初めて勤めた特養で、たくさんの利用者さんの死を受け止め、精神的につらくなってしまったUさん。看取りの研修やフォローもない職場環境に疲弊し、転職を決めたと言います。
▲Uさん(40代後半・女性)
【転職前:特別養護老人ホーム・介護職】
・勤続年数 2年(正職員)
・給料 月18万円(ボーナスあり)
・勤務 7:00~16:00(早番)、9:00~18:00(遅番)、夜勤月4回、月9日休
【転職後:介護老人保健施設・介護職、生活相談員】
・勤続年数 12年(正職員)
・給料 月29万円(ボーナスあり)
・勤務 6:30~15:30(早番)、夜勤月5回、月9日休
【転職歴】特養①→老健→(出産)→回復期リハビリテーション病棟→特養②
※今回は特養①→老健に転職した際のお話をうかがいました
目次
・ 専門学校を出て特養へ就職
・ 年間50人。看取りが精神的な負担に
・ 職員へのケアが圧倒的に足りない職場
・ 老健なら「生」に向かう職場だと思い、転職を決めた
・ 多職種と一緒にケアできる現場は働きやすい
・ 若手が前向きに育つ環境を作りたい
Q 介護職になろうと思ったきっかけは?
A 高校生のときに祖母の介護に悩み、「介護をちゃんと学びたい」と思った
私は両親が自営業で、同居していた祖父母に育てられました。
高校生になる頃には祖母の具合が悪くなって、自然と私が介護するように。夜中にトイレに連れて行ったり、食事の介助をしたりしていました。でも、介護のことは全然わからず自己流だったから、不安になることが多かったです。
特別養護老人ホーム(以下、特養)のボランティアにも行きましたが、やっぱりわからないことだらけ。「ちゃんと介護を学びたい」と思い、専門学校に行くことにしました。
Q 専門学校卒業後、最初の就職先を選んだ決め手は?
A 実習の延長線上で特養を選んだ
専門学校の実習では特養に行くことが多く、その流れで就職先を決めました。学校の先生に「特養ならしっかり先輩に教えてもらえるから」と勧められたことも理由の一つです。
Q 最初の特養を辞めようと思ったのはなぜ?
A 死に直面する場面が多く、精神的につらくなった
新卒で就職した特養の雰囲気は悪くなく、先輩たちも仕事をしっかり教えてくれて、同僚とも仲良くやっていました。
でも、入職するなり、どんどん利用者さんが亡くなっていく現実に衝撃を受けてしまったんです。その特養では、年間50人くらいの方が亡くなっていました。
当時自分はまだ若かったこともあり、毎日接していた利用者さんが次々に亡くなるのがつらかった。
夜勤中すやすや寝ていた方が次の巡回ではもう息をしていなかったり、お看取りの時期になってもご家族がなかなか会いに来てくださらない方もいたり……。そういうさまざまな「死」を見続けているうちに、心を病んでしまったのです。
介護の仕事は好きでしたが、辞める半年くらい前から過呼吸を起こすようになり、申し送りの最中に息が苦しくなることもありました。
Q 苦しい思いを職場ではケアしてくれなかった?
A 上司は人手不足だからと見て見ぬふりをしていた
法人全体の取り組みで、職員のストレスチェックは行われていました。でもチェックしているだけで、結果に対する改善策はなし。
看取りの機会が多い職場なのに、そこに対する研修やフォローもありませんでした。
それに、とにかく人手が足りなくて、職員をケアする余裕は全くなかったんでしょうね。体調を崩しても休みがもらえるような状況ではなく、辞めたいとも言い出せず、思い切って言っても引き止められて……。上司に面談を申し込んでもはぐらかされ、「また今度」と流されてしまうこともありました。
私がつらくなった要因は看取りの多さだったので、同じ法人のデイサービスへの異動を申し出たのですが、それもダメでした。
そんな環境で働き続けるうちに体調はますますひどくなり、「もう限界です」と訴えたら、ようやく退職できることに。
でも、「辞めたい」と伝えてから3カ月後にしか退職できないと言われ、しかたなく3カ月勤務し、退職できたときには心の底からホッとしました。
Q 老健に転職した理由は?
A 老健なら「元気になって自宅に帰る」施設だからがんばれると考えた
特養を退職したあと、1カ月間は自宅で過ごして心と体を休めました。それから「今後どうしようかな」と考えていたときに、介護老人保健施設(以下、老健)で働いている専門学校の先輩に会って、話を聞くことができたのです。
基本的に、老健にいる利用者さんは「自宅に帰ること」を目的にリハビリなどをがんばっている。死に向かうというより、元気に生きていくための施設であり、死に直結するようなところではない。
そういった話を聞く中で、「老健、いいかもしれないな」と思うようになりました。
さっそくハローワークに行き、老健の介護職を志望したところ、家の近くの施設ですぐに採用されました。
そこは医療法人が運営する老健で、何かあったらすぐに母体の総合病院に搬送できる体制が整っています。前職の特養と違い、看護師さんが夜間に常駐している安心感もあり、入職を決めました。
Q 転職後のお仕事はどうでしたか?
A 多職種がチームで利用者さんを元気にしていく、やりがいのある職場だった
転職した老健は多職種連携がしっかりしていて、とても働きやすい環境でした。
以前の特養だと、看護師さんは介護職とは別の医務室にいて処置に回ってくるだけでしたが、新しい職場では一緒にケアに入るので、医療的なこともかなり学ばせてもらえました。
経管栄養の講習も法人が受講費を出して受けさせてくれるなど、介護職のスキルアップをあたたかく支援してくれる環境で嬉しかったです。
どの職場でも忙しいことに変わりはないですが、多職種とチームを組んで利用者さんの健康を守るという前向きな風土があったので、「ここの職場ならやれる」という実感がありました。毎日のケアカンファレンスも、みんなで意見を出し合える環境でした。
その後出産を機に老健は退職しましたが、12年間前向きにがんばれる職場に恵まれて、とても幸せでした。
Q 出産・育児を経て、現在のお仕事は?
A 今は新たな特養で、若手職員を支援しながら働いている
今は子どもが大きくなり、夫も協力的なので、また新たな特養で勤務しています。
主にショートステイを担当しているので、死に直面することは少ない環境です。もちろん特養ですから看取りもありますが、新人の頃よりも人の死を受け止められるようになりました。
また、新人やベテランを問わず看取りの研修を受けられる職場なので、ケアの方法や「死」への向き合い方を一から学ぶことができます。私も新人時代にこうした学びの機会があり、職員同士フォローする体制があれば、もっと前向きに働けたかもしれません。
今はベテランとして若手を守る立場でもあるので、新人職員の心理状態に配慮して、声をかけながらケアするようにしています。
12年務めた老健では、新人をマンツーマンで1年間フォローし、チェックシートを使って指導状況を確認するシステムがありました。今の職場にはそういう制度はなかったので、こちらも導入して若手を応援しています。
これまでの経験をもとに、自分も介護の仕事を楽しみつつ、若い仲間が前向きに成長できる環境を作りたいですね。
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社会福祉士、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級。
幅広くライターとして活動中、親の介護を機に2012年に社会福祉士国家資格を取得。以後、法定成年後見人として支援が必要な方の財産管理や身上監護も行う。
現在は介護、医療、教育、子育て、食などのテーマを中心にWEB・雑誌・書籍などの記事執筆を多数担当。
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