訪問介護員(ホームヘルパー)として働くには、原則資格が必要です。本記事では、訪問介護の仕事に必要、あるいは役立つ資格・研修を一覧で紹介します。
「無資格者が最初に取るべき資格は?」「実務経験なしでも取れる資格は?」などのよくある質問にも回答します!
目次
■訪問介護は資格なしだと原則働けない
・2024年3月末コロナ禍の臨時措置が終了
■訪問介護に必要な資格・研修一覧
・介護職員初任者研修
・介護福祉士実務者研修
・介護福祉士
■訪問介護で役立つ資格・研修一覧
・生活援助従事者研修
・認知症介護基礎研修
・喀痰吸引等研修
・重度訪問介護従業者養成研修
・難病患者等ホームヘルパー養成研修
■訪問介護の資格に関するよくある質問
・無資格者が最初に取るべき資格は?
・実務経験なしでも取れる資格は?
・看護師や准看護師が訪問介護の仕事をする場合の資格要件は?
■訪問介護の仕事には資格が必要
訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者さんの自宅を訪問して生活に必要な介護や援助を行う、在宅介護サービスの一種です。
具体的な業務内容は、以下の通りです。
身体介護 | 入浴介助、食事介助、排泄介助、移動・移乗の介助、服薬介助など |
生活援助 | 調理、配膳、買い物、掃除、洗濯、シーツ交換など |
通院等乗降介助 | 車両への乗降介助、通院の支援 |
ホームヘルパーは原則、利用者さんの自宅に1人で訪問してサービス提供を行うため、臨機応変な判断力とスキルが求められます。
特に利用者さんの体に直接触れて行う「身体介護」は一定の技術を要するため、介護職員初任者研修以上の資格が必要です。(→必要な資格について詳しくはこちら)
2020年2月、国は新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、介護サービス事業所の人員基準を柔軟化する方針を公表。
一時的な措置として、無資格者(高齢者へのサービス提供経験がある者)でもホームヘルパーとして働くことが可能でした。
しかし2024年3月、厚労省より以下の内容が通知されています。
新型コロナウイルス感染症については通常の医療提供体制に移行し、各種公費支援等の対応は終了することを踏まえ、新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いに関する別紙に記載の事務連絡については、令和6年3月31日をもって廃止します。
出典:厚生労働省「令和6年4月以降の新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」
これにより、2024年3月末でコロナ禍の臨時的な措置は終了しました。
訪問介護のヘルパーとして働くには、所定の資格が必要となっています。
訪問介護サービスを提供するうえで、利用者さんの体に直接触れる「身体介護」を行うには、以下のような資格が必要です。
ここでは、訪問介護の仕事に必要な資格について紹介します。
介護職員初任者研修は、介護の仕事に必要な基礎知識・技術を身につけるための入門的な研修です。
以下にカリキュラムの内容をまとめました。
研修科目 | 時間数 |
職務の理解 | 6時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
介護の基本 | 6時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化の理解 | 6時間 |
認知症の理解 | 6時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 |
振り返り | 4時間 |
合計 | 130時間 |
上記のカリキュラムを受講し、筆記試験(1時間程度)に合格すると修了できます。
介護職員初任者研修を修了すると、生活援助だけでなく身体介護の業務もできるようになります。
ホームヘルパーとして働く場合は、まず本研修の修了を目指すとよいでしょう。
介護福祉士実務者研修は、より質の高い介護サービスを提供するための、専門的な知識と技術を学ぶ研修です。
以下にカリキュラムの内容をまとめました。
研修科目 | 時間数 |
人間の尊厳と自立 | 5時間 |
社会の理解Ⅰ | 5時間 |
社会の理解Ⅱ | 30時間 |
介護の基本Ⅰ | 10時間 |
介護の基本Ⅱ | 20時間 |
コミュニケーション技術 | 20時間 |
生活支援技術Ⅰ | 20時間 |
生活支援技術Ⅱ | 30時間 |
介護過程Ⅰ | 20時間 |
介護過程Ⅱ | 25時間 |
介護過程Ⅲ(スクーリング) | 45時間 |
発達と老化の理解Ⅰ | 10時間 |
発達と老化の理解Ⅱ | 20時間 |
認知症の理解Ⅰ | 10時間 |
認知症の理解Ⅱ | 20時間 |
障害の理解Ⅰ | 10時間 |
障害の理解Ⅱ | 20時間 |
こころとからだのしくみⅠ | 20時間 |
こころとからだのしくみⅡ | 60時間 |
医療的ケア | 50時間 |
合計 | 450時間 |
受講時間は合計450時間ですが、すでに介護職員初任者研修を修了している場合は一部の科目が免除されます。
介護福祉士実務者研修を修了して実務経験を3年以上積むと、介護福祉士国家試験の受験資格が得られます。
より実践的なスキルを身につけ、キャリアアップを目指したい方に適した研修です。
介護福祉士は、介護分野で唯一の国家資格です。取得するには、受験資格を満たした上で介護福祉士国家試験に合格する必要があります。
受験資格を得る方法は以下の4通りです。
①養成施設ルート
高等学校を卒業し、介護福祉士養成施設を卒業する
②実務経験ルート
介護などの実務経験を3年以上積み、実務者研修(または介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修)を修了する
③福祉系高校ルート
福祉系高校を卒業する(特例高校は実務経験が9カ月以上必要)
④EPAルート(外国人対象)
介護福祉士として実務経験を3年以上積む
働きながら介護福祉士を取得するには、現場で経験を積み介護福祉士実務者研修を修了する「実務経験ルート」が近道です。
ホームヘルパーとして必須ではありませんが、取得しておくと訪問介護の仕事に役立つ資格もあります。
ここでは、業務の幅を広げたい方や、これから訪問介護の仕事を始める方におすすめの資格・研修を5つ紹介します。
生活援助従事者研修は、生活援助を行うために必要なスキルの習得を目的とした研修です。
修了後は、ホームヘルパーとして掃除・洗濯・調理などの生活援助を中心としたサービス提供が可能になります。ただし、この研修を修了しても身体介護は行えません。
生活援助従事者研修のカリキュラムは、以下の通りです。
研修科目 | 時間数 |
職務の理解 | 2時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 6時間 |
介護の基本 | 4時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 3時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化と認知症の理解 | 9時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 24時間 |
振り返り | 2時間 |
合計 | 59時間 |
上記のカリキュラムを受講し、筆記試験(30分程度)に合格すると修了できます。
比較的短時間で学べるため、上位資格を目指す前のステップとして挑戦したい方や、仕事・育児などと両立して受講したい方にもおすすめの研修です。
また、生活援助従事者研修を修了すると、介護職員初任者研修を受講する際に一部の科目が免除されます。
認知症介護基礎研修は、認知症の方へのケアを行ううえで欠かせない、基礎的な知識と技術を身につけるための研修です。
2024年4月以降、無資格で介護業務に携わる職員に受講が義務付けられました。
ただし、すでに介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修などを修了している場合は、受講が免除されます。
認知症介護基礎研修で学習する内容は、以下の通りです。
●認知症を取り巻く現状
●認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方
●認知症の定義と原因疾患
●認知症の中核症状と行動・心理症状の理解
●認知症ケアの基礎技術
実施主体により異なりますが、基本的にはeラーニングの動画視聴150分程度に加え、確認テストに合格すると修了できます。
自宅学習が可能で受講時間も短いため、無資格から介護の仕事を始める方にもおすすめの研修です。
認知症介護基礎研修を修了したあと、認知症ケアの経験を積み「専門性を高めたい」と考える場合は、認知症介護実践者研修や認知症介護実践リーダー研修など、より高度な研修へのステップアップも可能です。
喀痰吸引等研修は、喀痰吸引や経管栄養に関する知識・技術を学べる研修です。
処置の対象者や種類によって、第1号研修・第2号研修・第3号研修の3種類に分かれており、それぞれ必要な基本研修(講義+演習)と実地研修を受講します。
以下は、第1号研修のカリキュラムの内容です。
●基本研修
【講義】 | |
研修科目 | 時間数 |
・人間と社会 ・保険料制度とチーム医療 ・安全な療養生活 ・清潔保持と感染予防 ・健康状態の把握 ・高齢者及び障害児・者の喀痰吸引概論 ・高齢者及び障害児・者の喀痰吸引実施手順解説 ・高齢者及び障害児・者の経管栄養概論 ・高齢者及び障害児・者の経管栄養実施手順解説 |
50時間 |
【演習】 | |
研修科目 | 回数 |
・口腔内の喀痰吸引 ・鼻腔内の喀痰吸引 ・気管カニューレ内部の喀痰吸引 ・胃ろう又は腸ろうにより経管栄養 ・経鼻経管栄養 |
各5回以上 |
・救急蘇生法 | 1回以上 |
●実地研修
研修科目 | 回数 |
・口腔内の喀痰吸引 | 10回以上 |
・鼻腔内の喀痰吸引 ・気管カニューレ内部の喀痰吸引 ・胃ろう又は腸ろうによる経管栄養 ・経鼻経管栄養 |
各20回以上 |
喀痰吸引等研修を修了すれば、医師・看護職員との連携のもと、登録を受けた事業所において、利用者さんへの喀痰吸引等が実施可能になります。
介護職としてスキルや業務の幅を広げたい方にとって、メリットの大きい資格だと言えるでしょう。
重度訪問介護従業者養成研修は、重度の肢体不自由者や知的・精神障害者等への適切な支援方法を学ぶ研修です。
入浴、排泄、食事などの介助をはじめ、家事援助や外出時の移動支援に関する知識・技術を習得します。
研修には「基礎課程」「追加課程」「統合課程」「行動障害支援課程」の4つの課程があり、いずれかを修了することで、重度訪問介護サービスに従事できます。
●基礎課程…重度訪問介護に必要な基礎知識・技術を習得する
●追加課程…基礎知識・技術を深め、緊急時の対応も習得する
●統合課程…基礎+追加課程の内容に加え、喀痰吸引等の演習も実施する
●行動障害支援課程…行動障害がある方への支援方法を学ぶ(強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)と同様の内容)
以下は、統合課程のカリキュラムの内容です。
研修科目 | 時間数 |
重度の肢体不自由者の地域生活等に関する講義 | 2時間 |
基礎的な介護技術に関する講義 | 1時間 |
コミュニケーションの技術に関する講義 | 2時間 |
喀痰吸引を必要とする重度障害者の障害と支援に関する講義・緊急時の対応及び危険防止に関する講義① | 3時間 |
経管栄養を必要とする重度障害者の障害と支援に関する講義・緊急時の対応及び危険防止に関する講義② | 3時間 |
喀痰吸引等に関する演習 | 1時間 |
基礎的な介護と重度の肢体不自由者とのコミュニケーションの技術に関する実習 | 3時間 |
外出時の介護技術に関する実習 | 2時間 |
重度の肢体不自由者の介護サービス提供現場での実習 | 3.5時間 |
合計 | 20.5時間 |
統合課程では、重度訪問介護のスキルに加えて、喀痰吸引や経管栄養の演習も受けられるため、より高い専門性を身に付けられます。
訪問介護の中でも、特に障害福祉の分野で活躍したい方は取得を目指すとよいでしょう。
難病患者等ホームヘルパー養成研修とは、難病を患った方が安心して自宅で生活できるよう、訪問介護サービスに必要な知識と技術を身につける研修です。
病気に関する専門的な知識を深めるとともに、適切な支援方法や関係する制度について学びます。
研修は「入門課程」「基礎課程Ⅰ」「基礎課程Ⅱ」に分かれており、それぞれのカリキュラムは以下の通りです。
【入門課程】 | |
研修科目 | 時間数 |
●難病に関する行政施策 ・難病の保健・医療・福祉制度Ⅰ |
1時間 |
●難病に関する基礎知識 ・難病入門 ・難病患者の心理及び家族の理解 |
3時間 |
合計 | 4時間 |
【基礎課程Ⅰ】 | |
研修科目 | 時間数 |
●難病に関する行政施策 ・難病の保健・医療・福祉制度Ⅰ |
1時間 |
●難病に関する基礎知識 ・難病の基礎知識Ⅰ ・難病患者の心理及び家族の理解 |
3時間 |
合計 | 4時間 |
【基礎課程Ⅱ】 | |
研修科目 | 時間数 |
●難病に関する行政施策 ・難病の保健・医療・福祉制度Ⅱ |
1時間 |
●難病に関する基礎知識Ⅱ ・難病の基礎知識Ⅱ ・難病患者の心理学的援助法 |
4時間 |
●難病に関する介護の実際 ・難病に関する介護の事例検討等 |
1時間 |
合計 | 6時間 |
難病患者等ホームヘルパー養成研修を受講することで、難病特有の症状やニーズが理解でき、よりきめ細やかな訪問介護サービスの提供につなげられるでしょう。
ここでは訪問介護の資格に関する、以下の質問に回答します。
無資格から訪問介護の仕事を始めるなら、まず介護職員初任者研修を取得するのがおすすめです。
介護職員初任者研修では、介護に関する基礎的な知識・技術を学べて、修了すると利用者さんへの身体介護を行えるようになります。
なお、介護職員初任者研修を飛ばして、上位資格にあたる介護福祉士実務者研修から取得することも可能です。
ただし、介護福祉士実務者研修のほうが受講期間は長くなるため、学習時間をしっかり確保できるか確認したうえで検討しましょう。
訪問介護で活かせる資格のなかには、実務経験がなくても取得できるものが多数あります。
この記事で紹介した以下の資格は、介護未経験からでもチャレンジ可能です。
・介護職員初任者研修
・介護福祉士実務者研修
・生活援助従事者研修
・認知症介護基礎研修
・喀痰吸引等研修
・重度訪問介護従業者養成研修
・難病患者等ホームヘルパー養成研修(資格要件あり)
詳細な受講条件は実施主体や研修課程によっても異なるため、事前によく確認しておきましょう。
訪問介護の仕事をするには介護職員初任者研修などの資格が必要ですが、看護師・准看護師・保健師の資格を持っている方は、介護職員初任者研修の受講が免除されます。
看護師や准看護師がホームヘルパーとして働く際は、都道府県に申請し、介護職員初任者研修の修了証明書を交付してもらうことが必要です。
ただし、都道府県によっては、看護師等の免許証をもって修了証明書の代わりとできる場合もあります。手続きの方法は、各自治体のホームページなどで最新の情報を確認しておきましょう。
以下は、看護師・准看護師がヘルパー業務をする場合の手続きの例です。
福井県 | 申請に基づき、介護職員初任者研修の修了証明書を交付する |
熊本県 | 2024年4月~介護職員初任者研修の受講免除手続き不要 |
奈良県 | それぞれの免許証をもって、修了証明書に代える扱いとする |
群馬県 | 申請に基づき、介護職員初任者研修の修了証明書を交付する |
詳細な資格要件については、就業先の事業所ともよく確認しておきましょう。
訪問介護は、ホームヘルパーが利用者さんの自宅に伺い、1対1で必要な支援を行う介護保険サービスです。
ホームヘルパーとして働くには原則資格が必要で、介護職員初任者研修などの資格がなければ、身体介護を行えません。
無資格や未経験から訪問介護の仕事を始める方は、まず介護職員初任者研修または介護福祉士実務者研修の修了を目指すのがおすすめです。また、そのほかにもスキルアップに役立つ資格・研修は多くあるため、経験を積みながら積極的な取得を目指すとよいでしょう。
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