◆介護付き有料老人ホーム(正社員) → 看護小規模多機能型居宅介護(正社員/介護福祉士)
M・Tさん(女性・29歳)
●介護付き有料老人ホーム(正社員)(勤務期間:1年半/ボーナスあり)
●看護小規模多機能型居宅介護(正社員)(勤務期間:3年/介護福祉士手当・ボーナスあり)
介護業界以外でのその他経験:IT企業財務担当(勤務期間:2年)
保有資格:介護福祉士
家族構成:一人暮らし
*M・Tさんの「転職 成功・失敗 体験談」…1回目、
2回目、
3回目、
4回目(最終回)はこちら
【介護職になったきっかけ】家族のすすめで老人ホームへ就職
大学の観光学科で勉強をし、鉄道会社に就職を希望していました。
いくつか私鉄を受け、一番行きたかった会社の最終面接まで行ったのですが、採用とならず、一気に落ち込みました。
その後、いくつか鉄道会社や観光関連の会社も受けたのですが、どれもうまくいかず、途方にくれて……。
そんな私を見て、家族は「資格を活かして、介護の道に進んでみたら」と提案してくれました。
実は、高校のときにヘルパー2級(現介護職員初任者研修)の資格を取得していました。
ちょうどその頃、祖母に介護が必要になったので、いつか役に立つかもしれないと思って夏休みを利用して講座を受けに行ったのです。
でも、その後、気持ちは観光業界にうつってしまったので、介護の道など考えてもいませんでした。
しかし、どこにも就職しないというわけにもいかず、「介護は今後伸びる業界」と聞き、実家近くの介護付き有料老人ホームに、介護職として就職することにしました。
【はじめての介護職】介護にやりがいを感じるも体がついていかなくなった
大変だけれど、奥が深い介護の仕事は魅力的
最初は覚えることが多くて必死でした。
けれど、介護の仕事は思いのほか楽しく、私に向いていると思えました。
高齢者の方々は、若い私にもとてもやさしく穏やかに接してくださる方が多く、お話していて私の方が癒されていたのです。
また、食事介助や入浴介助ひとつとっても、身体のメカニズムをよく知ってから行うなど、思った以上に奥が深く、介護や医療の知識が豊富であることが必要。
そんな点でも、やりがいを感じました。
職員が次々に辞めていく、そのわけは…
ところが、この老人ホームでは、介護職が次々に辞めていってしまうのです。
オーナーが介護の現場を経験していない人で、職員の教育にも無頓着。
人員を増やすために無資格の職員を採用しても、介護の心得を教える機会がないから、仕事の辛さだけを感じて辞めてしまう。
「よい食事や入浴を提供して、利用者さんに心地よく過ごしていただく」というすばらしい理念を掲げていたのですが、それを提供する介護職の人数も足りないし、教育も不十分なので、実現できていなかったのです。
結局、少ない人数でなんとかこなしていく状態になっていました。
夜勤が月に10日!あまりの激務にドクターストップ
当初は「夜勤は月4日以内」という約束で入社したのですが、人手が足りなくなったらそういうわけにもいきません。
派遣の職員さんも夜勤を敬遠する中、正社員ががんばらなければどうにも回らなくなり、夜勤が月に6回になり、8回、9回、10回と増えていきました。
それでもずっと人手は足りず、夜勤明けで昼すぎまで残業したり、夜勤明けに昼間休んだらまた夜勤に入ったり、ひどい状態での勤務が続き、1年がんばったところで、体が悲鳴を上げました。
毎朝重い体をひきずり、なんとか出社していたのですが、ある日、体が全く動かなくなってしまったのです。
両親に抱えられるようにして病院に行くと、「こんなに疲れるまで働くなんて。早く辞めなさい」と言われてしまいました。
両親もドクターの言葉にショックを受け、「私たちがすすめたからいけないんだ、もう仕事は辞めて健康を取り戻してちょうだい」と嘆願され……。
そのまま出社せずに、「辞めます」と電話で告げて退職しました。
入社から1年半たった頃でした。
【他業種への転職】IT企業の財務担当とセミナー講師に
「とにかく定時に帰れる仕事」を探して転職
老人ホームでの介護職の仕事を辞めた後は、体の疲れがとれ、精神的にも肉体的にも元気を取り戻しました。
そろそろ転職をしよう、という気持ちになりましたが、介護職に戻るつもりはありませんでした。
両親はとにかく「もう介護職はやめて」という感じでしたし、私も長時間勤務はもうこりごり。
それで、「定時に帰れる事務職」を探して、IT企業の財務担当として転職。
事務職と、初心者向けの財務セミナーの講師を行う仕事に就くことになりました。
最初のうちはよかったのです。
職場はおしゃれだし、ジャケットを着てセミナー講師もして、なんだか自分がカッコよくなったような気さえしました。
定時に帰れるので、帰りに友達と会って食事をしたり、家でゆっくり過ごしたり。人間的な生活もできます。
おまけに、お給料もよく、手取りで23万円くらい。実家暮らしだったので、貯金がすごくできました。
両親も大喜びで、「ずっとこの仕事を続けてほしい」と言っていました。
やはり人と接して喜んでもらえる仕事がいい
しかし、事務の仕事を始めて1年が過ぎ、2年目になると、同じことの繰り返しの毎日がなんだかおもしろくなくなって。
「セミナー講師なんてすごい。いろんな勉強をしなきゃいけなくて大変ね」などと言われましたが、勉強が必要だったのは最初だけで、あとはマニュアル通りにしゃべるだけでいい、ルーティーンワークのようなものです。
介護職だった頃が懐かしい……。そんなふうに思う自分にびっくりしました。
逃げるようにして辞めてしまった老人ホーム。
私がいなくなったことで、介護職はもっと手薄になり、利用者さんたちに申し訳なかったと、謝りたい気持ちでいっぱいになりました。
この思いを隠して今の仕事を続けるのか……。
悩みが大きくなってきたところに、祖母が利用していた訪問介護の事業所が、看護小規模多機能型居宅介護を開くことを聞きました。
【介護職に復職】尊敬できる上司のもと、世の中に必要とされる仕事を
祖母が利用していた訪問介護の事業所では、担当の看護師さんが大ベテランで、祖母に対する接し方、病気に気付くタイミング、実際の処置など、どれもこれも、カンペキだと思える方でした。
そのベテラン看護師さんが、「世の中に絶対に必要だから」と考えて、新たに挑戦する「看護小規模多機能型居宅介護」。
「今、同じ思いで歩んでくれる人を探しているの。どう?」と声をかけてもらい、本当にうれしくなって。
私自身も、世の中に必要とされている、と思えました。
デスクワークは、私でなくてもできる。でも、この仕事は私以外にやろうと思う人はそんなにたくさん出てこないかもしれない。
ならば私がやるべき! と思えたのです。
私は、利用者さんのために体を張って働く介護の仕事が好き。
利用者さんに話しかけ、笑顔をもらったときのうれしさはかけがえのないもの。
そんなふうに自覚したら、もう事務職を続ける気が起きなくなってしまって、両親を説得し、会社に退職届けを出しました。
次回は、現在の職場での環境や働き方について、Mさんの思いをお伝えします。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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