2022年10月20日
岸田政権が掲げる「公的価格の抜本的見直し」の下、2月より補助金の形で実施されてきた介護職員と看護職員の処遇改善策。10月1日より、介護報酬、診療報酬の臨時改定が行われ、財源が保険財源に切り替わった。改定の内容を解説する。
「介護職員等ベースアップ等支援加算」 新設
介護報酬では、この10月に臨時改定（改定率＋1.13％）が行われ、新たに介護職員等ベースアップ等支援加算（以下、ベア加算）が創設された。
岸田政権が掲げた「介護職員の月額9000円賃上げ」の施策として、今年2～9月までは全額国費の「介護職員処遇改善支援補助金」として事業所へ交付していたが、10月サービス分からは介護報酬で支払われる。
10月分から算定する事業所は8月までに都道府県へ届出を済ませていなければならない。
今後、届出る場合も算定の前々月までの届出が必要だ。
6月に、厚労省はベア加算を含めた3つの処遇改善加算の計画書・実績報告書をまとめた様式例や記入例を事務連絡している。
従来の処遇改善加算との違いは、賃上げ方法について「3分の2以上をベースアップで」と定めた要件（表）。この要件も含め、基本的には補助金の要件が引き継がれている。
一方で、加算率は多くのサービスで補助金と多少異なる。
例えば、訪問介護は補助金で2.1％だったが、ベア加算では2.4％とされている。
これは、かけあわせる「総報酬」が補助金は介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算を足した額であるのに対し、新加算では両加算を除いた額であるための調整だ。
今後の継続的な処遇改善の実施について、国は「公的価格の費用の見える化」の促進を前提に置く。
政府の「骨太の方針2022」では、「医療法人・介護サービス事業者の経営状況に関する全国的な電子開示システム等を整備するとともに、処遇改善を進めるに際して費用の見える化などの促進策を講ずる」と明記。
次期介護保険法改正を議論する介護保険部会で、「介護サービス事業者の財務状況の見える化」についての議論が始まっている。
「看護職員処遇改善評価料」新設
診療報酬上では、2～9月実施の看護職員等処遇改善事業補助金を引き継ぐ形で「看護職員処遇改善評価料」が10月1日に施行。
地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、収入を3％（月1万2000円相当）引上げるための臨時改定を行った。
対象となる医療機関は（１）救急医療管理加算に係る届出を行っており、救急搬送件数が年200件以上 （２）救命救急センター、高度救命救急センター、または小児救命救急センターを設置――のいずれか。訪問看護ステーションは対象外となる。
具体的な報酬額は、医療機関の保健師、助産師、看護師、准看護師（以下「看護職員等」）の常勤換算数と、のべ入院患者数をもとに算出した値に応じて165段階に区分（図）。
入院患者に対し、より手厚い看護職員等を配置しているところほど評価料が高くなる。
介護報酬の「ベア加算」同様、看護職員等に対し算定額に相当する賃金改善（基本給、手当、退職手当を除く賞与等）を行い、かつ賃金改善の合計額の3分の2以上は基本給または決まって毎月支払われる手当の引上げに充てることが算定要件の一つ。
なお、看護職員等以外に看護補助者や理学療法士等のコメディカルも賃金改善の対象に含めても良い。
毎年4月には同評価料の見込額、賃金改善の見込額、賃金改善実施期間、賃金改善を行う項目と方法等を記載した賃金改善計画書を作成。
7月には前年度の取組状況を評価した賃金改善実績報告書を作成しなければならない。
＜シルバー産業新聞 2022年10月10日号＞
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