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若年性アルツハイマーの母と生きる
岩佐まり
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2015年09月09日

『若年性アルツハイマーの母と生きる』…著者 岩佐まりさんのインタビュー付き | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

o1■書名:若年性アルツハイマーの母と生きる
■著者:岩佐まり
■発行:KADOKAWA
■出版年:2015年6月

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相手目線になることが、介護をやさしくする

2013年東京でシングル介護を始めた頃。母65歳、まりさん30歳。要介護3と認定されるが、母娘とも生活が落ち着いてきた
2013年東京でシングル介護を始めた頃。母65歳、まりさん30歳。要介護3と認定されるが、母娘とも生活が落ち着いてきた

介護職の間でも、「介護が難しい」と言われるのが、若年性アルツハイマーの利用者さん。若くして発症するだけに体力があり、言動が激しい方が多いので、どうお付き合いしたらいいのか、悩むことは多いだろう。が、そんな病気の母親と暮らしながら、全幅の信頼を得て介護をしている女性がいる。

岩佐まりさん、32歳。ご覧のようにかわいくて華奢な女性だ。彼女はフリーアナウンサーの仕事をしながら、母親とふたり暮らし。2つのデイサービスとお泊りの機能を使いながら、仕事と介護を両立している。

まりさんのお母さんは、2003年、55歳で物忘れがはじまった。次第にもの忘れがひどくなり、料理などの家事ができなくなる。2006年に病院でMCI(アルツハイマー型軽度認知障害)と診断、2008年にはついに、アルツハイマーと診断された。

やがてアルツハイマーの薬もきちんと飲めなくなり、大阪で同居していた父親とのいさかいが絶えなくなったのをきっかけに、お母さんを東京に一時的に呼び寄せる。2009年、まりさんが26歳、お母さんが61歳のときだ。そして、2013年から、本格的に同居介護を開始する。

明るく元気で、いつも自分のことを思ってくれていた母親が、気に入らないと、自分をにらみつけて「バカヤロー!」と言う。ぬいぐるみを投げつけてくる。カッとしてぬいぐるみを投げ返してみたものの、向こうも全力で投げ返してくる。仲良し母子だったのに、こんなふうになるなんて……。苦しくて切なくて、自分の思いを吐き出さずにはいられなくて、介護ブログを始めたのも、この頃だ。やがてこの介護ブログが大きな共感を呼び、今回の出版にも結びついた。



まりさんのブログ「若年性アルツハイマーの母と生きる」。主な読者は、同じように介護をする家族
まりさんのブログ「若年性アルツハイマーの母と生きる」。主な読者は、同じように介護をする家族

ブログは日々の葛藤をエピソードのように記していて、まりさんとお母さんの生活を共有するような面白さがある。一方、著書のほうは、長年のお母さんの病状を、歴史を追ってリアルにたどっている。それに合わせて、まりさんの介護がどう変わってきたか、まりさんの心がどう強くなってきたかが時間を追って伝えられ、心にズシンと響く。

最初はお母さんの変化にショックを受けて、泣いて苦しんでいる。が、病状が進むにつれ、むしろまりさんは腹を据え、まるごとお母さんを受け止めていく。少々のことでは動じない。まるで、まりさんのほうが親のように、お母さんを大きな愛で包み、慈しむのだ。



「母が怒りモード全開になればなるほど、私は笑顔を保とうと努力します」と、まりさん。特に朝は機嫌が悪く、まりさんに対しても暴言をはきがちだが、そんなときこそ、刺激しない、と決めている。気長に子どもをあやすように文句につき合い、背中をやさしくさすり続けるのだ。すごい! プロの技のようだ。



お母さんがお風呂から出てこないときなどは、大好きなお菓子を見せるというまりさん「よっしゃ出るよ~」といっぺんに機嫌が治るそう
お母さんがお風呂から出てこないときなどは、大好きなお菓子を見せるというまりさん「よっしゃ出るよ~」といっぺんに機嫌が治るそう

そして、「私も毎朝かなりの体力を使いますが、母のほうも全力のエネルギーで怒っているので相当疲れるはず」と、相手目線になる。こうして「大変やね」とまりさんのほうからお母さんにやさしくするから、お母さんはやがて落ち着く。「まりといると安心する」と、お母さんの顔がほころぶ。

「介護は難しい」と言っているときは、自分目線の介護をしているのかもしれない。まりさんのように、相手の立場に立って、認知症の人の怒りや悲しみをとらえれば、自然と利用者さんは心開いてくれる――。この著書は、介護の「魂」を教えてくれる。

しかし、彼女は決して気負っていない。仕事仲間と飲みに行ったり、友達とおしゃべりしたりする時間も確保している。介護には終わりがないし、正解もない。だからこそ、自分らしさも大事にしながら、介護を持続可能にしていく術も身につけている。「これで恋愛相手がみつかれば、最高なんですけどね」と笑うのだか、そんな彼女の魅力は、お母さんの介護をすることから生まれた本物の美しさなのだ、と思わずにいられない。

著書には、デイサービスを抜け出して徘徊してしまったときの職員とのやりとり、ケアマネジャーとのやりとりなども赤裸々に紹介。また「私を支えてくれる存在」として、日頃お世話になっているケアマネジャーやデイサービスへの感謝の気持ちも綴られている。
利用者家族が、どんな気持ちでいるのかを知り、あらためて自分の仕事の意義を感じることもできる一冊だ。




○●○ 著者ミニインタビュー ○●○

介護職の方々に何度も助けられた。
介護はチームワークだと思っています。


o5この本を出版してから、ますます私の介護に注目してくださる人が増えました。だれにも相談せず、ただ「母が安心して幸せになれるように」とだけ願って、自分なりに考えてやってきただけなのに。「すごい」「見習いたい」なんて言ってくださる方もいて、なんだか気恥ずかしい限りです。

でも、けっして、ひとりで介護してきたわけではありません。不規則な仕事をしながら、母に健康的な暮らしをしてもらうには、私ひとりの力だけではとても無理。朝から夕方までお願いできるデイサービスのほかに、365日24時間預かってくれるデイサービスや、お泊りのサービスがあってこそ、やってこられたのだと思います。

また、ケアマネジャーさんにしても、担当の介護士さんにしても、母のことはもちろん、私に対しても優しい気遣いをしてくださいます。「今月、ちょっと利用が多いから、自費の追加料金が発生しないように、少し自宅で様子をみたら?」なんて、早めに教えてくれたり。「若いんだから、介護だけで人生終わっちゃだめだよ。友達と飲みに行ったり、旅行に行ったりする時間も大切にね」と言ってくださったり。私たち親子は、周囲に支えられながら生きているんだなぁと実感します。介護はチームワーク。それぞれの得意分野を活かしていただきながら、上手に連携をして、母を支えられたらいいな、と思います。

また、親族はわがままをぶつけられてつらいことも多いですが、そんなときは、わざと「親子」というスタンスを消して、「私は母の介護士よ!」と思い込むようにしています。もちろん、プロの介護士さんのようにはできませんが、そう思い込むことで、客観的に接することができます。私は、介護に悩んだとき、介護職員初任者研修を受けて、知識や技術を身につけさせてもらいました。知識や技術があれば、乗り切れることも多くなります。

これから先、病気が進んだら、母は私のこともわからなくなってしまうかもしれない。それを考えると、少し寂しいですけれど。でも、もし娘だと認識できなくなっても、私がいることで、安心して暮らしていけたらそれでいい、と思っています。大好きな母に、これからも幸せに生きてほしいと、それだけを願っています。


著者プロフィール

岩佐まり(いわさ・まり)さん フリーアナウンサー
1983 年、大阪府生まれ。フリーアナウンサー。ケーブルテレビのキャスター&レポーターや、ネットチャンネルの司会などを務める。2003年、55歳の若さで若年性アルツハイマーを患った母を、2009年一時介護、そして2013年から本格的にシングル介護を始める。2009年に、介護の様子や気持ちを綴ったブログ「若年性アルツハイマーの母と生きる」を開始し、介護で苦しむ人をはじめ、これまで介護に縁のなかった人にも感動を与える。2014年以降、数々のテレビ番組でも紹介され、話題になる。

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