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介護現場で働く力がアップ

『ヘルプマン!! 取材記 vol.1』

2019年7月12日

■書名:ヘルプマン!! 取材記 vol.1
■著者:くさか 里樹
■出版社:朝日新聞出版
■発行年月:2018年7月

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新聞記者が見た介護の世界とは?人気マンガ『ヘルプマン!!』の取材記が登場

本書の主人公・鯱浜良平(しゃちはま りょうへい)は、社会部への転属を夢見る「ことぶき新聞 生活部」の記者だ。夜中に大好物のカップラーメンを2個も食べたりするせいで、ぽっちゃり体型。その体型から、ついたあだ名はシャチではなくトドハマ。思考が混乱すると、思っていることがそのまま口から出てしまう悪い癖がある。

そんなトドハマが、介護の取材で外見が金髪ヤンキーの社会福祉士・神崎仁に会い取材を始める―。

2003年から連載が始まり、今なお続いているマンガ「ヘルプマン!!」をご存じの方は多いだろう。
落ちこぼれの高校生だった恩田百太郎が、幼なじみの神崎仁とともに高齢者介護の道を歩む姿を描いた介護コミックだ。
介護保険制度編、認知症編、介護虐待編などさまざまなテーマを掲げて、介護の世界を冷静にリアルに描き出していて評価が高い作品だ。

その新シリーズとしての本書「ヘルプマン!! 取材記」は、介護について専門外の新聞記者の視点から介護の現状を捉えようとする新機軸の作品となっている。
トドハマは、
「国、施設の不正、虐待、人手不足、老老介護、認認介護、介護殺人、介護心中、まるで社会問題の総合デパートだ」
「ぼくら報道人は、いったい何を書けばいいんだろう。介護は、ほんとに記者泣かせだよ」

と新聞記者だけあって知識はあるのだが、介護は厄介という世間一般と同じ見識の持ち主だ。

しかし、そんなトドハマに対して神崎仁は、「介護は自由度の高い仕事ですから」と言い面食らわせる。
そして神崎が引き合わせたのが「幸のつどい」というデイサービスセンターの代表取締役・中平武志だ。

中平は、自分のやりたいことをしたいために高専を中退。金を稼ぐために派遣社員で働くがクビになり、失業保険目当てで行った職業訓練先がたまたま介護施設だったという何とも行き当たりばったりな経緯を話し、トドハマを呆れさせる。
しかし、介護施設で非人間的に老人を扱う職員たちに怒りを覚え、自ら介護事業所をわずか5カ月で開設したという展開にトドハマは驚愕する。

<「まさか失業保険をつなぐための職業訓練で……こんなかけがえのない……生涯をかけて悔いのない仕事に巡り逢えるなんて思ってもみませんでした!ボクは本当に幸せです!」>

トドハマは、利用者の意志を尊重する自立支援を重視したこの事業所の経営方針を目の当たりにし、しかも、「自立支援が介護給付の抑制につながる」「要介護度が下がれば億単位で限度額を抑制できる」と言われ混乱をきたしてしまう。

トドハマの介護に対する認識は、ごく一般的な人たちが持つものと一緒だ。

介護される人は身体の自由がなく、介護する家族は外出する自由もない。
介護保険料は財源不足だし、介護施設では人手不足で職員は疲弊している。
要介護度が下がれば、介護保険の利用限度額が下がるはずなのに、介護保険料は値上がりしている。
国も介護予防に力をいれているが、急速な高齢化に金も人も追いつかないのが現状だ。

その中で、中平の言葉に考えさせられる。

<「ご自分の人生をご自分の意志で、誇りを持って生きていらっしゃいます!その誇りを支えるのがボクら介護職の仕事です」>

また巻末近くで語られる「午後3時の男」のエピソードは感慨深い。
病院の個室に寝たきりで痰吸引されながら生きているおばあさんを、毎日午後3時になると同じ病院の階下にいる夫が背広を着て訪ねてくる。夫が訪れると、おばあさんの顔がぱっと輝くという。

神崎はこのエピソードに次のように応えている。

<「人は死ぬまで生きてるんだから、生きる力が必要なんだよ。薬や点滴じゃ補えない。介護でなきゃ与えられない。午後3時の男のしたことこそが介護の根っこなんだよ」>

さまざまな問題を抱え忙殺される日々であっても、介護でお年寄りに生きる力を与えることができるということを、今一度、心に留めることが大事なのではないだろうか。

本書は、記者魂に火がついたトドハマが介護に関する取材を本格的に始める決心をするところで終わる。
続きが気になる人はぜひ続巻を読んでみよう。

 

著者プロフィール(引用)

くさか 里樹(くさか・りき)さん
高知市内の通所授産施設勤務後、1980年に漫画家デビュー。2003年から講談社の漫画誌で「ヘルプマン!」を連載。2011年に第40回日本漫画家協会賞大賞を受賞。2014年末、「週刊朝日」に発表の場を移し、「ヘルプマン!!」を連載開始。代表作に「ケイリン野郎」「片翼同盟」「あたしが伝説」など。

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