介護施設では、利用者さんのご家族に電話をかける機会があります。しかし「電話は苦手」「正しいかけ方がわからない」という方も少なくありません。
この記事では、ご家族に電話報告をする際のマナーやポイントを、例文付きで解説します。基本の電話対応マニュアルとしてご活用ください!
目次
■ 介護施設ではどんなときご家族に電話する?
■ 電話対応の基本的な流れ
■ 電話対応の事前準備のポイント
・ご家族の連絡先を確認する
・報告する内容を整理する
・メモの準備をする
■ 電話をかける時のポイント
・聞き取りやすい声とスピードで話す
・正しい敬語を使う
・専門用語やNGな言い回しを避ける
■ ご家族への電話報告の例文
・導入
・本題
・しめくくり
・留守番電話に伝言を残す場合
■ まとめ
介護施設では、以下のような用件で利用者さんのご家族に電話をする機会があります。
●事故報告
●近況報告
●面会や面談の日程調整
●居室担当スタッフ変更の挨拶 など
介護職は利用者さんの一番近くでケアを行う立場として、ご家族とのコミュニケーションも欠かせません。
特に事故報告や近況報告のために電話をかけることが多いでしょう。
例えば、利用者さんが転んでしまった場合は、転倒の経緯やケガの有無、今後の対応などを伝えます。
近況報告をする場合は、利用者さんの体調や施設でのご様子などをお話しします。
いずれも、ご家族の疑問や不安を汲み取りながら、具体的に報告することが大切です。
例文については≪こちら≫をご確認ください。
利用者さんのご家族に電話をする際は、職員自身が介護施設の顔として自覚を持ち、ビジネスマナーを守って対応する必要があります。友達に接するときのような態度や言葉遣いでは、トラブルやクレームにつながるかもしれません。
一方で、職場によっては電話対応のマニュアルや研修の機会がなく、不安を感じている方もいるでしょう。
電話対応の基本的な流れは、以下の通りです。
①事前準備をする
②電話をかける
③電話の内容をまとめて職員間で共有する
ご家族とのやり取りをスムーズにできるよう、「誰に何をどのように伝えるか」電話をかける前に確認することが大切です。
事前準備を怠ると、相手に正しい情報が伝わらなかったり、伝えるべき内容が漏れてしまったりする恐れがあります。
電話をした後は、こちらが伝えた内容に対するご家族の返答をまとめて、職員間で情報共有するようにしましょう。
施設内で共有できていないと、内容によっては利用者さんに不利益が生じたり「お願いしたことが伝わっていない」とご家族の不信感につながったりする可能性があります。
ご家族に電話をする際は、事前に以下の準備をしておきましょう。
ここでは、事前準備のポイントについて解説します。
介護施設からご家族に連絡する際、基本的には契約上の身元保証人(身元引受人)に電話をかけます。
ただし、ご家庭の事情により連絡先を別に指定していることもあるため、電話をかける相手と番号をしっかり確認することが大切です。
ご家族によっては、仕事の都合で通話可能な時間帯が限られている場合もあります。
指定の時間以外に何度も施設から電話がかかってくると「何か大変なことがあったのではないか?」と不安を抱いてしまうため、相手や用件に応じた配慮が必要です。
ご家族と対面で話すことに慣れている職員でも、いざ電話をかけると緊張して頭が真っ白になってしまうこともあります。
落ち着いて抜け漏れなく話すには、報告内容を事前に整理しておくことが大切です。
例えば事故報告の場合、以下のポイントをメモしておくと、必要な情報を順序だてて伝えやすくなります。
●事故の日時、場所
●事故の経緯
●ケガの有無、ご本人の様子
●誰がどのように対応したか
●今後どのように対応していくか
ただメモを読み上げるだけでなく、相手の質問や要望にきちんと耳を傾けて対話することも忘れないようにしましょう。
電話をかける際は、必ずメモを取るための筆記用具またはパソコンの入力画面などを準備しておきましょう。
相談事項や約束した内容を忘れてしまうと、ご家族からの信頼を損ない、トラブルに発展するケースもあります。
一言一句メモする必要はありません。話しながら要点を控えておき、電話を切ったあと内容を整理するとよいでしょう。
連絡先の確認・用件の整理・メモの準備ができたら、いよいよ電話をかけます。
電話でご家族とやり取りする際は、以下のポイントを意識しましょう。
電話は表情が見えない分、直接話すとき以上に「声のトーン」と「話すスピード」に配慮する必要があります。
声のトーンは明るくハキハキと話すことが基本ですが、伝える内容に合わせて調整しましょう。事故の報告やお詫びの連絡では、落ち着いて誠実に応対することが求められます。
話すスピードは、ゆっくり伝えることを心がけましょう。早口だと相手が聞き取りにくい上に、雑な印象を与えかねません。
緊張すると、自分で思っている以上に早口になっていることも。
電話対応に慣れている施設長や事務職員の方から客観的な意見をもらうと、より良い話し方が身に付きます。
一方的に用件を伝えるのではなく、相手の反応を見ながら会話する意識も大切です。
必要なことを伝えた上で「何かご質問はありますか?」「気になる点はございましたか?」など確認するとよいでしょう。
社会人の基本マナーとして、正しい敬語を使えるように練習しておきましょう。
以下の表に、よく使う尊敬語・謙譲語・丁寧語をまとめました。
尊敬語は相手(利用者さんやご家族)を敬う言葉、謙譲語は自分や自分の身内・同僚の行動をへりくだる言葉、丁寧語は語尾に「です・ます」をつけた表現です。
| 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 | |
| 誰が | 利用者さん ご家族 |
自分 施設の職員 |
ー |
| する | なさる、される | いたす | します |
| 食べる | 召し上がる | いただく | 食べます |
| 行く |
いらっしゃる、 |
伺う、参る | 行きます |
| 来る | いらっしゃる、 お越しになる |
伺う、参る | 来ます |
| 見る | ご覧になる | 拝見する | 見ます |
| 聞く | お聞きになる | 拝聴する、 うかがう |
聞きます |
| 言う | おっしゃる | 申す、申し上げる | 言います |
| 思う | お思いになる | 存じる | 思います |
| 座る | お掛けになる | 座らせていただく | 座ります |
| 寝る | お休みになる | 休ませていただく | 寝ます |
使い慣れるまでは難しく感じますが、電話に限らず利用者さんとの会話でも意識して、正しい敬語をマスターしましょう。
ご家族と電話で話す際、敬語を使うのはもちろんですが、わかりづらい言葉や相手に不快な印象を与える表現を避ける配慮も必要です。
例えば、以下のような話し方は好ましくありません。
【NG例】
「A様が夜間に徘徊して転倒されました」
「B様は認知が進んでいると思います」
「PTがADLの評価を行いました」
利用者さんは加齢や認知症などの疾患により、心身機能が低下することもあります。そういった健康状態や施設でのできごとをご家族に共有する際は、言葉の選び方に気を配りましょう。
「徘徊」「認知が進んでいる」などと表現されると、尊厳を傷つけられているように感じる方もいます。
また、職員同士で日常的に使っている専門用語も、ご家族にはわかりづらい可能性があります。
上記の例で言えば、「PT」は「理学療法士」、「ADL」は「お食事や歩行など日常生活に必要な動作」といった言葉に置き換えると伝わりやすくなるでしょう。
ご家族に電話をする際は、導入の挨拶+本題+しめくくりの挨拶といった流れで話します。
ここでは、アレンジして使える基本の例文とポイントを紹介します。
【導入の挨拶の例文】
いつもお世話になっております。特別養護老人ホーム〇〇の介護職員〇〇と申します。
〇〇様のお電話番号でお間違いないでしょうか?
〇〇の件でご連絡いたしました。今お時間よろしいでしょうか。
電話をかけたらまず「どこの誰か」を名乗ります。
普段の電話で使う「もしもし」はビジネスシーンでは使用しません。第一声は「お世話になっております」や「お忙しいところを恐れ入ります」と言いましょう。
そのあと、間違い電話で話し始めてしまわないよう、連絡先の相手が間違いないことを確認します。
また、どのような用件で連絡したのかを初めに簡潔に伝えることで、聞く側も心の準備ができます。
もし相手が忙しい場合は、都合の良い時間を聞いて再度こちらからかけ直すのが基本です。ご家族から「折り返します」と言われたら、自分の勤務時間を伝えたうえで、電話を取り次いでくれる事務職員の方などに共有しておきましょう。
ここでは、事故報告のケースを想定した例文を紹介します。
【本題の例文】
昨夜22時に居室から物音がしたため訪問すると、ベッド脇の床にご本人様が座られていました。
看護師と2人介助で床からベッドに移動してもらい、痛みの有無を確認したところ「どこも痛くない」とおっしゃっています。
念のため、お尻の周辺や手足など確認させていただきましたが、青アザなどの外傷も見受けられませんでした。そのあとの夜間も痛みなくお休みになっています。
ご本人様からは「トイレに起きたら膝に力が入らなくなって、尻もちをついてしまった」とお話がありました。
起きたばかりで動作が不安定ななか、ベッドのサイドレール以外につかまるところがなかったことが原因と考えられます。
今後、転倒防止の対策として〇〇を実施して経過観察していきます。
「いつ、どこで、何が起きたのか」ケガの有無や利用者さんの様子も含めて、具体的に伝えましょう。
専門用語は使わずにわかりやすい表現を心がけることも大切です。
事故報告の場合、原因と今後の対応についても説明することで、ご家族の安心感につながります。
【しめくくりの挨拶の例文】
本日はお忙しいなか、お時間をいただきありがとうございました。
今回の〇〇の件でご不明な点などありましたら、いつでも遠慮なくご連絡いただければと思います。
それでは今後ともどうぞよろしくお願いします。失礼いたします。
上記のように締めの挨拶を終えたら、ご家族が電話を切ったことを確認してから受話器を置きましょう。
万が一相手側でまだ切れていなかった場合を考えて、受話器はゆっくり静かに置きます。電話の「フック」部分を指でそっと押すと、ガチャンという大きな音を立てずに切ることができます。
【留守番電話の例文】
いつもお世話になっております。特別養護老人ホーム〇〇の介護職員〇〇と申します。
ご本人様の〇〇の件でお伝えしたいことがあり、ご連絡致しました。
こちらから〇時頃もう一度ご連絡差し上げます。
緊急のご連絡ではありませんので、ご安心ください。失礼いたします。
留守番電話にメッセージを残すときも、まず自分の所属と氏名を名乗ります。
もし番号をかけ間違えていた場合、別の方の留守番電話にメッセージが残ってしまうリスクがあるため、個人情報や連絡内容の詳細は言わないようにしましょう。
また、着信履歴に気づいたご家族が不安にならないよう、「緊急ではない」という一言を添えると親切です。
介護施設からご家族への電話は、単なる報告作業ではありません。伝え方一つで安心感を提供でき、職員や施設全体の信頼関係の構築にもつながります。
顔の見えないやり取りだからこそ、細かいところにまで気を配る意識が大切です。
慣れるまでは失敗してしまうこともあるかもしれませんが、社会人として適切なマナーを身に付けるとともに、誠意を持って対応しましょう。
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