2014年01月22日

「抱え上げる」5 | 「介護求人ナビ　介護転職お役立ち情報」

こんにちは、身体技法研究家の甲野陽紀です。抱え上げの動作は、手から足のつま先までの、カラダ全体が連動する感覚がつかめるという意味でも、ぜひ身につけておきたい介護術です。「カラダ全体を使う」は「大きく動く」こととは違う、ということがなんとなくでも感じられたら、“山頂”は近いですよ!
＜協力　身体技法研究家　甲野陽紀氏／文・構成　佐藤大成＞

カラダの「縮ませ方」のポイント2

タ　今回は、カラダの「縮ませ方」の仕上げですね。

陽　そうですね。前回稽古したように、ポイントは、しゃがみ込むときに「ヒザだけに頼らず、お尻も落としていく」ということですが、動く感覚としては、ヒザを曲げてから、お尻を落とす、のではなくて、ヒザもお尻も「一緒に動き出していく」というのが、もうひとつのポイントですね。

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タ　なるほど。ヒザはヒザの動きを、お尻はお尻の動きをしながらも、一緒に動いていく、わけですね(写真a)。

陽　もう少しズームアップしていうと、ヒザの動きは「ヒザ裏が前に出ていくような」、お尻の動きは「腿の付け根の部分(鼠蹊部［そけいぶ］と呼ばれるあたり)が後ろに動いていくような」感覚でつかんでもらえると、全身の連動がよりスムースになり、カラダ全体が真下に自然に沈みこんでいきます。この動き方が身につくと、上体が前後にふらついたりせず、安定感も出てますよね(写真b)。

タ　逆に、ヒザだけ先に動くとこんな感じになりますよね？(写真c)。

陽　そうですね。これはヒザに頼っている動きになりますね。そうすると、上体が少し前にいきますから、抱え上げるときには、どうしてもカラダを後ろにそらしたくなるのではないでしょうか。

タ　たしかに!　最初にやってみたときは、上に動くというよりは、後ろに反る感じでした。どうしてそうなったかというと、考えてそうしたというより、反ることしかできなかったんですよね。

陽　カラダとしては、そこにしか「動く余地」がなかった、ということですね。

タ　そういうことですか……カラダとしてはできることを一生懸命やっているわけですね。でも、そのときはなんとなく「大きくカラダを反らす」のがカラダにとっても“いいことだろう”と思ってはいたんですよ。それは思い込みだったんですね、きっと……

陽　そこに気がついたのは、大きな前進ですね!

タ　はっ？　ちょっと自分ではよくわからないんですけど……？

陽　「カラダ全体で動く」と「大きく動く」とは、違うことなんですよね。「カラダ全体で動く」ということをもう少しくわしくいうと、「カラダの部分部分がそれぞれの役割の中で独立して動きながらも、同時に、互いに協調してひとつの動作を作り上げていく」ことだと思うんです。

タ　人間の組織にたとえていうと、組織の中のひとりだけが大きな力を出すんじゃなくて、全員が少しずつ協力しながら力を出し合う、という感じでしょうか？

陽　まさに、そんな感じですね。みんなが少しずつ力を出し合えば、結果として大きな力にはなりますけど、「それぞれの動き自体は小さくてすむ」ことになりませんか？

タ　なーるほど!　それで陽紀先生の動きはいつも「さりげなく見える」んですね。それでいて、結果的に抱え上げも楽にできると！

陽　カラダの負担という面から見ても、そのほうが好都合なんですよ。しゃがみ込むとき、ヒザだけに頼ればヒザに大きな負担がかかりますが、連動してお尻も動き出すことで、カラダの部分部分にとって負荷が小さな動きにもなりますから。

タ　負荷が小さいということは、それだけ「疲れにくく、ケガの防止にもなる」ということですね!

陽　と、思います。では、次回は抱え上げ動作の総復習を兼ねて、タネエディターに再トライしてもらいましょうか。

タ　もう、自信満々です(笑)

◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点からの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生まれていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html

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著者：介護求人

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