厚生労働省は6月28日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭国立社会保障・人口問題研究所所長)を開催した。
サービスごとの議論がスタートし、今回は(1)小規模多機能型居宅介護(2)看護小規模多機能型居宅介護(3)認知症対応型共同生活介護(4)定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護――について、事務局が論点を示し、意見が出された(表)。
小多機の普及策として利用開始後も「利用者がこれまでの居宅ケアマネを選択できるようにすべき」との声が複数あがった。認知症グループホームでは前回に引き続き、夜勤体制の緩和ですでに攻防が始まっている。定期巡回と夜間訪問の両サービスの統合については目立った反対意見はみられなかった。
ケアマネジャーから小規模多機能型居宅介護を紹介したものの、「利用者が現在のケアマネを変えたくなかった」という理由で利用に至らないケースもある。
全国市長会の山岸明子参考人は、「担当の居宅ケアマネとの連携などにより、利用者とケアマネとの関係性を維持できるような運用を可能とする仕組みとしてもらいたい」と要望した。
日本介護支援専門員協会副会長の濵田和則委員や日本慢性期医療協会常任理事の田中志子委員は「本人の希望で、小多機利用以前の担当ケアマネを選べるようにしてはどうか」と利用者が選択できる形を提案した。
兼務制限の緩和なども今後の検討課題となりそうだ。
小多機の管理者は、他サービスの管理者と比べて兼務可能な職務が限定されていて、同一敷地内の通所介護の管理者を兼務できず、緩和の検討を求める意見があった。
看護小規模多機能型居宅介護も小多機同様、「期待されるサービスを安定的に提供するための方策」が論点とされた。
委員からは、特定看護師や専門看護師などの配置への評価を求める声があがった。
日本看護協会常任理事の田母神裕美委員は「認定看護師、専門看護師、特定行為研修修了者といった専門性の高い看護師によるサービス提供の評価が必要」と強調した。田中志子委員も同様の意見を述べた。
さらに田母神委員は、「当協会が昨年度に実施した調査では、ターミナル期の利用者の場合、点滴などの医療処置や泊まり、訪問の回数が多く、ケアの密度が高かった。緊急時の宿泊は包括報酬の中で対応しており、事業所では日中夜間ともに看護職員を多く配置して対応している現状がある」と報告し、緊急時の宿泊についての評価も求めた。
認知症対応型共同生活介護の論点について、厚労省は「医療ニーズ対応のさらなる強化や、介護人材の有効活用を図る観点などから、どのような方策が考えられるか」と論点を示し、意見を募った。
GH(グループホーム)での医療ニーズへの対応について、厚労省は医療連携体制加算の(Ⅱ)(Ⅲ)の算定実績が少ない点を説明。
その理由は、「看護職員を常勤換算で1人以上確保できない」が75.2%で最も多い。
また、「医療ニーズを持った方の入居を断ることがある」と答えたGHは7割超、「退去を求めることがある」も半数超に上ることなどが説明された。
全国老人福祉施設協議会参与の古谷忠之委員は「事業所内の医療系の職員もまだ少なく、通院の付き添い等にも人手が必要。訪問診療などによる医療体制の強化が必要」と外部の医療機関との連携で対応すべきと強調した。
「介護人材の有効活用を図る観点」に係る部分では、厚労省は、ユニット型事業所・施設の夜勤体制について資料を提示し、説明を行った。
施設サービスが2ユニットごとに1人以上の配置であるのに対し、GHは1ユニットごとに1人以上と厳格な基準になっている。
前回改定では、3ユニットのGHで、各ユニットが同一階で隣接している場合などについて、「3ユニットで2人以上」に緩和できるように見直した。
ただ、昨年8月時点で緩和している事業所は全国で9事業所に止まっている。
全国健康保険協会理事の吉森俊和委員は、「ICT活用などにより、特段の課題がなければ、GHの夜勤体制も施設サービスと同じく2ユニットごとに1人以上配置の緩和を検討すべきではないか」と主張した。
一方、日本労働組合総連合局長の小林司委員は、「夜勤は休憩時間すらきちんと取れていないという声もある。安全面やケアの質の観点からも、夜勤の配置基準は安易に緩和してはならない」と反対の姿勢をみせた。
定期巡回・随時対応型居宅介護看護と夜間対応型訪問介護の両サービスは、サービスの統合・整理が論点の一つ。
昨年12月の介護保険部会の意見書でも、両サービスを挙げ、「機能が類似・重複しているサービスは、将来的な統合・整理に向けて検討する必要がある」と明記された。
この日の分科会でも、「利用者・事業者への影響ができる限り小さくなるよう丁寧に進めるべき」などの意見が出たものの目立った反対意見はなかった。
定期巡回サービスでは、前回の改定で「計画作成責任者が管理者との兼務が可能であること」「オペレーター、随時訪問サービスを行う訪問介護員は、夜間・早朝において、必ずしも事業所内にいる必要はないこと」を明確化し、緩和を行っている。
今回も、普及に向けた効率的なサービス提供が論点とされた。
全国市長会の山岸参考人は「地域によっては、訪問に長い移動時間を要し、効率的なサービス提供が難しいという意見がある。
現状の報酬単価では採算が取れず、事業者に参入してもらえない地域もあることから、実情も十分に踏まえた上で報酬単価の見直しを行っていただきたい」と訴えた。
<シルバー産業新聞 2023年7月10日号>
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