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認知症
ペコロス
岡野雄一
ペコロスの母に会いに行く

2015年02月20日

『ペコロスの母の玉手箱』 ~ぺコロスさんのインタビューも必見! | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

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■書名:ペコロスの母の玉手箱
■著者:岡野雄一
■発行:朝日新聞出版
■出版年:2014年10月

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終末期を生きる認知症の人の姿をやさしく描く

岡野さんが描くコミック『ペコロスの母に会いに行く』は、認知症の実母を介護する中年男性の視点で母親を描いたベストセラー。ユーモラスな中にも、認知症の人の心情や行動、そして見守る家族の姿がリアルに描かれ、気付きの多い1冊だった。
いわばその第2弾と言える本書は、グループホームで暮らし、心身ともに弱り、死に向かう母みつえさんが描かれている。悩みながらも胃ろうを選択する岡野さんが、それまでと同様、週に3度ほど面会に訪れ、衰えていく母を見守る中で、さまざまなエピソードを描く。

もちろん、そのまま自然体で読むだけでも、引き込まれてページをめくる手が止まらない。が、介護職員にとっては、老人ホームで死を迎える利用者の姿、それを受け止めるスタッフ、そして看取り方などが描かれているため、さらに深く読むべき要素がたくさんある。中でも、弱っていく利用者の姿の描かれ方には注目したい。

本作には、みつえさんに胃ろうをするかどうか岡野さんが思い悩むシーンも。
本作には、みつえさんに胃ろうをするかどうか岡野さんが思い悩むシーンも。

認知症の人は、発症当初は怒りをぶつけたり、不穏になったりしがちだが、徐々に穏やかになり、まどろみの中に生きる人が多い。みつえさんの場合も同じで、それを著者の岡野さんは、さまざまなしがらみや苦しみから“ほどけていく”と表現している。みつえさんの周囲にはゆっくりとした空気が流れ、日を追うごとにそのゆっくりの度合いが増していく。同時に、みつえさんは自分の歴史を自在にさかのぼり、幼かった頃、妹と遊んだ日々や、夫との祝言の日のことに思いを馳せる。それらはすべて、甘くやわらかな思い出となって、みつえさんを包む。

「妄想」と言ってしまえば簡単かもしれない。けれど、岡野さんもグループホームのスタッフも、「みつえさんは子ども時代に遊びに行っている」と言うようにとらえている。

実は、岡野さん家族は、酒乱の父親に苦労させられてきた。特にみつえさんは、本当は優しいけれど気が小さい父の、不安からくる怒りの犠牲になった。岡野さんは、酔ってみつえさんに包丁を向ける父親を羽交い締めにしながら、「俺にも父と同じ血が流れている」ことの恐怖に負けて、20歳で故郷を捨てて上京した。岡野さんにとっても、みつえさんにとっても、それらは苦々しい過去だ。

しかし、認知症がすすんだみつえさんは、そんな苦しい時代を忘れ、やさしい思い出だけにひたる。みつえさんが「今、父ちゃんがおった」というその父親は、酒をやめて好々爺になった晩年の父である。苦しみから解放されたみつえさんは、すべてをゆるす。やわらかにぬくもる、みつえさんの想像の世界は、みつえさんにとっても岡野さんにとっても、なつかしい家族の玉手箱なのだ。

岡野さんはそんなみつえさんから、「むちゃくちゃたくさんのことを学んだ」と言う。
「認知症になる時間というのは、むしろとてもいい時間なのではないか、と思えたんですね。穏やかになった父に出会い、故郷の天草で少女時代に戻っている母は、決して辛くなかったと思いますし。死に向かうワンクッションとしては、自分にも認知症が訪れてほしいと思うほどです。いやもう、僕も65歳ですから。そろそろ来てますけれどね(笑)」

そして、岡野さんは言う。
「母の死を経験して、若い頃、あれだけ怖かった死が、そうでもなくなっている。人はだれだって、普通に死ぬ、ということが、しみじみわかったといいますか。生まれて世の中に出てきたということは、また去るということ。自然にそう思えました」

認知症、そして死。介護に携わる人たちでさえ、否定的にとらえがちなこのふたつを、肯定的にとらえることで、何かが変わる。本書は、それを教えてくれる貴重な一冊なのだ。




○●○ 作品エピソード ~ ペコロス(岡野雄一)さんをインタビュー ○●○

最初は自費出版だった!

Q_book3岡野さんが西日本新聞社から『ペコロスの母に会いに行く』を出版したのは、2012年のこと。
しかし、そもそもみつえさんを題材にした作品は、岡野さんが長崎でナイト系タウン誌の編集長をしていた時代に、タウン誌に自ら連載していた。その連載やその他の作品から、みつえさんを描いたものだけを抽出し、まとめて自費出版をしたのが始まりだという。
自費出版は2冊に渡る。それらは地元長崎の老舗書店などで販売し、特に『…母に会いに行く』は売上ベストワンを長く記録した。そこから地元メディアが岡野さんに注目し始めたのだ。
また、岡野さんが知り合いに贈呈した中の1冊が、詩人の伊藤比呂美さんの手に渡り、内容に感激した伊藤さんがさらに知り合いの編集者などに紹介したことも、メジャー出版の要因となったと言う。

東京にいた頃はマンガ誌の編集長をしていた岡野さん。
「マンガを持ち込む人が40歳をすぎていたら、『悪いことは言わないから、ふつうの仕事をしてふつうの結婚をしたら?』なんてアドバイスをしていました。それなのに、60歳を過ぎて漫画家としてデビューするなんて。自分が一番驚いています」。

著者プロフィール

岡野雄一(おかの・ゆういち)さん
1950年、長崎県生まれ。漫画家。20歳で上京し出版社に務めた後、離婚して長男とともに実家に戻り、父母と暮らす。認知症の母をテーマにした作品などを、当時編集長をしていたタウン誌に漫画を連載。それらを自費出版した漫画が地元の書店のベストワンとなり、口コミで広がって大ヒットに。著書に『ペコロスの母に会いに行く』(西日本新聞社)、『「ペコロスの母」に学ぶボケて幸せな生き方』(小学館新書)など。

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