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2018年12月06日

入院時の拘束は当たり前?介護と医療の「身体拘束」への意識の差とは | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

一般病院では認知症を持つ人の45%が身体拘束されているという事実


「身体拘束ゼロへの手引き」(発行:厚生労働省)

「身体拘束ゼロ」。介護業界では、2000年の介護保険制度のスタートと同時に、原則として身体拘束は禁止となりました。

翌2001年には、厚生労働省が「身体拘束ゼロへの手引き」を発行し、身体拘束はなぜ問題なのか、どうすれば拘束せずにすむかなどを、実例も交え、詳しく説明しています。

これにより介護業界では、やむを得ない事情で一時的に拘束することはあっても、「本来、身体拘束はしてはならないのだ」という意識が浸透しています。

しかし、医療機関では、今も身体拘束が当たり前のように行われています。
2018年11月には、国立がん研究センターなどの調査により、一般病院などに入院した認知症を持つ人のうち、45%の人が身体拘束を受けていたことが明らかになりました(*)。

医療機関での身体拘束については、精神科病院では精神保健福祉法により、限定的に容認されています。しかし、漫然と拘束を続けることがないよう、「代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われる行動の制限であり、できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならない」という告示が、2000年に出されています。

一方、一般病院では、明確な法的基準はなく、身体拘束についての判断は医師や看護師に委ねられているのが現状です。


身体拘束への同意が必要だった一般病院への入院。患者側の意思は?

筆者は、認知症を持つ方の成年後見人を務める中で、複数回、精神科病院や一般病院での入院手続に関わりました。その際、入院時に署名を求められる書類として、どの病院でも、「身体拘束への同意書」が含まれていました。

一般病院では、「認知症がある方の場合、混乱して点滴を抜いたり、暴れたりすることがあるので、その場合にはやむを得ず拘束することもあります。その対応についての同意書をいただいています」というような説明を受けました。
その際、「拘束が必要になったときに同意するかどうかを判断してはいけませんか」、あるいは、「拘束には同意できないと判断したらどうなるのですか」と聞くと、「そういう方は他の病院に移っていただくことになります」との回答でした。

事実上、患者側に選択の余地はないということです。

精神科病院では、入院していた被後見人の方は非常に穏やかな人でしたが、歩行が不安定なのに立ち上がることが多いという理由で、車イスに拘束されていました。
これについては、拘束をはずすことはできないか、と何度か交渉しました。そのときの看護師長の答えは、「看護師の数が少なく見守りが十分にできない。転倒のリスクがある以上、拘束せざるを得ない」とのことでした。医師の判断を聞いてみると、「リスクはあるので、拘束を辞める指示は出せない」とのこと。

こちらも患者側に選択の余地はなく、結局、退院して特別養護老人ホームに入所するまで拘束は続きました。


「入院したくない」と思わせる身体拘束は、本当に正しいのか?

確かに、医療機関は治療の場であり、安全を第一優先とされがちなのはやむを得ない部分もあります。しかし、身体拘束をしていない精神科病院、一般病院もあります。
つまり、その気になれば、医療機関であっても身体拘束ゼロは実現できるということです。

ここで介護職のみなさんにお願いしたいのは、どうすれば身体拘束をなくせるのか、医療機関に対して情報発信をしていただきたいということです。

「病院は命を守るところだから」というのが、医療機関側の大義名分です。しかし、命を守ることだけを優先し、尊厳が損なわれてもいいということではないはずです。

精神疾患による精神科病院への入院歴が長かった、ある高齢の男性は、混乱したときにおむつを当てられ、ベッドに拘束されて身動きが取れない1ヶ月を過ごしたことがあると言います。
この間は毎日、泣いて過ごし、死にたい気分になったとのこと。男性は、尊厳を著しく傷つけられ、「二度と入院したくない」と語りました。

本人の話や、退院後の様子から、果たして本人の尊厳に配慮しながら拘束していたのか、病院側の対応に疑問を感じました。

「身体拘束ゼロへの手引き」には、「高齢者ケアに関わるすべての人に」という副題がつけられています。「身体拘束ゼロ」は介護現場だけでの約束ではないということです。

もちろん、介護の現場ほど人員配置が手厚くない病院で、まったく拘束をしないのは難しいかもしれません。それでも、入院中、何かあれば身体拘束しますよと、入院した時点で白紙委任状のような同意書を得ておく実態は変えていく必要があります。

ケアの工夫によって、安易に拘束せずにすむこともあるはずです。そのことを、ぜひ介護の現場から発信していっていただきたいと思います。

<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>

*認知症の45%、入院時身体拘束 一般病院、研究チーム全国調査(共同通信 2018年11月18日)

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