2013年05月15日
横からの力にも対応する新しいカラダのつながり感、「膝前じゃないしゃがみ込み」効果にトライしてみましょう!
＜協力 身体技法研究家 甲野陽紀氏／文・構成 佐藤大成＞
こんにちは、身体技法研究家の甲野陽紀です。持ち運びが難しいもの、というと、みなさんはどんなものを思い浮かべますか? タンスや机のような重いものはもちろん簡単にはいきませんが、引っ越しや部屋の模様替えのときなどを除くと、ふだんはあまり持ち運ぶ機会はありませんね。介護の場面で考えてみると、案外、機会が多いのは、水やお茶のような液体ではないでしょうか。重さはさほどではなくても、揺らすとこぼれるし、落としちゃいけないし……と結構気をつかいます。
そこで。お盆とお茶碗を用意して、ちょっと意地悪なテストをしてみました。お茶碗をのせたお盆を両手で持っているTaneエディター、これからこれを運んでいきましょうかと考えているところなのですが、そこに横から力を軽くかけてみると------意外なほど簡単にカラダがグラリとして(写真a~c)……そうなんです、落としちゃいけないものを持っているときは、どうしても目線が手元や前方などに集中しがちで、横への気配りが消え、カラダも横からの力に対して対応する力が弱くなってしまうのです。わたしも同じ条件で試してみたのですが、見事に!同じ結果に(写真d~f)。
どうしても持っているものに注視が向きやすいという状況があるので、これまで試してきた「手のひらの柔らかさ」や「足踏み」に加えて、横の力にも対応できるもうひとつワザが何か欲しいなあという気がしてきました。
そこで。これはどうかなあと試してみたのがこちら(写真g~i)。立ち姿勢からしゃがみ込んでいくというシンプルな動作なのですが、ふだんみなさんがやり慣れているであろう「しゃがみ込み」とは異なる点がひとつあります。それは------しゃがみ込むときに、膝をできるだけ前に出さないようにこころ掛けること。
「膝を前に出さずにしゃがんだらシリモチをついてしまうんじゃないですか?」という疑問を持った方は、まさにその通り! 膝を前に出しながらしゃがみ込むやり方で膝を前にださないように座ると、必ず、そうなるはずです。でも、膝をなんとか前に出さないようにすることのみをこころ掛けながら、手を前に出したり、いろいろ工夫をしていると、シリモチをつかずにしゃがみ込む感覚が少しずつ生まれてきます。そして、ちょっとカラダの感覚も変わってきたような……となったところで、再度、お盆の持ち運びに挑戦したところ、こんな感じになりました(写真j)。
◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同 行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点か らの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生ま れていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体 講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に 講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html
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