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2019年08月22日

話題の車いす国会議員の活動から考える「介護や福祉のあり方と社会制度」 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

2人の大型車いすユーザー国会議員が誕生

2019年7月、参議院議員選挙が行われ、ある2人の初当選者が大きな注目を集めました。
一人はALS(筋萎縮性側索硬化症)を持つ舩後靖彦さん。もう一人は、重度の障害を持つ木村英子さん。
この2人が当選して議員活動を行うことになり、国会は一気にバリアフリー対策が進んでいます(*1)。

注目すべきなのは、2人の車いすの議員が誕生したことで、これまで障害を持つ人たちが訴えても、検討すらされてこなかったような問題が、一気に俎上に載り、国の検討課題となったことです。
「当事者が国会の中に入ることに、大きな意味がある」と、2人が所属する政党の代表である山本太郎さんが指摘したとおりです。

国会を動かしたこの出来事は、障害者支援関係者だけでなく、高齢者支援をしている介護職の方にとっても、他人事ではないはずです。

以前も、車いすの男性国会議員は存在していました。しかし、そのときには、これほどの話題にはなりませんでした。
今回は女性議員も誕生し、かつ、2人はともに大型車いすのユーザーです。まず、車いすのまま議場に入れるよう、改修が行われ、今後は、多目的トイレの増設なども検討されているそうです。


生活のための障害福祉サービスが、働くことの妨げに?

この2人の議員の当選により、国会のバリアフリー化が進められるだけでなく、支援体制についての問題提起もされています。

2人の議員は日常生活上、多くの介助が必要で、障害福祉サービスを利用しています。国会内で議員活動を行う間の介助費用と、議場の改修費用は、参議院の予算から支払われることが決まりました。

舩後さんが利用している「重度訪問介護」は、最長24時間利用できる障害福祉サービス。しかし、自宅内での利用を想定しているため、通勤中や職場内では利用できません
実はこれが、重度障害者の就労の妨げになっているという指摘があります。
通勤時や就労時に介助を望むなら、その費用を自分自身で負担するか、職場が負担するか、どちらかしか選択肢がないからです。

障害者雇用を検討している企業も、介助費用の負担まで必要だとわかれば、雇用に踏み切れなくなる可能性があります。
「介助費用を負担する力がある企業だけが障害者を雇用できる」とも取られかねません。
舩後さん・木村さんが所属する政党では、この制度上の課題について問題提起する意味で、2人の議員の介助費用を国ではなく“職場”である参議院が負担することに、反対しています(*2)。

介助費用を負担できる職場は多くなく、自己負担できる障害者もまた、多くありません。
重度訪問介護の利用に関する制度上の課題が解決されることで、障害者雇用が進む可能性があります。

障害があってもなくても同じように生活できる社会を作っていこうという「ノーマライゼーション」のあり方が、国の施策を決める国会において、今、問われているのです。


きっかけ1つで社会の制度も変わる!

舩後靖彦さんと木村英子さんの当選はマスコミで大きく報道され、少なくとも、「車いすの国会議員が誕生した」「それで国会はいろいろ対応が必要になっている」という事実は、世間に広く伝わりました。多くの人が関心を寄せれば、解決に向けた動きが生まれやすくなります

全く違う課題ですが、高齢者や障害者に関する事件などが、社会の制度を変えるきっかけになったことがあります。
例えば、認知症を持つ高齢者が家を抜け出し、鉄道事故で亡くなった事件。家族の見守り責任がどこまで求められるかが大きな議論になりました。残念ながら、この問題に明確な結論は出ませんでした。
しかし、この事件後、認知症を持つ人が起こした事故についての損害賠償をカバーする保険に、自治体が保険料を負担して加入するケースが増えてきました。

障害を持つ人では、2017年、格安航空会社が車いすを使う乗客の搭乗を拒否するという出来事がありました。
脊椎損傷で歩けない男性が搭乗しようとした際、車いすのまま搭乗できる設備がないために、階段式のタラップの写真を見せられ、「歩けない人は搭乗できない」と言われたのです。
この男性はそれなら自力で搭乗すると言い、車いすを降りてタップをはい上がり、腕の力で上って搭乗しました。

この出来事も、当時、マスコミで大きく報道されました。
この航空会社が、「歩けない人は搭乗できない」と男性に伝えたこと、介助をせずに自力で階段を上らせたことは、大きな批判を浴びました。
そして、この出来事をきっかけに、この航空会社は、車いすでも搭乗できるよう対応を変えました。同時に、他の航空会社の対応も、マスコミで一斉に報じられ、多くの人が知るところとなりました。

世の中の枠組み、制度を変えていくには、きっかけが必要です。今年7月の参議院選挙では、1つの政党が選挙という道具を上手につかって、枠組みに揺さぶりをかけました。揺さぶられた枠組みがこれからどう変わっていくのか、注目です。

戦略的に動いている山本太郎氏を見ていて、介護業界も、もっと発信力を上げられないだろうかとしみじみ思います。
受け身で制度変更に翻弄されるのではなく、こちらから打って出て制度を変えていく。そんな介護業界になることを期待したいと思います。

<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士 宮下公美子>

*1 国会バリアフリー、必要なところは(日本経済新聞 2019年8月6日)
*2 れいわ2議員の国会内での介護費用、参議院が負担へ(朝日新聞 2019年7月30日)

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