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2016年12月01日

成年後見制度は誰のため?認知症の人などを守る、この制度が抱える課題とは | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

成年後見制度は、認知症や精神障害、知的障害などで、判断力に課題のある人の権利や財産を守るための制度です。詐欺などの被害に遭う認知症などの人が多いことから、この制度の利用促進が図られようとしています。しかしそれ以前に、この制度が抱える現状の課題をもっと検討すべきだという意見が、新聞の社説で示されました(*)。それは、果たして本人の意思が適切に尊重されているのか、ということ。そして、それをチェックする仕組みがないのは問題ではないかということです。


成年後見制度の3つの類型とは

image001実際、成年後見制度は、本人自身が利用したいと希望して申立をすることは多くありません。ほとんどの場合、家族や、本人の権利擁護の必要を感じた行政職員や専門職による働きかけで申立が行われます。最近増えているのは、市区町村長等による申立です。申立は、本人の判断能力の程度に応じ、下の補助・保佐・後見の3つの類型のうちどれかを選んで家庭裁判所に行います。

家庭裁判所は、申立書類や本人、申立人との面接、調査、医師による判断能力の鑑定書(ない場合もある)などから、どのような後見内容にするか(同意権・取消権、代理権の範囲等)、誰を後見人等にするかについての審判を下します。その審判に基づいた登記が行われると、成年後見が開始になります。


成年後見制度 3つの類型の概要
●補助
【本人の判断能力】精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分
【開始手続】申立権者は、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、任意後見人、市区村長 等。本人の同意が必要
【同意権・取消権】付与の審判と本人の同意が必要
【代理権】付与の審判と本人の同意が必要

●保佐
【本人の判断能力】精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分
【開始手続】申立権者は、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、任意後見人、市区村長 等。本人の同意は不要
【同意権・取消権】付与の審判と本人の同意は不要
【代理権】付与の審判と本人の同意が必要

●後見
【本人の判断能力】精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある
【開始手続】申立権者は、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、任意後見人、市区村長 等。本人の同意は不要
【同意権・取消権】付与の審判と本人の同意は不要
【代理権】付与の審判と本人の同意は不要

※成年後見人等は、補助・保佐・後見の3つの類型すべてにおいて、本人の意思の尊重、本人の心身の状態及び生活の状況に配慮する義務がある。


誰のための「安心・安全」かを繰り返し自問する

image003上の成年後見制度の説明にあるように、後見開始の申立ての際、「保佐」「後見」の類型での申立に本人の同意は不要です。つまり、本人が望まなくても、保佐人、後見人を選任することができてしまうのです。保佐人、後見人が選任されると、本人が契約行為をしようとしても、自分自身で契約を行うことが一部制限されたり、できなくなったりします。また、後見人は本人に代わって契約を結ぶ権限も与えられています。

たとえば、施設入所の契約。もちろん、原則としては本人の意思に反して施設入所をさせることはできません。しかし、本人に適切な判断ができず、在宅での生活を続けることが事実上困難である場合は、本人が同意しなくても、後見人が家族や周囲の支援者等と相談の上、入所の契約を結ぶ場合もあります。

本人の希望を尊重して、生活が成り立たなくても在宅での生活を続けるか。本人がどれだけいやがっても施設での安全・安心な生活を保障するか。この判断はとても難しいものです。後見人等の判断が正しいかどうかを判断する基準はなく、正しい判断をしたかどうかを確認する仕組みもありません。果たして、「安全・安心な生活」とは誰にとっての「安全・安心」なのか。それは一部の後見人等がハラハラしながら被後見人等の在宅生活を見守るつらさから逃れるための、後見人自身にとっての「安全・安心」ではないのか…。

どうしても自宅から離れたくない、という人を、説得の上、施設に入所させた話を聞いたことがあります。何の持病もなかったその人は、入所後わずか1週間で突然死してしまったそうです。施設入所と突然死の因果関係はわかりません。しかし、施設入所を勧めた専門職は、その後、長く大きな後悔にさいなまれたと言います。難しい判断を下すとき、後見人等は、それが本当に被後見人等のためになる判断かを繰り返し自問する必要があります。そして、後見人等がいくら自問したとしても、こうした悲しい結果に終わることもあります。

判断能力に課題のある人の意思をどう汲み取り、意思決定支援を行っていくのか。社説の記事にもあるとおり、これは大きな課題です。本当の権利擁護の実践のために、そして、専門職自身が後悔にさいなまれることがないように、専門職はその方法を考えていかなくてはなりません。

<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>

*社説 成年後見制度 誰のための利用促進か(毎日新聞 2016年11月6日)

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