訪問入浴のパートが楽しくて、この先も介護業界で働いていこうという気持ちが強くなったO・Uさん。ヘルパー2級(現介護職員初任者研修に相当)の資格を取り、正職員として介護の仕事に取り組もうと転職を決心しました。
ところが、転職先の勤務体系や人間関係に悩まされて……。そんな局面をどう乗り越えたのか、Oさんの思いを伺いました。
*O・Uさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
O・Uさん(56歳)のプロフィール・転職体験
●介護業界歴…20年
●介護の仕事に就く前…メーカー事務職、保険会社集金
●介護業界での転職回数…2回
●いままでの勤務先…訪問入浴事業所、介護老人保健施設、訪問介護事業所、デイケア、居宅介護支援事業所
●保有資格…介護福祉士、ケアマネジャー、主任ケアマネジャー
老健では学びを得たが、個別ケアができないことに悩み…
これまで訪問入浴しか経験がなかったので、転職先の介護老人保健施設(老健)は新鮮でした。
以前は入浴という一場面でしか関われなかった利用者さんに、1日を通して関わることができます。
また、医療職やリハビリ職など、さまざまな職種の職員が専門性に誇りを持ちながら利用者さんを支援している様子を見ると、身が引き締まります。
仲間に教えてもらうことが多く、介護職として自分が成長していることを実感できました。
人間関係も、そう悪くなかったですね。というのも、応募するときに、「オープニングスタッフ」にこだわったんです。
古くからある施設だと、人間関係ができあがっていて、人見知りの自分はその中に入っていくのがちょっと大変かな、と思ったのです。
それより、みんなが「はじめまして」の新しい施設のほうが、全員横並びで人間関係を築くことができて、私のような者には楽だと思えました。
利用者が100人もいる老健だったので、いくつかある配属先の中で、私は認知症専門棟の担当になりました。
ただ、リハビリを目的とするので、それほど重い認知症の方はいなくて、そういう点でも、施設での介護がはじめての私には、安心できました。
認知症の方への接し方も勉強させていただき、得るものは多かったですね。
しかし、子どもたちが大きくなったとはいえ、まだまだ学校の懇談会やPTAなどがある年齢。夜勤をこなしながら、家事や子育てを両立させるのが、体力的にきつくて。
夜勤明けに学校の用事をかためていたので、疲れが取れないまま、また出勤する。その繰り返しです。
また、大勢の利用者さんと接することが勉強になる半面、一人ひとりに合わせた個別ケアができないことにも悩みました。
利用者さんの人数に対して、介護職の数が限られているので、どうしても、流れ作業のようになってしまうのです。あの方にはこんなふうにゆっくりと接したほうがいい、と思っても、時間がないからせかすようにしてしまう。
利用者さんと十分なコミュニケ―ションをとるなら、やはり訪問介護なのかもしれないと、考え直しました。
サ責にキャリアアップ、国家資格の強さを実感
その老健では11カ月ほどがんばったのですが、やはり利用者さんの個別ケアを目指したいと思い、退職を決意しました。そして、医療法人が経営する訪問介護事業所に面接に行きました。
老健時代に介護福祉士の資格を取得していたので、ここでは、「サービス提供責任者(サ責)として活躍してほしい」と言ってもらえました。
訪問入浴のパートからはじめた介護の仕事。正職員としてのキャリアは11カ月しかありませんでしたが、国家資格はやはり強いのだな、と実感しました。
サ責といっても、ヘルパーさんたちの管理だけではなく、手が足りなければ自分もヘルパー業務をします。
実務をこなしながら事業所全体を見通して、自分なりにマネジメントができる……そうならよかったのですが、ひとつ問題がありました。
事業所には、私を含めてサ責が3人。ひとりはほとんど実作業もせず、パソコンの前に座っているだけの若い女性。そしてもうひとりはベテランの中年女性でした。
このベテランの方が実質的に事業所を仕切っていて、この人のやり方がすべてといっても過言ではありません。
サ責の細かいルールを作っていて、それを守るように言われました。サ責だけでなく、ヘルパーの業務についても、自らの手法を断固貫く人で。ヘルパー全員にそのやり方に従うように指示していました。
やり方は事細かに決まっていて。たとえば掃除の場合、まず壁に掃除機をかけ、布団に掃除機をかけ、床に掃除機をかける……といったように、掃除機をかける順番さえ決まっていました。
壁に掃除機をかける? そんなこと、日常の掃除ではしませんよね。するとなれば、大掃除にあたり、ヘルパー業務外となってしまいます。
それに、床を掃除した掃除機を布団にも使うなんて、あまり衛生的ではないと思うのです。
でも、そんな意見は到底聞いてもらえる雰囲気ではありません。ほかのヘルパーさんも「お局」などと彼女の悪口を言うだけで、逆らう人はいませんでした。
個別ケアをしたい、と思って訪問介護を選んだのに、利用者さんにこちらのやり方に合わせていただいているだけに思えてしまって。
1カ月が過ぎた頃には、どんどんモチベーションが下がってしまったのです。
次回は、同じ事業所で異動をし、新たな気持ちで介護に向き合うOさんの様子をお伝えします。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
*O・Uさんの「私が転職した理由」…
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