障害のある子どもたちへのボランティアを始めたら、福祉や介護の世界に俄然興味が沸き、訪問介護のヘルパーとして働き始めたA・Eさん。やがては「これが天職」と思うように。
しかし、介護のプロになるためには、さまざまな職場の体験が必要だと考え始めました。
今回は、特別養護老人ホームの介護職員として意欲に燃えるAさんの様子をお伝えします。
*A・Eさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
A・Eさん(57歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…20年
●介護の仕事に就く前…手芸作家、主婦
●介護業界での転職回数…3回
●いままでの勤務先…訪問介護事業所、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、デイサービス、福祉系専門学校
●保有資格…介護福祉士、介護教員
介護施設の「立ち上げメンバー」なら転職もラク
利用者さんの個性によって支援の仕方が違い、対応力が求められる訪問介護の仕事。
とてもおもしろく、やりがいがありました。始めて3年ほどたつと、ショートステイ先の話を聞いて、老人ホームではどのように利用者さんが昼夜を過ごしているのか知りたくなりました。
大きくなった子どもたちは私の仕事に理解があったので、思い切って特別養護老人ホーム(特養)の仕事をすることにしました。
特養なら夜勤明けや公休、有休を利用して学校行事に参加できるというメリットも大きかったです。
介護保険制度が始まる前、特養は、自治体や社会福祉協議会のほか、社会福祉法人が運営することが多くなってきた時期でした。
私が勤務していた社会福祉協議会には、そんな情報もたくさん集まってきていたので、家から近く法人の理念に共感でき、経営もしっかりしていそうなところを探し、「立ち上げ職員募集」の情報が出ていたところへ面接に行きました。
立ち上げ職員(オープニング)の募集をしているところは、比較的働きやすい、というのは、ヘルパーの先輩に教えてもらったことです。
すでに運営されているところでは、介護のやり方や働き方のルールなどが決まっていて、新しく入職する職員は、そのやり方に合わせた働き方をします。
でも立ち上げメンバーなら、介護の仕方も働き方も、みんなで決めていける。
ルールがまだできていない分、最初は困難も大きいですが、先輩・後輩の壁も厚くないので、みんなが同じ気持ちで働きやすいのだ、と。これは今でもよく言われることです。
特に、私のように年齢のわりには介護経験が薄い者にとっては、キャリアはそれほど関係なく、職員が同一目線で働けるような職場はありがたいと思いました。
とはいえ、3年のヘルパー経験は私の信用にもなったようで、すんなりと面接に合格し、特養の正職員になりました。
特養の利用者さんと生活を共にし、充実した日々
介護保険が始まる前の当時、老人ホームの職員は「寮母」と呼ばれていました。
寮母に求められることは多かったですし、とにかく忙しかったですね。
私が勤務したところは、入居者50人に対して、介護職は4人しかいませんでした。
今のように集団生活の感染予防のノウハウも確立していなかったので、風邪や皮膚病などの病気もうつりやすい環境です。
そんな中、疥癬(かいせん)という皮膚病が大流行してしまいました。ヒゼンダニというダニが起こす皮膚炎で、寝具や手から感染します。
多床室の老人ホームでは、ひとつの部屋にベッドを並べるので、どうしても感染しやすくなります。
感染予防のためにも毎日入浴を行いました。症状のひどい利用者さんは寮母室のそばに集めて夜どおし経過観察をするなど、本当に大変でした。
でも、やりがいにも満ちていました。
理事長が「利用者さんを、どんどんおでかけさせてあげましょう」という人だったので、芋ほりやお花見、観劇など、さまざまなレクリエーションに出かけました。
4月の桜の頃に雪が降ったときには、「みんなで雪見桜を」と、保温に気をつけながらバスででかけ、利用者さんにまたとない風景を楽しんでもらいました。
勤務していた特養と併設して、比較的元気な高齢者が入居する軽費老人ホームもあったので、やがて生活相談員として両方をみるようになりました。
介護福祉士の資格を取得し、実習指導者講習も修了していたので、現場での後輩の指導や実習生の受け入れなど充実した日々でした。
しかし、身体がついていかなかった。以前からの子宮筋腫が少しずつ大きくなり、貧血がひどくなってきました。朝起きると体がだるく、うまく起きられなくて……。
理事長には「君には辞めないでほしいから」と、長期の休みをもらい、昼間の仕事だけにしてもらいましたが、それでも身体の調子が戻りません。
3年半勤めてきて、はじめて辞職を考え始めました。
次回は、デイサービスに就職するAさんの心境をお伝えします。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
*A・Eさんの「私が転職した理由」…
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