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2023年09月20日

国内での製造販売了承へ アルツハイマー病新薬「レカネマブ」

8月21日、エーザイ(東京都文京区、内藤晴夫社長)と米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー型認知症治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」の国内での製造販売が厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で了承された。

近日中に厚労省が正式に承認し、早ければ年内にも医療現場で使えるようになる。神経細胞死の原因とされるアミロイドベータを除去する初めての治療薬であり、アルツハイマー病の進行抑制への期待が高まる。効果や注意点、従来の認知症薬との違いについて解説する。

厚生労働省によると、国内の認知症高齢者は2025年時点で730万人に達し、高齢者の5人に1人が発症すると推計されている。その原因疾患の約7割を占めるのがアルツハイマー病。物忘れや、時間・場所・人物の認識ができなくなる見当識障害、物事を順序立てて行うことが困難になる実行機能障害が主な症状とされる。

アルツハイマー病の発症の仕組みについては不明な点が多いが、有力とされるものに「アミロイドカスケード仮説」がある。①脳内のアミロイドベータ前駆体タンパク質(APP)が酵素によって切断されて、アミロイドベータタンパク質(Aβ)がつくられる②Aβが集まってプロトフィブリルという中間物質ができる③プロトフィブリルが集まり、さらに大きなAβ繊維が作られ蓄積し老人斑(脳内の特徴的なシミ)となる④神経細胞内のタウタンパク質がリン酸化され神経原線維変化(糸くずのような構造変化)と細胞死(脳委縮)を起こす――といった発症機序をたどる。

近年、このAβが作り出すプロトフィブリルが神経細胞の外側の膜を傷つけるなどし、細胞死に関わるより毒性の強い物質として注目されていた。

アルツハイマー病の進行を抑制する世界初の薬剤

今回国内での承認が了承されたレカネマブは、プロトフィブリルに高い親和性を持つ抗体製剤。点滴投与した抗体が、神経細胞に強い毒性を持つプロトフィブリルに結合し除去することでAβの蓄積を減らす働きをもつ。

国際的な臨床試験では、18カ月の投与で偽薬と比べ、記憶や見当識障害など症状の悪化を27%抑制することができた。アルツハイマー病の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせる点で従来の認知症薬と大きく異なり、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた世界初の治療薬だ。

既に国内で承認されているドネペジル(商品名「アリセプト」)やガランタミン(レミニール)などは、物忘れなどの認知症状の改善を目的としており、病気自体の進行を遅らせる効果は認められていない。

神経伝達が行われる際、神経細胞の先端からアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質が放出され、隣の神経細胞の受容体に取り込まれる。これが活発になることで記憶・学習が行われる。神経細胞死が進行するとアセチルコリンがうまく受容体に届かず、記憶障害などを引き起こす。

また、アセチルコリンは一定期間が過ぎると分解され、機能を失う。この分解を行う酵素を阻害し、アセチルコリンにできるだけ長く働いてもらおうというのがドネペジルなどの従来の薬の作用である。

軽症者が対象

ただし、レカネマブは臨床試験で効果の確認された、認知症の前段階となる軽度認知障害(MCI)と軽度認知症が対象。認知症では発症の15~20年前より脳にAβの蓄積が見られ、徐々に神経細胞の傷害が進むため、より早い段階での治療開始が必要となる。

治療開始前には、Aβの蓄積を確認するためPETと呼ばれる画像検査や、背骨の間に針を刺し脳脊髄液を採取する検査が必要となるが、実施できる医療機関は限られる。

レカネマブの副作用としては、投与開始後およそ5人に1人、脳出血や浮腫などの所見があった。これらは治療の初期に多く見られ、頭痛や吐き気などの関連症状は経過とともになくなることが多いが、経過観察のため定期的なMRIによる画像検査が必要となる。また、血液を固まりにくくする薬を使用している場合は、出血のリスクを高めるとの注意を喚起している。

適正な投与基準・薬価の設定を

7月に承認された米国での薬価は年あたり2万6500ドル(約390万円)。仮に同等だとすれば3割負担で年間約120万円、2割負担で80万円程度となる。医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分が払い戻される高額療養費制度があり、70歳以上の年収156万~約370万円の一般所得の人は、年14万4000円が自己負担の上限となる。

これを何年間投与すればよいかについては現時点でデータがなく、投与の判断や経過観察で行うPETやMRIなどの画像検査にかかる費用の面からも財政面の見通しが難しい。認知症治療への期待が高まる一方、今後審議される投与基準や薬価の設定に注目される。
(本紙・廣田圭昭)

<シルバー産業新聞 2023年9月10日号>

 

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