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要注目!介護の最新事情

つらい理由は「多重介護」だけ?介護家族が疲弊する3つの要因とは

2019年12月12日

誰も気づけなかった家族介護の重圧

2019年11月、また悲しい事件が起きてしまいました。
福井県敦賀市で、夫と夫の両親の3人を1人で介護していた71歳の女性が、介護していた3人を殺害してしまったのです(*)。

この女性は夫が経営していた会社の取締役も務めており、3人の要介護者を抱えた多重介護の上に、仕事もこなしていたと報じられています。

女性自身も71歳と、まもなく後期高齢者になろうかという年齢です。
果てしない介護の日々の中で、心身共に限界を迎え、犯行に及んでしまったのでしょうか。

この女性は夫婦仲がよく、朗らかで愚痴も言わない人物だったとのこと。記事によれば、近所の住民は、「こんなことになると思いもしなかった」と語っています。

このような重大な事件を起こすほど、女性が心身共に追い詰められていたことに、周囲の誰もが気づけなかった。その事実は、関係者に大きな衝撃を与えたことと思います。

 

在宅介護で家族が疲弊する「3つの要因」とは

こうした事件が起きる背景として、主に3つの要因が考えられます。

1つは、「個人情報保護」の問題です。
今回の事件のケースでは、周囲もこの家庭の多重介護状態を知っていました。それでも民生委員は、個人情報保護を考慮し、積極的な介入ができなかったと語っています。

今の時代、こうした地方都市の集落においても、本人が助けを求めなければ、第三者はなかなか介入しにくいということです。助けがなくても介入できる仕組みが必要です。

都市部では、こうしたリスク状態にある家庭の存在すら知られていないケースがしばしばあります。そうしたリスク家庭を見つけ出すために、個人情報の扱い方を行政は住民共に、もっと検討してもいいのではないかと思います。

2つめに、周囲が皆、多重介護状態を知っているからこその「傍観者効果」です。
傍観者効果とは、何か支援や援助が必要な状況が起きていても、自分以外にもその状況を知っている人がいると、「誰かが助けるだろう」あるいは「誰も助けないということはそれほど重大な事態ではないのだろう」という心理が働くということです。
状況を知っている人数が多ければ多いほど、それぞれの傍観者意識が強まり、介入が遅れることがあるのです。

今回の事件のケースでは、介護サービスの利用があったため、専門職に任せておけばいい、という意識が近隣の住民には働いていたのかもしれません。
「誰かが助ける」と思わずに、介入の必要を感じた自分の感覚を信じ、たとえ無駄足になったとしても、「自分が助ける」と考えることが大切です。

3つめに、介護をする本人が完全に「介護」に巻き込まれ、客観的に自分の状況を把握できなくなっていたと考えられることです。
真面目で心優しい人ほど、介護が必要な家族のことを「自分が何とかしなくては」と考えてしまいます。

介護の対象が1人であっても、その人のことだけを見つめていると、心理的に一体化してしまい、まるで洗濯機の中に一緒に放り込まれたようにぐるぐると逃げ場のない介護生活を続けてしまうことがあります。これは大変危険な状態です。

ましてや、この女性は3人の要介護者をかかえていました。
朝から晩まで介護に負われて、3人の介護のこと以外、何も考えられない状態になっていたのかもしれません。

思考が1点に集中し、極端に視野が狭くなると、自分の力でその状況から抜け出すのが難しくなります。「SOSを発する」という発想自体を失ってしまうこともあります。
そして、この状態から逃れるには、自分が死ぬか相手が死ぬかどちらかしかないという、破局的な思考にとらわれてしまうこともあるのです。

 

「多重介護」は常にリスクと隣り合わせ。小さなSOSも見逃さないで!

さらに4つめの要因を挙げるとすれば、周囲にいた専門職が、「村一番の嫁」と呼ばれたこの女性の、優しく、朗らかで、おそらく責任感が強く、もしかすると、弱みを人に見せたくない性格によって、この女性の危機的状況を見誤っていたという不幸が考えられます。

1人の介護者が3人の要介護者を抱えているだけで、すでに大きなリスク状態にあります。
こうした重大リスクを抱えている介護者のことを、専門職は、常に「この介護者はリスクを抱えている」という認識で見る必要があります。常に臨戦態勢でいる、ということです。

責任感が強く、弱みを見せたくないタイプの人は、自分からSOSを発しないことが十分考えられます。
それだけに、わずかに発した「介入が必要となるサイン」を見逃さない注意力が必要です。
今回の事件において、女性の関係者の中には、今振り返ると要介入のサインらしきものに思い当たる人もいるのではないでしょうか。しかし、厳しいようですが、こうした事件が起きてから気づいても遅いのです。

介入が空振りになることもあります。
介入を嫌がられることもあるでしょう。
それでも、このような悲しい事件が起きるよりよほどよいはずです。

どうぞ介護職の皆さんは、今担当されている利用者さんやご家族のことを思い浮かべ、リスクやSOSのサインがないかを改めて確認してみてほしいと思います。

<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士 宮下公美子>

*「村一番の嫁」に異変、多重介護に疲弊 福井3人死亡(朝日新聞 2019年11月22日)

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