介護食品は低栄養や摂食・嚥下機能が低下した人の適切な食事提供を助ける。本号より4回にわたり(1)やわらか食(2)とろみ調整剤(3)濃厚流動食(経口摂取)(4)水分補給――の4つのカテゴリに分け、売れ筋動向、注目商品を紹介する。データ提供は介護用品販売卸のウェルファン、ケアマックスコーポレーション、豊通オールライフの3社。今号ではやわらか食を紹介する。
在宅10%成長ペースト食が下支え
富士経済の調査によると、2019年の介護食品の市場規模は1691億円(見込)で前年比3・7%の伸び。このうち、やわらか食は196億円(施設149億円/在宅47億円)。特に在宅向け市場は前年比11・9%増と、市場全体に比べて伸びが大きい。
上位ランクにUDF商品
やわらか食は摂食・嚥下機能に応じて、適切な食形態を選べるのが特徴。在宅向けでは1品食べきりのレトルトパウチタイプが主流で、常温・長期保存が可能なことから非常食としての価値も高まっている。ドラッグストアやスーパーマーケットといった小売店での取扱いも多く、日用品や食品と一緒に購入できる買い物動線もメリットだ。
食形態の分類はユニバーサルデザインフード(UDF)や日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類、またこれらの整合性をとった農林水産省のスマイルケア食など。今回のランキングではUDF登録商品が上位に名を連ねた。
「かまなくてよい」が1位
UDFは普通食に近い順から「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4分類。売れ筋は3社とも「かまなくてよい」商品が1位、「舌でつぶせる」「かまなくてよい」のいずれかが3位以内にランクインしており、より重度者へのニーズが高いことが分かる。
ホリカフーズの「おいしくミキサー」は、自宅では調整が難しいミキサー食、ペースト食に特化。主食・主菜だけでなくサラダやフルーツ等のサイドメニューも揃え、何か一品加えたい場合などにも使いやすい。
キユーピーの「やさしい献立」シリーズは全58品(20年7月時点)と豊富。飽きさせない食事メニューを提案できる。今年5月には同シリーズを活用した1週間のモデルレシピを同社HPに公開している。UDF4区分を合算した販売数では3社ともキユーピーがトップシェア。特に豊通オールライフは48・7%と5割近くを占める。
また、徐々にシェアを伸ばしているのが大和製罐の「エバースマイル」シリーズ。14年に市場参入し、「舌でつぶせるやわらかさ」に特化した22商品をリリースしている。食欲を引き立てる普通食に近い見た目と風味、そして容器メーカーの技術を生かした保存性の高さを強みとしている。
<シルバー産業新聞 8月10日号>