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2020年03月05日

高齢者置き去りから学ぶ「判断力の大切さ」。緊急時に備えて介護職は何を考えるべき? | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

身元不明の高齢者が公園に置き去りに

2020年1月、愛知県で県職員が一度保護した身元不明の高齢者を、処遇に困って公園に置き去りにし、偽名で119番通報するという事件がありました(*)。

新聞記事によると、事件の経過は下記の通りです。

1.夕方5時前、身元不明の男性を警察が保護
2.警察が町に引き継ぎを依頼するが、町は「担当外」として県の福祉相談センターを紹介
3.警察が福祉相談センターに引き継ぎ
4.福祉相談センター職員2名が男性を町内の無料低額宿泊所に送り届ける
5.宿泊所の施設長が、男性が体調不良で治療が必要、受け入れ困難と判断し、119番通報
6.通報を受けた救急隊は搬送不要と判断
7.福祉相談センター職員2名が処遇に困り、夜11時頃、「搬送不要」と判断した消防と異なる管轄区域にある公園に男性を置き去りにして、偽名で119番通報
8.消防からの連絡で警察が保護。男性は署内で一夜を明かす
9.警察が無料低額宿泊所に送り届ける
10.男性は2日後に入院。脳梗塞の症状があると分かる

新聞報道によると、福祉相談センター職員の対応はこのあとも大いに問題があるのですが、これ以降の対応については割愛します。

問題となった愛知県の「海部福祉相談センター」の機能を見てみると、このセンターは、生活保護や管轄内に住所のない人などが病気になったときの対応などを担う部署と、児童・障害児者に関する相談を担う部署からなっています。

事件の経過4の「無料低額宿泊所への送り届け」は、生活保護者を保護する際によくとられる対応であり、警察からの引き継ぎを受けたのは生活保護担当だったようです。通常であれば、男性は宿泊所で保護され、翌日以降、身元を捜すなどの対応がとられたものと思われます。

しかし、体調不良の様子が見られたため、宿泊所ではこの男性を受け入れませんでした。
この宿泊所の施設長の判断は、後日、この男性に脳梗塞の症状が見られたことから、間違ってはいなかったと言えそうです。

その後の福祉相談センター職員の対応があまりに非常識であったことから責めを負うことになりましたが、救急搬送を拒否した消防の判断も再度検証されるべきかもしれません。


市民のためのセーフティネットであるはずの行政。対応は本当に正しかった?

記事にも書かれていますが、身元不明の病人は、保護した地域の行政が救護する義務を負っています。

このため、例えば東京都福祉保健局のサイトでは、住民に向けて、「身元不明の認知症の方を発見・保護した場合」には、
「必ず警察へ連絡してください。警察で身元が分からなかった方は、警察から地元の区市町村へ引き継がれ、区市町村の施設等で保護されます」
と書かれています。

多くの自治体では、身元不明の人が保護された場合など、一時的な受け入れに対応してくれる施設を複数確保していると思います。施設の介護職の中には、そうして緊急受け入れを経験したことがある方もいると思います。

そうした対応を、警察から引き継いだ2人の職員だけでなく、この2人から相談され、男性を管轄区外に連れ出すよう指示した上司も知らなかったということでしょうか。
3人の行政職員が、行政としての正しい対応について知らず、その情報を得る手段も持っていなかったとしたら、それは大きな問題ではないかと思います。

これは改めて考えてみると、なかなか怖いことです。
セーフティネットであるはずの行政対応に、このような「穴」があっては、住民は不安になります。


緊急時に大切なのは「解決すること」より「判断すること」

ただ、予想外の事態が起きたときの対応については、介護職も自分自身のことを、改めて振り返ってみるといいかもしれません。
介護職などの支援職は、自分にどれだけの対応力があるかによって、支援対象者が受け取ることができる利益を左右してしまうからです。

自分の担当外の困りごとや、キャパシティを超える問題への対応を求められた時、自分に適切に対応できるのか――

大切なのは、決して問題を自分一人で解決することではありません。
助けを求められる相手がいるか。
必要な情報を得る手段を持っているか。

そして、誰に助けを求めるか、得た情報のどれを役立てるかなどの判断力が大切です。

体調が悪そうな身元不明の高齢者を、1月の寒い夜、公園に置き去りにせよと指示するような上司に相談してはいけませんし、その指示を真に受けて実行してもいけません。そうした判断力は最低限必要です。

それでは緊急時、マニュアルを超えて対応する力は、どうすれば身につくでしょうか。
日頃からのネットワークづくりや、情報収集力のブラッシュアップ、日々の正しい根拠に基づいた判断の積み重ねによって、身についていくのではないでしょうか。

いざというときに慌てずにすむよう、常日頃から、そうした力を磨くことを心がけていたいものです。

<文:介護福祉ライター・社会福祉士・公認心理師・臨床心理士 宮下公美子>

*愛知県職員、高齢者置き去り 行政間押し付け合いの末(毎日新聞2020年2月7日)

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