転職活動の面接でよく聞かれる質問に
「これまでの仕事での失敗談」があります。
準備をしていないと回答に困ってしまう、この質問。
面接官はどのような意図でこの質問をするのか、そしてどのような「失敗談」を語るのが好印象につながるのでしょうか。
今回は採用面接の場で
「失敗談」を聞かれたときの答え方や回答例について解説します。
「失敗談」から聞きたいことはこの3つ!
なぜ面接官は応募者から失敗の体験を聞き出そうとするのでしょうか。
誰しもが好んで失敗をするわけではなく、失敗をした経験はあまり表に出したくない心理も働きます。それにもかかわらず面接官が失敗談を質問するのには理由があります。
面接官が失敗談について質問する理由を3つ紹介します。
◆失敗の傾向と本人の考え方
面接官は応募者の失敗談を知ることで、応募者のキャラクターを知ろうとしています。
失敗に至る経緯を知ることで、
仕事への取り組み方にどんな傾向があるのか、
会社の特徴に合った人材なのかを判断する材料にできます。
また、何を失敗ととらえるかも人によって異なるため、エピソードを知ることで応募者の
姿勢や考え方などを把握できます。
◆失敗から学ぶ姿勢
面接官は失敗のエピソードから、
応募者が何を学んだのかを知ろうとしています。
失敗に至る経緯の中から失敗の原因がどこにあったのかを分析し、何を学習したのかを知ることができます。失敗を偶然の産物として終わりにするのではなく、その背景や要因を明確にとらえ、同じ失敗を繰り返さないようにできるかが問われています。
面接官は
失敗から学ぶ向上心や成長意欲があるかどうかもチェックしています。
◆課題解決力
面接官は失敗エピソードの経験を通し、
その課題をどう解決していったかを聞き出そうとしています。
どのようなステップを踏んで解決したのか、どのようにチームに働きかけたのか、などの行動に応募者の特性が現れます。
面接官は失敗談を質問することで、課題を乗り越えていく力があるかどうかを知ろうとしています。
面接での「失敗談」の正しい答え方
企業が応募者の失敗談を聞き出そうとする理由を踏まえ、どのような答え方がアピールにつながるかを解説します。
失敗談について質問される場合、失敗の内容だけを聞かれているのではなく、
その先の反省や課題解決までが1つのセットになっていると考えましょう。
失敗の内容があり、失敗の原因や背景をどのようにとらえたか、失敗から何を学んだか、そして最終的にどのように解決につなげていったかという構成で回答することが求められています。
失敗談に限らず、面接での回答のコツは、話す内容を順序立てて構成し、情報を整理して伝えることです。
質問された内容に対する結論から先に話すことで、話の内容が伝わりやすくなります。
また、
抑揚をつけて話すことで、話の内容にメリハリが生まれ、話力の高さ・コミュニケーション能力の高さをアピールすることができます。
失敗談というネガティブな質問内容ですが、必要以上に深刻に話をする必要はありません。
失敗を必要以上にネガティブにとらえてしまうと、話す言葉は弱くなり、弱々しい姿勢に見えます。また、目線も下がり、表情も暗くなってしまうため、あまり印象が良く思われないでしょう。
失敗を失敗で終わらせることなく、
『成長につなげることができた』というポジティブな結論に結び付けることを意識しましょう。成長や課題解決に至る過程を質問されていると考え、胸を張って面接官の目を見て、しっかりアピールにつなげましょう。
失敗談にはこんなエピソードを選ぼう
失敗談を話すときに、どんなエピソードをピックアップするべきでしょうか。
ここでは、介護士が転職の面接で回答する失敗談の選び方のポイントを5つ紹介します。
◆学ぶべきことの多かった失敗例
失敗例を話すときに大事なのは、
失敗から何を学んだかをアピールすることです。
介護という仕事には絶対はなく、利用者さんにも個人差が大きいため、ミスは多かれ少なかれ誰しも経験します。大事なのは、失敗やミスを通して何を学んだか、それを今後どう生かしていきたいかを伝えることです。
ミスから学んだ経験をもとに、同じ失敗を繰り返さないことをアピールしましょう。
◆成長につながった失敗例
失敗を糧にどう成長したかを面接官はチェックしています。
失敗から人間的に成長できるか、失敗を克服できる精神的な強さを持っているか、失敗したことを受け入れて次のステップに進む力強さを持っているか。
こういった部分をアピールできる失敗エピソードを選び、伝えることで入社後のさらなる成長への期待感も高まります。
◆その後の努力が見える失敗例
失敗をした後の努力が見える失敗例を選択することで好印象につながります。
失敗を経て、それを繰り返さないためにどう努力してきたのかの過程や工夫を伝えることが重要です。
知識や技術が不足していたことから専門資格を取得したエピソード、業務に集中できるよう生活習慣から改善したエピソードなど、その後の努力が見えるエピソードを選びましょう。
◆チームワークで克服した失敗例
介護の仕事はチームワークが重要です。チームの大切さに気がつき、チームで克服した失敗談は、
協調性の高さをアピールする絶好の機会になります。
業務上のミスを同僚のフォローを受けることで乗り越えることができた、チームで協力・業務分担しながら課題解決につなげた、といったエピソードは好感が持てます。
職場内のチームワークを重視している企業への転職であればよりアピール効果も期待できます。
◆避けるべき失敗例は?
失敗の内容の大小やインパクト・話題性でエピソードを選ぶことは避けましょう。
大事なのは
失敗の内容よりも、失敗からの成長をポジティブにアピールすることです。
利用者さんの人命にかかわるような取り返しのつかない失敗例や、何度も同じミスを繰り返しているような失敗例は信頼を失いかねないので、避けることが無難です。
「仕事の失敗談」パターン別例文
実際に転職面接で「仕事の失敗談」を聞かれたときに具体的にどう答えると好印象になるのでしょうか。
ここでは、パターン別の回答例を紹介します。
また、介護の現場で起こりやすい失敗をもとに、回答例、回答のポイント、NG例、そしてNG例がダメな理由についても解説します。
例文1:利用者さんの転倒を防げなかった
【回答例】
デイサービスで、利用者さんさんの転倒を防げなかったことが自分にとっての失敗です。
ご家族からの連絡で、食事量が減っていると聞いていましたが、日常的にADLが自立している利用者さんさんだったため、あまり気に留めていませんでした。デイサービスに到着した時には脱水状態になっており、転倒という結果を招いてしまいました。
幸い大事には至りませんでしたが、どんな利用者さんさんにも転倒のリスクがあること、表情や健康状態に注意する必要性を学びました。職場内でもこの教訓を生かし、ご家族からの連絡事項を共有することや、職員間で声かけをしながら見守りをすることを徹底しました。
失敗を通して、介護という仕事の難しさを学ぶ機会となりました。
【回答例のポイント】
転倒は介護現場ではよく起こる事故の1つです。
転倒を偶然の事故ととらえるのではなく、
その背景などを分析し、そこから何を学んだかを伝えることができています。加えて、同じ失敗が起きないよう、課題解決に努めたことも表現できています。
自らの失敗を反省しつつ、分析力や向上心の高さもエピソードの中でアピールできています。
【NG例】
デイサービスで利用者さんが転倒してしまい、骨折してしまったことです。
ADLもしっかりしている方だったので、あまり気に留めていなかったのですが、たまたま目を離した隙に転倒してしまいました。
救急搬送したのですが、大腿骨頸部を骨折しており、その後は自宅に帰ることなく施設入所してしまいました。
ほんの少しの油断が事故を招くのだと反省しました。
【NG例がダメな理由】
回答例と同じ「転倒」という事例です。
NG例では結果の部分を詳細に伝えていますが、そこに至る背景の分析や課題解決に向けた動きも見えません。油断していたことを認めていますが、偶発的な事故という認識を持っているため、改善の意欲が少ないように感じられてしまうでしょう。
また、結果として入院から施設入所という深刻な結果になっていますが、もしこれが事実だったとしても、そこは伏せて伝えることをおすすめします。
例文2:コミュニケーションの取り方での失敗
【回答例】
訪問介護事業所でホームヘルパーとして勤務していたとき、利用者さんとのコミュニケーションの取り方で失敗をしたことについて話します。
男性の利用者さんでしたが、もともと口数が少なく、コミュニケーションに関して消極的な方でした。声が聞こえにくいのかと思い、大きな声で話しかけていましたが関係性は改善せず、そのうち問いかけにもまったく応えなくなりました。
ご家族に確認したところ、耳はよく聞こえており、大きな声で話しかけられることが嫌だったと知りました。
先入観で高齢者は耳が遠いと思い込み、コミュニケーションの取り方を間違えていたことに気が付きました。
この失敗を通して、先入観を持たず、利用者さんに確認しながら声のかけ方などを工夫するようになりました。
【回答例のポイント】
介護士にとってはコミュニケーションの取り方も重要な技術の1つです。
自らの先入観からコミュニケーションの取り方で失敗していたことを反省しつつ、失敗をもとに工夫をするようになったという
改善へのプロセスが見られます。
失敗から学ぶ意識の高さをアピールすることができ、好印象につながります。
【NG例】
関係性を作りにくい利用者さんとのコミュニケーションで失敗しました。
昔から頑固で誰とも話をしたがらない男性利用者さんのお宅に訪問をしていました。声が聞こえないのかと思い、大きな声で話をしていたのですが、ある日事務所に電話が入り、ご家族からクレームを受けました。「ヘルパーがうるさい、担当を交替してほしい」と本人が言っているという話でした。
管理者が謝罪に行って、その後も訪問を続けることになりました。
その後は必要以上には声をかけないように注意しながら仕事をしました。
【NG例がダメな理由】
同じ例ですが、失敗の内容部分が大きく、反省の部分やその後の改善の部分が伝わりません。
失敗から何を学んだかを伝えることができず、向上心のアピールに失敗しています。
また、自分の責任というよりも、利用者さん側に責任転嫁するようにも聞こえてしまうのも印象が良くありません。自分自身の失敗を真摯に受け止める姿勢も必要です。
例文3:担当者会議の時間を忘れていた失敗
【回答例】
訪問介護事業所のサービス提供責任者として勤務していたとき、サービス担当者会議の予定を忘れてしまったことがあります。
サービス担当者会議の予定だったのですが失念しており、ケアマネジャーからの連絡を受けて慌てて出席したことがあります。
自分のスケジュールに担当者会議の予定を書き忘れていたことが原因です。サービス提供責任者としての仕事にも慣れ、気の緩みが出ていたと反省しています。
それ以降は電話のメモは必ず取り、スケジュールを毎朝確認するようになりました。事業所内のミーティングではスタッフ同士で予定のダブルチェックをするきっかけにもなりました。
【回答例のポイント】
大事な予定を忘れてしまったという失敗エピソードです。
スケジュールへの記入漏れという原因を客観的に分析するとともに、気の緩みがあったと、自分の仕事に向き合う姿勢にも素直に向き合っています。
それ以降は確認作業をしながら慎重な仕事をすることになったと、自身の成長をアピールすることにも成功しています。
【NG例】
訪問介護のサービス提供責任者として、担当者会議の予定を忘れてしまったことがあります。
職員が不足して業務が回らず、訪問の忙しさから、ケアマネジャーと担当者会議の約束をしていたことを忘れておりました。当日ケアマネジャーから連絡を受けて慌てて出席しました。
ご本人やご家族、ケアマネジャーにも謝罪し、40分遅れで担当者会議を行いました。普段はFAXでサービス担当者会議の開催通知をもらっていたのですが、それがなかったのでスケジュールに入れるのを忘れていました。
反省し、それ以降は注意するようになりました。
【NG例がダメな理由】
同じ例ですが、言葉の端々から自分の失敗として向き合えていない印象を与えてしまいます。
職員が不足していて忙しかった、ケアマネジャーからの担当者会議の開催通知が来ていなかった、という部分は言い訳に感じられます。
また、注意するようになったと言っていますが、内容が具体的ではなく、失敗を次に生かせていない印象になってしまいます。
例文4:スタッフ間の連絡が不十分だったことが原因の失敗
【回答例】
特別養護老人ホームで勤務していたとき、誤薬につながりそうな失敗がありました。
夕食のとき、服薬の介助をしようとしたのですが、別の方の薬を持って行ってしまいました。同じ名字の方がショートステイに来られており、薬の違いに気が付きませんでした。
申し送りの内容をしっかり把握できないまま業務についてしまい、確認が不十分だったことが原因です。幸い、気が付いた職員がいて誤薬事故にはつながりませんでした。
それ以降は申し送りの後に職員間で注意事項を確認し、薬もダブルチェックを徹底しました。私自身も反省するとともに、これを機に薬の重大性を意識し、ご利用者さんの薬とその効能をすべて把握するようになりました。
【回答例のポイント】
誤薬は施設系サービスで起こりやすい事故です。
そこには「申し送りの伝達・把握が不十分」、「ダブルチェックをしていなかった」などの
コミュニケーションのミスが存在します。誤薬を防ぐために、職員間のコミュニケーションを増やして業務改善につなげています。
また、自分自身の知識不足を補うためにも勉強しており、向学心の高さをアピールすることができています。
【NG例】
特別養護老人ホームで働いているとき、誤薬をしてしまいました。
同じ名字のご利用者さんがおり、間違えて名字が同じ別の方の薬を服薬介助してしまいました。飲んでしまったのは便秘の薬で、ご家族に報告し、事故報告書も提出しました。
その後は経過観察をし、ご利用者さんには健康上の影響はありませんでした。自分の注意不足で重大な誤薬事故を起こしてしまい、たくさんの方に迷惑をおかけし、反省しています。
それ以降は間違えないよう気をつけています。
【NG例がダメな理由】
事故について多くの方に迷惑をかけたと反省をしていますが、再発防止策にはつながっていません。
誤薬事故は個人の努力だけで防げるものではなく、ダブルチェックなどの職員間のコミュニケーションという視点が不可欠です。事故に対してしっかり対応した印象は感じられますが、問題の解決力としては不完全です。
例文5:ご家族への連絡ノート記入ミス
【回答例】
デイサービスで勤務していたとき、ご家族への連絡ミスがありました。
入浴介助をする予定だったご利用者さんですが、当日の血圧が高く、看護師の判断で入浴を見送りました。その件について、ご家族への連絡ノートに記入せず、入浴実施欄に〇をつけてお渡ししてしまいました。ご家族から連絡をいただき、連絡ミスを謝罪いたしました。
連絡ノートはご家族との重要なコミュニケーションツールであるという意識が欠けていました。ノート記載時にはサービス内容のチェック表を確認しながら、ご利用時の様子をお伝えするようになりました。
結果、ご家族の満足度調査の結果も改善し、信頼していただけるサービスに近づいたのではないかと感じています。
【回答例のポイント】
デイサービスでは家族との関係作りが非常に重要です。何気なく書いていた連絡ノートのミスから、家族とのコミュニケーションの大切さに気が付いたエピソードです。
自身の成長につながる失敗であったことを伝えるとともに、コミュニケーションを大切にする姿勢をアピールすることに成功しています。
失敗から学び、連絡ノートの書き方を改善、顧客満足度向上につなげており、課題解決力の高さも示しています。
【NG例】
デイサービスで働いていたときの失敗です。
入浴予定のご利用者さんでしたが、血圧が高く、看護師からの指示で入浴ができませんでした。連絡ノートに入浴実施の欄があり、血圧が高く入浴できなかったことを伝えるべきところを、誤って〇をつけてしまいました。
先月にも同じことが2回あったことから、ご家族からのクレームがあり、管理者とともに謝罪いたしました。
新規のご利用者さん対応や、嘔吐されたご利用者さんもいて、フロアが慌ただしく、ノートを書くときにも注意散漫になっていました。
【NG例がダメな理由】
自身の失敗を注意散漫になっていたと認めています。
失敗の原因を自ら反省していますが、改善策にたどり着くことができませんでした。
また、同じミスを何度も繰り返していることについては、あまり良い印象を与えませんので伏せておく方がいいでしょう。
まとめ
面接で失敗談を聞かれたときの回答について5つの例文を含めて解説しました。
仕事には、ミス・失敗はつきものです。
介護業界で有名なハインリッヒの法則によると、1件の重大事故の背後には29件の軽微なミスがあり、その背後には300件の小さな異常(ヒヤリハット)が存在すると言われています。
ヒヤリハットや小さな事故から学び、改善することが重大事故の予防につながります。
失敗談を聞かれたときは、失敗経験をさらけ出すことをネガティブにとらえるのではなく、
事故から学び、改善策につなげることのできる力をアピールするためのチャンスだととらえましょう。
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