介護の仕事で最も大切なのは人材。より定着率を高め、持っている能力を十分に引き出していくには、適切な教育・研修を実施することが必要です。
理想は、参加した職員自身、「得るものがあった」という手応えがあり、送り出した職場も「参加して成長した」と感じられる研修です。
そんな研修を目指して、社会福祉法人小田原福祉会、社会福祉法人合掌苑、社会福祉法人福祉楽団という個性あふれる3法人が、株式会社リクルートマネジメントソリューションズとともに開発したのが、「DRAW UP!研修」です。
独立した3法人が、相互交流しながら合同で研修を実施する。それだけでもユニークですが、この「DRAW UP!研修」には、参加者に様々な“気づき”を促す仕掛けがあります。
これまでにない取り組みであるこの研修について、3回に分けて紹介します。
*「DRAW UP!研修」…1回目、2回目、3回目(最終回)はこちら
3法人が交流しながら行う、介護リーダーのための研修
「DRAW UP!研修」の対象は、ユニットリーダー。通常の介護職からワンランクアップして、初めてメンバーを指導する立場になった職員です。
介護の現場では、新入職員研修や管理職研修を行っている法人はよく耳にします。しかし、現場でのがんばりが評価され、ユニットリーダーに引き上げられた職員向けの研修は、意外に用意されていません。
介護職としての能力と、リーダーとしての能力は別のものです。介護職として優秀であっても、マネジメントについて学ぶ機会がなければ、リーダーとしてメンバーをうまく統率していけるとは限りません。
メンバーのときには活躍していたのに、リーダーになったがためにメンバーとの関係がギクシャクして自信を失い、中には離職してしまう人もいます。
3法人は、このユニットリーダークラスを育て、定着率を上げることで組織の成熟度を高めていく必要があると考えました。そして、この研修の開発に取り組んだのです。
▼研修の全体像
「DRAW UP!研修」には、3法人から10人ずつ、計30人が参加。内容は、1泊2日の「STEP 1」、「相互現場訪問」、再び1泊2日の「STEP 2」の3パートに分かれています。
開発以来2回目の開催となる今回は、「STEP 1」が2016年11月に、「STEP 2」は2017年2月に行われました。
「STEP 1」から、「相互現場訪問」、「STEP 2」の1日目までは、3法人が入り交じった6人ずつでグループワークを行います。
違う法人の職員と交流することで、自法人内での研修では出てこないような意見、異なる視点に触れ、自分たちの中に“新しい風”を入れていくのです。
介護事業所の「相互現場訪問」で、多くの気づきが得られる
昨年11月のSTEP 1は、このような内容で行われた
この研修で特にユニークなのは、「STEP 1」と「STEP 2」の間に行われる「相互現場訪問」です。
これは、研修のグループメンバーで、それぞれの法人を1日ずつ、3日かけて互いに訪問し合うというものです。
どのような問題意識を持ち、それぞれの法人のどの事業所をいつ訪問するかは、各チームで相談の上決定します。
自法人を案内する際、その案内先は必ずしも自分が働く職場とは限りません。同じ法人内でありながら、自分自身、初めて訪れる事業所の場合もあります。
自法人を案内しているのに、十分に説明ができないこともあれば、説明しようとして、改めて職場でいつも取り組んでいることの意味を深く理解できることもあります。
自分では当たり前と思っていたことを、他の法人のチームメンバーにほめられ、意外に思うこともあります。
他の法人を訪問した際には、訪問先の先進性に驚いたり、反対に、自法人の良さ、強みを再確認したり。「相互現場訪問」は、非常に多くの気づきを得る体験となります。
次回は、STEP 2の内容と、この研修の意義などについて紹介します。
*「DRAW UP!研修」参加3法人
社会福祉法人小田原福祉会
社会福祉法人合掌苑
社会福祉法人福祉楽団
*取材協力
社会福祉法人小田原福祉会 法人事務局 人財育成センター センター長 井口健一郎さん
社会福祉法人合掌苑 マネージャー 森田健一さん
社会福祉法人福祉楽団 サポートセンター 人事部長 上野興治さん
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ ビジネス・テクノロジーデザイン部事業開発グループ 藤江嘉彦さん
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*「DRAW UP!研修」…
1回目、
2回目、
3回目(最終回)はこちら