介護の仕事をする上で、決して忘れてはいけないのが「おもてなし」の心です。
より良いサービスを提供するには介護の知識や技術が必要ですが、そこに適切なマナーや思いやりの気持ちがなければ、利用者さんとの信頼関係を築くのは難しいかもしれません。
この記事では、介護業界で働くなら知っておきたい「接遇マナー5原則」をご紹介!実践度の確認に、チェックリストもご活用ください。
目次
■ 接遇マナーとは?
・介護の仕事に接遇マナーが必要な理由
■ 接遇マナー5原則を知ろう
1. 挨拶
2. 表情
3. 態度
4. 言葉遣い
5. 身だしなみ
■ 接遇マナーチェックリスト【介護職向け】
■ まとめ
接遇とは、人に接する際の「おもてなし」の心や行動を指す言葉です。
接遇の「遇」の字には、もてなすという意味が含まれています。
つまり「接遇マナー」とは、相手に思いやりを持っておもてなしするための礼儀作法のこと。
仕事の上では、特にお客様と直接コミュニケーションをとる接客業で重視されるスキルです。
ホテルや飲食店のスタッフを想像すると、イメージがつきやすいかもしれません。
どれだけ設備や料理の味が良くても、接客態度が悪ければ「利用してよかった」とは思えないでしょう。
働く人が適切なマナーを身に付けることで、お客様により満足度の高いサービスを提供できるようになります。
ホテルや飲食店のスタッフと同様、介護職もお客様(利用者さん)と直接接してサービス提供をする仕事です。
プロとして守るべき接遇マナーを意識し、コミュニケーションをとることが求められます。
さらに利用者さんの多くは、職員より長く生きてきた「人生の先輩」であり、そういった視点でも敬意を忘れてはいけません。
また、介護職がより良いケアを行うには、利用者さんの健康状態や思いをキャッチすることが重要です。
しかし、接遇マナーが欠けていると相手の信頼を得られず、心身の状態変化を見逃してしまう可能性があります。
利用者さんの生活の質(QOL)を高めるためにも、適切な言葉遣いや振る舞いを身に付けましょう。
介護の仕事をする上で知っておきたいのが「接遇マナー5原則」です。
上記の5つを「接遇マナー5原則」と呼び、利用者さんと接する際に意識すべき基本の礼儀作法になります。
では具体的にどんな点に気を付けたらよいか、1つずつ確認していきましょう。
円滑なコミュニケーションを図る第一歩は、気持ちのいい「挨拶」をすること。
難しく考える必要はなく、大切なポイントは以下3点です。
●自分から挨拶をする
●立ち止まって相手の目を見る
●明るくはっきりした声で伝える
せっかく挨拶をしても、すれ違いながらや手元で作業をしながらでは、相手におもてなしの心が伝わりづらくなります。一度足を止め、明るい声で挨拶することを心がけましょう。
利用者さんが車椅子やベッド上にいるときは、視線の高さを合わせる意識も大切です。上から見下ろすような姿勢にならないよう気を付けましょう。
ケアを行う際も、いきなり介助動作に入らず、挨拶からスタートすると利用者さんに安心感を与えることができます。
「表情」は介護におけるコミュニケーションの基本。
「忙しくて余裕がない」「新人で緊張している」というときこそ、笑顔が重要です。
介護職が穏やかな表情で接すると、利用者さんも安心でき、結果的にケアがスムーズにいくことも少なくありません。
表情のポイントは、以下の通りです。
●笑顔で目を合わせる
●話の内容に合わせて「共感」を示す
まずは口角を上げ、笑顔を意識しましょう。たとえマスクをしていても、笑顔かそうでないかは目元でわかるもの。
笑顔が苦手なら、表情筋をほぐして鏡の前で練習するのがおすすめです。
介護職として1ランク上のコミュニケーションを目指すなら、笑顔だけでなく「共感」の表情もポイントになります。
「楽しい」「悲しい」「感動している」「真剣に相談したい」など、利用者さんが伝えたい感情を読み取り、その場に適した表情で接することも大切です。
介護の仕事をする上で、迷いやすいのが「態度」かもしれません。
サービス提供において、利用者さんには敬意を持って接することが基本です。
一方で、職員のかしこまった敬語や業務的な接し方を「親しみにくい」と感じる利用者さんもいるでしょう。その線引きはベテランスタッフでも難しいところ。
気を付けるべきポイントは、馴れ馴れしい態度や相手の尊厳を傷つける言動をしてはいけないということです。
利用者さんは家族や友達ではなく、お客様であることを忘れないでください。仕事の域を超えて個人的な関係になることで、思わぬトラブルを生むこともあります。
また、できないお願いをされた際も、雑な返事や「またあとで」といったその場しのぎの対応をするのはよくありません。
誠実な態度で話を聞き、代替案を提示するか、どうしても難しい場合は上司に相談するようにしましょう。
利用者さんやご家族と信頼関係を築くには、正しい「言葉遣い」が重要です。
敬語を使うのはもちろんですが、以下も大切なポイントになります。
●相手に伝わりやすい言葉を選ぶ
●ネガティブな表現を避ける
●呼び捨てやあだ名で呼ばない
介護・福祉・医療の現場で働く方は仕事柄、専門用語を使うことも多いでしょう。職員間では問題ありませんが、利用者さんやご家族と話す際には配慮が必要です。
また、利用者さんを「~ちゃん」やあだ名などで呼ぶのはNG。
もし自分や自分の家族が同じようにされたら、どう感じるでしょうか。
相手の立場に立ち、理解しやすく、不快にならない言葉を選ぶことが大切です。
敬語には、大きく分けて「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があります。
「尊敬語」は目上の方やお客様など、相手を敬う表現。「謙譲語」は目上の相手と話す際、自分や自分の身内の行動をへりくだる表現。「丁寧語」は語尾に「です・ます」をつけるなど丁寧な表現のことです。
これらを正しく使い分けて、利用者さんに違和感を感じさせない言葉遣いをマスターしましょう。
以下は、介護の現場でもよく使う敬語の例です。
尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 | |
誰が | 利用者さん | 職員(自分) | ー |
する | なさる、される | いたす | します |
食べる | 召し上がる | いただく | 食べます |
行く |
いらっしゃる、 |
伺う、参る | 行きます |
来る | いらっしゃる、 お越しになる |
伺う、参る | 来ます |
見る | ご覧になる | 拝見する | 見ます |
聞く | お聞きになる | 拝聴する、 うかがう |
聞きます |
言う | おっしゃる | 申す、申し上げる | 言います |
座る | お掛けになる | 座らせていただく | 座ります |
寝る | お休みになる | 休ませていただく | 寝ます |
ただし正しい敬語を暗記しても、とっさの場面でスムーズに使うのは難しいもの。
ときには間違えてしまうこともあるかもしれませんが、相手に対する敬意を忘れず、使い慣れていきましょう。
接遇マナーの基本には、話し方や振る舞いだけでなく「身だしなみ」も含まれます。
身だしなみで最も大切なのは清潔感ですが、介護の仕事をする方は、安全性にも気を配ることが必要です。
以下は、身だしなみのNG例とOK例。
日頃の服装や髪型などに改善点がないか、確認してみましょう。
【NG例】
●ダボダボでサイズが合っていない服
●露出が多い服
●部屋着のようなラフすぎる格好
●伸びた爪、無精ヒゲ、香水やタバコの臭い
【OK例】
●派手でなくサイズの合った服
●機能的で動きやすいスニーカー
●前髪は目にかからないようにする
●指輪やピアスなどのアクセサリーを外す
ここでは「接遇マナー5原則」がどれくらい身に付いているかを確認します。
以下のリストを使って、普段の仕事で「実践できている」項目をチェック!
チェックが付かなかったマナーは、これから意識的に習得・改善していきましょう。
□自分から積極的に挨拶している。
□相手と視線の高さを合わせている。
□明るくはっきりした声で伝えている。
□記録作業や車椅子を押しながらなど、何かをしながら挨拶していない。
□ケアを行う際は、いきなり介助動作に入らず挨拶からスタートしている。
□マスクの下でも笑顔を意識している。
□相手としっかり目を合わせている。
□忙しいから…と無表情になっていない。
□新人だから…と不安そうな顔でケアをしていない。
□相手の感情や思いにマッチした表情で「共感」を示している。
□利用者さんの私物にむやみに触ったり、不要なスキンシップをとっていない。
□「お世話してあげている」という上から目線の態度で接していない。
□誠実な態度で受け答えをしている。
□福祉用具や物品を丁寧に扱っている。
□職員同士で仕事に関係のないおしゃべりをしていない。
□ため口ではなく敬語で話している。
□「~ちゃん」やあだ名で呼んでいない。
□相手に伝わりづらい言葉(専門用語、流行語、略語など)を使っていない。
□行動を急かすような声かけをしていない。
□ポジティブな表現で相手に寄り添うことを意識している。
□TPOに合った服装を選んでいる。
□相手にだらしない印象を与える着こなしをしていない。
□前髪が目にかからないようにしている。
□爪やヒゲを伸ばしていない。
□香水やタバコの臭いに気を付けている。
□ケアをする際アクセサリーは外している。
以下から、チェックリストのPDFファイルをダウンロードできます。
A4サイズで印刷して、職場での確認や研修などにご活用ください。
↓印刷見本(クリックで拡大できます)
利用者さんと直接接してサービスを提供する介護職にとって、接遇マナーは必須のスキルです。
相手に対する敬意とおもてなしの心を持ち、正しい礼儀作法を身に付けましょう。
特に意識すると良いのが、挨拶・表情・態度・言葉遣い・身だしなみの「接遇マナー5原則」です。
利用者さんやご家族との信頼関係を築くためにも、しっかり実践していきましょう。
具体的なポイントは、チェックリストを活用して確認してみてください。
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