使用者の責に帰すべき事由により、訪問介護労働者を休業させた場合には、使用者は休業手当として平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければなりません。(労働基準法第26条)
出典:厚生労働省「訪問介護労働者の法定労働条件の確保のために」
上記で言う「訪問介護労働者」とは雇用形態に関わらず、使用者(事業所)の指揮監督下にある訪問介護員のことであり、登録ヘルパーも該当すると考えられます。
登録ヘルパーは、複数の事業所に登録することが可能です。収入を安定させるため、掛け持ちで働く登録ヘルパーは少なくありません。
ただし掛け持ちの可否は就業先によっても異なるので、まずは事業所に相談しましょう。掛け持ちが認められない場合でも、シフトを見直すなどの解決策を提示してもらえるかもしれません。
訪問介護の登録ヘルパーは、希望の曜日や時間帯を選んで働く雇用形態です。正社員やパートと比べて自由度の高い働き方が可能なため、子育てやダブルワークとも両立しやすいという特徴があります。
時給が高い夜間や土日に稼働したり、条件の良い事業所を掛け持ちしたりと、働き方の工夫次第で収入アップも目指せます。
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