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2017年03月10日

『介護殺人 追いつめられた家族の告白』 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

book■書名:介護殺人 追いつめられた家族の告白
■著者:毎日新聞大阪社会部取材班
■発行:新潮社
■発行年月:2016年11月20日

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「介護殺人」はなぜ起きたのか? 加害者本人から語られる真実とは

「もう一度、母の子として生まれたい」
これは、京都で起きた“認知症母殺害事件”の裁判で、被告が語った言葉である。「地裁が泣いた事件」として多く取り上げられたため、覚えている人も多いのではないだろうか。

このように、介護に疲弊した介護者が、夫や妻、親を殺してしまうという事件は後を絶たない。
警察庁によると、2007年~2014年の8年の間、介護・看病疲れによる殺人事件(未遂含む)は、全国で371件発生したという。計算すると8日に1日のペースで起きているということになる。

本書は、介護に疲れ、家族を殺してしまった加害者の告白をまとめたもの。言い訳をすることなく、後悔や自責の念に苦しみながらも、切々と真実を語る加害者の言葉は、どれも胸を突かれるものばかりだ。
愛する家族なのに、なぜ殺めてしまったのか。加害者の告白からは、家族の人間関係や介護をする側、される側の性格、介護システム、社会の支援などさまざまな問題が浮き彫りになってくる。

本書で紹介している事件は下記のようなケースとなっている(一部抜粋)。
・認知症の妻を長年介護した高齢の夫
・寝たきりとなった母を介護した独身女性
・介護離職して母の介護に専念した息子

どのケースも共通していることは、「献身的な介護」だ。
一晩中、寝ない妻のために睡眠不足の目をこすりながらドライブに連れて行く夫、友人や恋人との交流を断ってまで母の介護に専念する娘、施設に入るのを嫌がる母のためにつきっきりで介護する息子。
まじめで丁寧なケアがされていたことを裏付けるように、長年の寝たきり生活にも関わらず、褥瘡(じょくそう)が全くできていなかったケースもあったという。

また、加害者の多くが、介護が必要な家族に手をかけたその時のことを「ついに限界がきた」「もうだめだと思った」などと表現している。出口のない介護というトンネルを歩いている中、ある日プツンと糸が切れたような感じだ。
そして取材により、多くのケースで、加害者が不眠であることも明らかになったという。昼も夜も介護を続け、慢性的な睡眠不足に陥ることが、介護殺人の引き金になっていると考えられる。

「なぜ、こんな悲惨な状態になるまで手を打たなかったのか」
「周囲から支援はなかったのか」
そう考える人もいるかもしれない。しかし、加害者の中には、行政や施設に支援を求めた人もいる。また、深刻な状況を受け止め、必死でサポートしようとする医師や民生委員、何とか入所できないかと施設を探すケアマネジャーもいた。
声を上げても、周囲がサポートしようとしていても、支援の輪からこぼれおちていく人がいるという厳しい現状がうかがえる。

2016年の総務省発表によると、65歳以上の人口は全人口の4分の1を超え、過去最高の26.7%になったという。厚生労働省では、2025年には、65歳以上の5人に1人となる約700万人が認知症になると見込んでいる。
政府は施設から在宅へ介護をシフトしようとしているが、「介護殺人」のような悲惨な状況に陥らないためにどうすればいいのか、考えさせられる内容となっている。

<何よりも急がれるのは、在宅介護を推進する国や自治体が介護者を支えるための施策や取り組みを強化することだ。介護疲れが原因とされる殺人や心中をなくすための具体策についても、知恵を絞ってほしい。被害者の無念の死を無駄にしてはならない>

本書では、加害者の告白だけでなく、介護をしている方へのアンケート調査なども盛り込まれている。
「励ましの言葉はイライラする」「被介護者への心のケアがなっていない」などの言葉は、介護職なら、身近にいる利用者の家族と接するときに役立つのではないだろうか。
また、全国のケアマネジャーによるアンケート結果も収録されており、介護疲れによる殺人を多角的にとらえられる内容であると感じた。
介護に携わる人はもちろん、多くの人が手に取ってほしい本だ。



●こちらの記事も参考に
→介護疲れによる殺人や自殺…介護職は何ができるか? 参考にしたい一つの話

→介護家族による無理心中に4年の実刑判決。介護職が今後できる支援とは?



著者プロフィール

毎日新聞「介護家族」取材班

前田幹夫(まえだ・みきお)さん
1994年入社。大阪本社社会部、地方部副部長、社会部副部長を経て2016年4月から岡山支局長。編著書に『現場の残像-記者がつづった「哀歓記」』がある。

渋江千春(しぶえ・ちはる)さん
2003年入社。阪神支局を経て大阪本社社会部。大阪府警、裁判所、遊軍などを担当。2016年4月から東京本社外信部。

向畑泰司(むこはた・たいじ)さん
2006年入社。徳島支局を経て大阪本社社会部。大阪府警、国税局、遊軍など。現在は裁判所を担当。

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