訪問介護の仕事内容は、身体介護、生活援助、通院等乗降介助など多岐にわたります。
本記事では、具体的な業務の内容や平均給与、向いている人の特徴をご紹介。ヘルパーがやってはいけないことや、よくある質問にも回答します。
目次
■訪問介護とは
・訪問介護と訪問入浴の違いは？
■訪問介護の仕事内容
・身体介護
・生活援助
・通院等乗降介助
・事業所への報告
・夜勤業務（サービス種類による）
■ヘルパーがやってはいけない事
・ご家族へのサービス提供
・日常生活の援助を超える行為
・他の専門職が行うべき行為
・金銭管理
■訪問介護で働く一日の流れ
・日勤のスケジュール例
・夜勤のスケジュール例
■訪問介護の平均給料
■訪問介護に向いている人の特徴
■ホームヘルパーとして働くには？
・必要な資格を取得する
・事業所に就職する
・登録ヘルパーになる
・派遣ヘルパーになる
■訪問介護の仕事に関するよくある質問
・訪問介護に夜勤はある？
・いきなり1人で訪問するの？
・短時間でも働ける？
■訪問介護に転職した方の体験談
■訪問介護は自宅で暮らす利用者さんの生活を支える仕事
訪問介護とは、訪問介護員（ホームヘルパー）が利用者さんの自宅に訪問し、入浴・排泄・食事などの身体介護や、調理・掃除・洗濯などの生活援助を提供する介護保険サービスのことです。
介護保険サービスにはさまざまな種類がありますが、訪問介護は自宅で生活しながら利用できる「居宅サービス」の一つ。
ホームヘルパーは、利用者さんが住み慣れた環境で日常生活を送るために必要なサポートを行います。
訪問入浴は、看護・介護職員が利用者さんの自宅に浴槽を持ち込み、入浴介助を行う介護保険サービスです。
訪問介護と訪問入浴の主な違いは、以下の通りです。
| 訪問介護 | 訪問入浴 | |
| 提供サービス | 日常生活に 必要な支援 |
入浴の支援 |
| 利用対象者 | 在宅で介護を 必要とする方 |
自宅の浴槽で 入浴困難な方 |
| 訪問する職員 | 訪問介護員 | 看護＋介護職員 |
訪問介護事業所で働くホームヘルパーは、決められた時間に利用者さんの自宅を訪問し、ケアプランの内容に沿って必要なサービスを提供します。
訪問介護で行う主な仕事内容は、以下の通りです。
身体介護とは、利用者さんの身体に直接触れて行う介護サービスです。
訪問介護では、介護職員初任者研修以上の資格を持った職員が、食事・入浴・排泄など、日常生活に欠かせない動作をサポートします。
訪問介護で行う身体介護の例は、以下の通りです。
●入浴介助
●食事介助
●排泄介助
●移乗・移動介助、体位交換
●就寝・起床介助
●更衣介助、整容の支援
●服薬介助
身体介護をする際に重要なのは、利用者さんの自宅の環境や習慣を理解し、その方に合ったサポートを行うことです。
可能な限りできることはご自身で行なっていただく、自立支援の視点も欠かせません。
生活援助とは、身体介護以外で利用者さんが必要とする、日常生活の家事全般をサポートするサービスのことです。
訪問介護で行う生活援助の例としては、以下が挙げられます。
●掃除
●洗濯
●調理
●ベッドメイク
●買い物
●衣服の整理
ただし、介護保険サービスで対応できるのは、利用者さんの日常生活に必要な支援のみです。ご家族のための家事や、日常生活の範囲を超えるサポートは訪問介護サービスの対象外となるため注意しましょう。（→詳細はこちら）
通院等乗降介助とは、利用者さんが病院などへ通院・外出する際に、必要な準備や移動のサポートを行うサービスです。
自宅から目的地までの移動時に、安全に車へ乗り降りできるよう補助し、必要に応じて付き添いを行います。
なお、車での移送にかかる費用は介護保険の対象外です。
実施したサービスについて事業所へ報告することも、ホームヘルパーの大事な業務のひとつです。
訪問介護事業所の運営基準でも、サービスの提供日や内容を記録することが義務付けられています。
介護記録に記載する主な内容は、以下の通りです。
●サービス提供の日時・担当者（キャンセルや変更があった場合はその理由）
●提供したサービスの内容
●利用者さんの健康状態など特記事項
介護記録や報告書の書き方は、事業所によって異なります。
チェック方式のシンプルな書式や記録ソフトを取り入れて、業務を効率化している職場も少なくありません。
利用者さんの体調不良や事故などがあった際は、「〇〇だと思う」などヘルパー自身の意見ではなく、客観的な事実を記載することが大切です。
また、利用者さんの様子や生活状況で気づいたことがあれば、記録に残したうえで、必要に応じてケアマネジャーやサービス提供責任者へ報告・相談しましょう。
訪問介護は日中の業務がメインですが、「夜間対応型訪問介護」や「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」など、夜間帯に対応したサービスを提供する事業所では、夜勤があります。
夜間対応型訪問介護は、夕方18時～翌朝8時までの夜間帯にホームヘルパーが自宅を訪問して行うサービス。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、24時間365日対応可能で、ホームヘルパーまたは看護師が訪問してケアを行うサービスです。
これらのサービス形態で夜勤を行う場合、主な業務内容は「定期巡回」と「随時対応」の2種類です。
定時に訪問して就寝介助や排泄介助、安否確認を行ったり、緊急時に駆けつけて必要な介助や救急車の手配を行ったりします。
自宅で暮らす利用者さんが夜間も安心して過ごせるようサポートするのが、訪問介護の夜勤の役割です。
ホームヘルパーは、利用者さんの自宅に伺い、日常生活のサポートを行います。
そのため、「ついでにこれもお願いできませんか？」と予定外のことを依頼される場面もあるでしょう。
しかし、訪問介護はケアプランに基づいてサービス提供を行うため、決められた業務以外のことは基本的に対応できません。
特に、以下のような行為はヘルパー業務の対象外となるため注意が必要です。
これらを頼まれて対応に困った場合は、サービス提供責任者や管理者に相談するようにしましょう。
介護保険サービスは利用者さん本人に対して行うものであり、以下のような支援は実施できません。
・ご家族の部屋の清掃
・ご家族のための洗濯や調理
・ご家族の薬の受け取り
ご家族のための家事や手伝いは介護保険の枠を超えてしまうため、ヘルパー業務の対象外となります。
訪問介護では、利用者さんが自宅で日常生活を継続するために必要な支援を行います。
そのため、以下のような日常生活を送るうえで困らない行為については、介護保険サービスの対象外となります。
・庭の草むしり
・ペットの散歩
・趣味活動の手伝い
・部屋の模様替え
・特別な行事の準備
ホームヘルパーは、以下のような他の専門知識や技術を必要とする支援は行えません。
・医療行為
・マッサージ
・リハビリテーション
医療行為を実施できるのは、医師や看護師等の免許を持つ医療職だけです。
一部「医行為ではない」と認められるケア*（異常がない爪の爪切り、インスリン投与の声かけなど）はヘルパーでも対応できますが、利用者さんの健康状態によっては医療行為に該当する場合もあります。
「頼まれたから」と自己判断で引き受けてしまうと、大きなリスクが伴うため気を付けましょう。
あん摩マッサージ指圧やリハビリなどの行為も、資格を持つ専門職が担うサービスであり、ヘルパーが行うものではありません。
ヘルパーによる金銭管理はその後のトラブルに発展しかねないため、行うべきではありません。
金銭管理を頼まれたときはサービス提供責任者や管理者に相談し、ご家族と協議したうえで「日常生活自立支援事業」や「成年後見制度」の利用につなぐことを検討しましょう。
これらの制度では、認知症などによって判断能力が不十分な方に対して、日常生活費の管理等のサービスを行うことができます。
訪問介護の仕事の一日の流れは、雇用形態や就業先によって異なります。
基本的に、正社員は事業所の営業日・営業時間に沿ってシフト制で勤務し、登録ヘルパーは希望の曜日や時間を指定して働きます。
以下は、8：00～20：00営業（日曜定休）の訪問介護事業所で働く場合の、1週間の勤務スケジュール例です。
【正社員の場合】
・日勤 07：30～16：30（休憩60分）
・中番 10：00～19：00（休憩60分）
・遅番 11：30～20：30（休憩60分）
| 4/1（月） | 4/2（火） | 4/3（水） | 4/4（木） | 4/5（金） | 4/6（土） | 4/7（日） |
| 日勤 | 中番 | 休み | 日勤 | 中番 | 遅番 | 休み |
【登録ヘルパーの場合】
・週3回（平日）9:00～13:00希望
| 4/1（月） | 4/2（火） | 4/3（水） | 4/4（木） | 4/5（金） | 4/6（土） | 4/7（日） |
| 出勤 | 休み | 休み | 出勤 | 出勤 | 休み | 休み |
夜間のサービス提供に対応する事業所の場合は、夜勤シフトもあります。
勤務時間やシフトの規定は、入職前によく確認しておきましょう。
以下に、日勤・夜勤の場合の一日のスケジュール例を紹介します。
訪問介護の日勤の一日のスケジュール例は、以下の通りです。
| 07:30【出勤】 | |
| 08:00～11:00 | ●訪問3件（移動含む） ・身体介護（食事介助・排泄介助） ・生活援助（掃除・洗濯） |
| 11:00【休憩】 | |
| 12:00～15:30 | ●訪問3件（移動含む） ・身体介護（入浴介助・排泄介助） ・生活援助（買い物・調理） ・服薬介助 |
| 16:00 | ・実績報告、記録作業 |
| 16:30【退勤】 |
「夜間対応型訪問介護」や「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」などのサービスでは夜勤があります。
訪問介護の夜勤の一日のスケジュール例は、以下の通りです。
| 22:00【出勤】 | |
| 22:30～02:00 | ●訪問3件（移動含む） ・定期巡回（就寝介助・安否確認） ・随時対応（体調不良の対応） |
| 02:00【休憩】 | |
| 03:00～06:00 | ●訪問3件（移動含む） ・定期巡回（排泄介助・安否確認） ・随時対応（救急車の手配） |
| 06:30 | ・実績報告、記録作業 |
| 07:00【退勤】 |
「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」 によると、訪問介護事業所で働く介護職員の平均月給は、常勤（月給者）349,740円、非常勤（時給者）117,560円です。
訪問介護の介護職（常勤）の平均月給を他の施設形態と比較すると、以下の通りです。
| 施設形態 | 平均月給 | 訪問介護との差 |
| 訪問介護 | 349,740円 | ― |
| 介護老人福祉施設 （特養） |
361,860円 | ＋12,120円 |
| 特定施設 入居者生活介護 |
361,000円 | ＋11,260円 |
| 介護老人保健施設 （老健） |
352,900円 | +3,160円 |
| 介護医療院 | 330,030円 | -19,710円 |
| 通所リハビリテーション | 319,310円 | -30,430円 |
| 小規模多機能型 居宅介護 |
305,220円 | -44,520円 |
| 認知症対応型 共同生活介護 |
302,010円 | -47,730円 |
| 通所介護 | 294,440円 | -55,300円 |
訪問介護の平均給料は、通所介護（デイサービス）や認知症対応型共同生活介護（グループホーム）と比べて高い傾向にあります。
一方で、特養・老健・特定施設などと比べるとやや低めです。特養などの施設は夜勤業務があり、手当の支給があることなどが理由だと考えられます。
また、同調査によると、訪問介護事業所のサービス提供責任者（常勤）の平均給与額は367,190円。
ヘルパーから給料を上げたい方は、資格を取ってサービス提供責任者へのキャリアアップを目指すのも一つの方法です。
以下の特徴に当てはまる方は、訪問介護の仕事に向いている可能性が高いです。
・利用者さんと1対1で関わりたい
・利用者さんの習慣を大事にしたい
・責任感がある
・家事が得意
・ライフスタイルに合わせて働きたい
・職場の人間関係に悩みたくない
訪問介護は、基本的にヘルパー1人で利用者さんの自宅を訪問し、介護サービスを提供します。
利用者さんが慣れ親しんだ環境で生活を続けられるよう、その方のこだわりや習慣を理解してサポートする力が求められます。
他の職員と一緒に働く場面が少なく、人間関係のストレスは比較的少ないと言えますが、その分責任感と判断力も必要です。
身体介護だけでなく、調理や掃除といった生活援助も行うため、家事スキルを活かしたい方にも向いています。
また、登録ヘルパーであれば「週1日から」「希望の曜日・時間のみ」といった柔軟な働き方が可能です。
育児と両立したい方や、副業として介護の仕事を始めたい方にとっても、挑戦しやすい仕事だと言えるでしょう。
ホームヘルパーとして働くには、必要な資格を取得したうえで、以下の方法をとるとよいでしょう。
ここでは、ホームヘルパーとして働くために必要な資格と、就職先について紹介します。
無資格でも、訪問介護事業所への就職・転職はできます。
ただし、ホームヘルパーとして身体介護を行うには、以下のような資格が必要です。
・介護職員初任者研修
・介護福祉士実務者研修
・介護福祉士
資格を取得すると、無資格者と比べて「即戦力」として採用されやすくなります。
資格を取ってから仕事を始める場合、まず介護の基礎的な知識・技術を学べる介護職員初任者研修の取得を目指すとよいでしょう。
ホームヘルパーとして働くには、以下のような訪問介護事業を行っている職場に採用される必要があります。
・訪問介護事業所
・サービス付き高齢者向け住宅（併設の訪問介護事業所）
・住宅型有料老人ホーム（併設の訪問介護事業所）
・小規模多機能型居宅介護
仕事内容やシフト、給与条件などを確認して、希望に合う職場に応募しましょう。
訪問介護の仕事をするなら、正社員だけでなく「登録ヘルパー」という働き方もあります。
登録ヘルパーとは、訪問介護事業所に登録して、希望の曜日や時間帯の仕事を紹介してもらう雇用形態です。
利用者さんの自宅に直行・直帰できる場合が多く、スキマ時間を有効活用できます。
「週1日」「平日3時間のみ」など、ライフスタイルに合わせて働けるため、子育て中のママ・パパや、副業として働きたい方にもおすすめの働き方です。
訪問介護は、派遣のホームヘルパーとして働くこともできます。派遣会社に登録して雇用契約を結び、事業所を紹介してもらう働き方です。
非正規雇用のため、正社員よりシフトの融通が利きやすいというメリットがあります。
登録ヘルパー同様、複数の事業所と掛け持ちができる場合があり、働きやすい職場を見つけたい方にも適した雇用形態です。
ここでは、訪問介護の仕事内容に関するよくある質問と回答を紹介します。
ホームヘルパーへの転職・就職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
訪問介護は、基本的に日中（事業所の営業時間内）の仕事がメインです。
ただし、「夜間対応型訪問介護」や「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」など、夜間帯に対応するサービスでは、夜勤が発生します。
夜勤の有無や勤務時間は事業所ごとに異なるため、応募前によく確認しておきましょう。
訪問介護は利用者さんと1対1でサービス提供をしますが、初日から1人で訪問することはほぼありません。
慣れるまでは先輩ヘルパーが同行し、介助の仕方や利用者さんとの接し方を指導してくれます。
事業所によっては、安心してひとり立ちできるまでは2人体制で訪問を続けたり、未経験者向けに研修の場を設けたりしているところもあります。
介護未経験の方は、教育体制のしっかりした事業所を選ぶとよいでしょう。
訪問介護の仕事は、短時間でも勤務することができます。
たとえば、パートや登録ヘルパーの場合、1時間単位で希望の時間帯を選んで働くことが可能です。
空いた時間を有効活用できるので、子育てや別の仕事と両立させたい方も、自分に合った働き方を見つけやすいでしょう。
他業界からホームヘルパーに転職した方の体験談を紹介します。
【体験談①】
子育てと両立しながら、飲食店のウェイトレスとして働いていたOさんは、今後の長期的なキャリアを考えて訪問介護のヘルパーに転職しました。転職後の仕事について、以下のようにお話しています。
仕事内容は掃除、調理などの生活援助をはじめ、おむつ交換、入浴介助、デイの送り出し・お迎えなど。子どもや自分の生活時間に合わせて勤務できるので、小さな子どもがいても好都合でした。
生活援助は、自分の家で家族にしている調理や掃除、洗濯の知識が活かせます。身体介護は、ヘルパー2級（現在の介護職員初任者研修に相当）の講習で経験して、それなりにスムーズにできたと思います。先輩たちも丁寧に教えてくれました。
【体験談②】
派遣社員として働いていたKさんは、コロナ禍で仕事が減ったことを機に、訪問介護の登録ヘルパーに転職しました。転職後の仕事について、以下のようにお話しています。
平均1日4～5件、多い日には7件のお宅を順番に訪問します。うちの事業所は訪問の合間に事業所に戻る必要はないので、その間に自分の用事を済ますなど、自由時間が多いのが嬉しいです。
毎週、同じ利用者さんのお宅に訪問することが多く、長い期間をかけてその方のことをよく知ることができます。ひとりひとりの利用者さんにじっくり時間をかけて向き合えるのも訪問介護の良さだと思います。
訪問介護の主な仕事内容は、身体介護、生活援助、通院等乗降介助など。利用者さんの自宅に直接伺い、住み慣れた環境で安心して暮らせるようサポートするのが、ホームヘルパーの役割です。
「利用者さんの在宅生活を支えたい」「家事スキルを活かしたい」「ライフスタイルに合わせて働きたい」と考えている方にとって、訪問介護は大きなやりがいを感じられるでしょう。
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